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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-133 気合で砲撃できたら強い

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…水着美女武闘会。
 基本的には水着姿で肉弾戦を行う場であり、武闘の文字があるせいなのか斧や剣、弓、爆弾、炸裂式ニガ団子、モーニングスター等の武器の持ち込みはNGになっている。

 要は素手で殴りあうことを想定して行われているようであり、格闘主体で戦う人の数はそこそこいるので戦えない人がいないというのはないのだが、その中で水着美女のカテゴリに入る人は少なく、『まぁ、とりあえず水着を着た人なら良いか』みたいな緩い制限になっているそうだが、それでも参加者としてやってきた人は数えるほどの人しかいないだろう。

 だが、数えるほどの人しかいないが、それでも物理で殴って解決できるような手段の人ばかりなせいなのか、素人が集まっているのではなくほとんどが他の惑星やプレイヤーイベントによって名をはせた人が多く、猛者ばかりのものになっているため盛り上がらないつまらない試合なんてものはない。

 そんな中に、格闘主体で戦っていない身のハルが黒き女神のスキルで変身して入ったとしても、専門と言っていいほど鍛え上げた猛者たちには手も足も出ずに敗北してしまいそうなものだったが…


「はぁぁぁ!!」
「おっとっと!!危ないけどここは隙が多いよ!『爆豹連続蹴り』!!」

 殴りかかってきた対戦相手の攻撃を見切ってかわし、隙ができたところへRMPのスキルによって借りてきたリンの蹴り技を使って、武闘会のリングの外へ吹っ飛ばす。

 相手は受けきれずに直撃を喰らい、そのままなすがままに、観客席前に敷かれていた安全用の防壁にぶつかり、地面に落ちた。

カァンカァンカァン!!
『おおおーっと!!場外アウトでゴッチラン選手の負けだぁぁぁ!!勝者、黒き女神ぃいい!!』
『すごいぞ強いぞ黒き女神!!レイドバトルではないからレイドボスとしての強さは持たず、一般プレイヤーとしての参戦をしいているようだが、その実力に偽りなしだぁぁ!!』

 勝敗が決まった合図の鐘が鳴らされ、見事に今、2回戦目でも勝利をつかんでいた。

「おお!!すごいぞ黒き女神!!」
「あんまり見えないようになのか黒い炎のマントに身を包んでいても、蹴り技の時に見えるお身流石美しい!!」
「見えないからこそ見えるものがより惹かれ、素晴らしい武闘を披露してくださり感謝ですぅうう!!」

「…ふぅ、勝ち越せはするけどこういう声って慣れないな」







 内心、黒き女神の姿になっても、内部データとしては男性のために制限にかかって敗北する可能性があった。
 だが、どうやらこの女神の姿はしっかりと女性としての認識がされているようで、制限にかかることはなく維持したままであれば大丈夫そうである。
 格闘戦に関しても、そもそも格闘主体のリンの蹴り技をつかえば十分に対応できるし、相手の動きなどを見て動くのは後方で指示を出したり支援を行うことが多い身としてはやりやすい。

 しいていうのであれば、水着姿にならなければいけないことだったが…以前、火山で獲得した『ブラックフレイム水着』の効果によって、ある程度の視線からも防御することができていた。

 この中身、黒い炎で構成されたビキニとなっており、女神のスタイルがそのまま反映されているために、この身体になっている自分自身がすごい気恥しい。
 けれども、炎でできている水着なことを逆に利用して、アリスの炎を扱う要領で炎を増やしてマントのように覆うことで、ある程度の肌面積を一時的にかばうことができるのだ。

…蹴るときとかは邪魔になるのでどうしてもめくれるときはあるが…そこはまぁ、仕方がないことだろう。

「それに、参加して僕のほうにメリットがないわけでもないことが分かったからね…優勝賞品の海王轟雷扇とやらは中三病さんに渡すけど…もう一つの商品もメリットあるんだよなぁ」

 流石にこういう殴り合いの場で、出てくる優勝賞品が扇だけなのはおかしいとは思っていた。
 そもそも武闘会で格闘主体の人を集めている時点で、扇の武器なんぞ使う機会はあまりない様な気がしており、別のものがあるのだろうと思っていた。


 そこで、改めて優勝賞品を確認してみると他にも数点の武器が用意されている中で…まさかの、現実向けの商品も一緒に出されていたのだ。

「優勝賞品の一つに、現実での海外旅行券…『ミステリー列車の旅路3泊4日セット』ってあるからどこが行先になるのか不明だけど、こういう列車の旅ってのも面白いからね」

 海外はちょっと厳しいが、海外へ向かうわけではなく国内で済むような旅路になっているらしく、言語の違いとかでの苦労をしなくてもいい旅路。
 列車を使うために多少の制限は航空機や船を使うよりはかかるだろうが、それでも現実で使える列車の旅というのは興味を惹かれるだろう。

 人数もペアまでは行けるらしいし…ここは思い切って、今回の海王惑星に一緒に遊べなかったわびとして、ミーちゃんと一緒に列車の旅をするのもありか。
 あ、でも某行く先々で事件に遭遇しまくる少年とかいない旅路なのを求めたい。流石にそんなことはないとは思うが、ここ最近の何かしらの遭遇率を考えると、第1の被害者として葬られる可能性だって否定できないだろう。



 何にしても中三病さんだけではなく、僕のほうにも利益が生じることが分かったので、こうやって気兼ねなく黒き女神(炎の水着姿)で武闘会に参加することができたが…あと2回勝てば、決勝に出て、勝利を収めることができるはず。
 レイドバトルではないので、レイドボスとしての強さは抜かれているとはいえ、元々強い黒き女神のステータスや、リンから借りた格闘技術関連、他のテイムモンスターたちから借りれる力などをフルに活用すれば間違いなく優勝まで行けるだろう。

「とはいえ、そこまで黒き女神を長時間出し続けるのはどうなのか…いやまぁ、レイドバトルとかでさんざんやったけど…」

 少々気がかりなのは、今更過ぎるがこの女神のスキルをホイホイ長時間使用していいものなのかというところだろう。
 あの火山で出会った火の神曰く、何かしらの異質なものがあるようだし、もらったランプも実は首からちょっと飾った状態で持っているけど、今のところ何の変化もない。

「…まぁ、そこまで考えるよりも、戦っている最中に解かないようにするほうが良いか」

 怪しいのは気になるのだが、今はこの舞踏会に出ている以上、うっかり解除しないことを心掛けたいところ。
 女性プレイヤー限定で参加する会場に、突然男性に戻ってしまった場合、どういうことになるのか予想ができないからな…良くて普通に弾き飛ばされて敗北、悪くてその場の参加者全員から集中攻撃のフルボッコのリスクが生じる恐れがある。

 その場合、確実に中三病さんに責任を取ってもらおうということで、実はいつでもティラリアさんに居場所を通報できるようにしていたりするが…呼んだところですぐに来る可能性が大いにあり過ぎるので、有効だと思われる。
 確実にあの人、一報を聞いただけで瞬間移動してきてもおかしくないからね。前に中三病さんが強奪して動かしていたロボットのように、やばめの技術を有してなんやかんやでやってくるかもしれない。

 とりあえず、そんな最終手段の様なことを考えつつも、今は次の対戦相手となる人の戦いを見て、自分の番になったときにどう対応するか策を練るほうが良いだろう。
 そう考えつつ、舞台の影からしっかりと観察を行うのであった…

「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!」
「フンガァッァ!!フンガァッ!!フフフフフンガァッ!!」

「ところでこれ、本当に水着美女武闘会なんだよね?ツッコミどころが多すぎるけど、まともに機能している大会なのだろうか」

…考えたら、女神になっているけど元が男性な自分も参加できていることを考えると、色々とおかしい様な気がしなくもない。
 あれか、ここの大会の運営、集めるのが面倒になりそうだから手を抜いた可能性が否定できないな。








 
 ハルが舞台を観察しながらツッコミを入れていたそのころ、現実の方ではミーちゃんの用事は片付きつつあった。


「ふぅ、ひとまずエリアAからZZZまで制圧っと…お母さん、これで片付いたよね?」
「ええ。間違いないわ。助かったわぁ」

 一部周辺の環境が大変動して色々と騒ぎになりそうだが、ここで起こされそうになっていたことを考えるとまだギリギリセーフなラインになっていることから、ミーちゃんの母…ハルの母の姉の立場でもある眼目めめは彼女を褒める。

 自分一人では厳しかったが、真祖でもある娘がいればどうにかなると思って助けてもらい、ある程度想定できた範囲の中に収まっているので問題はないだろう。
 しいて問題を上げるならば、上の人たちがおそらくしばらくの間深夜残業を行う羽目になるだろうが…現場の苦労を考えると、より味わえという思いにもなる。

「それじゃ、私はすぐに帰るね。ここでこれ以上何もないなら、問題ないでしょ」
「いいわよ。あ、でも帰る場所は春君の家かしらぁ?」
「そうだけど、どうしたの?伯母さんの立場として、何かしたいの?」

 母親の言葉に、何かあるのかと思ってミントは尋ねる。

「いえ、違うわぁ。あの子の成長は気になるけど…そこは別にいいわよぉ。あの子のハートをあなたが射止められるならよりいいけど、まだまだ無理そうねぇ」
「…お母さん、そんなことを言ったら次は手伝わないよ」
「冗談よ」

 割とマジな空気を感じ取り、慌てて訂正をするミント母。
 娘の恋愛事情に理解をしつつ応援も親心してはやってあげたいのだが、肝心の春自身が朴念仁というか唐変木というべきか、そのあたりが疎すぎる。
 色々と大変だろうが、どうにかたどり着けるようには願いつつ、別のことがあった。

「せっかく向かうならぁ、これをもっていってくれないかしらぁ」
「何、これ?お札?」

 ミントが帰ろうとしているところで、彼女に手渡したの1枚の真っ黒なお札。
 何かが書かれているようだが、真っ黒な紙にさらに真っ黒な液体で書かれているらしく、世醜すぎてその内容が理解できない。

「ちょっとしたおまじないよ。鈍感な人でも、少しは気持ちを理解できるようになるっていう優れものなのよねぇ。スパイ活動時に、どうしても通用しにくい人に使うのが本来の用途だけど、特別に上げるわぁ」
「鈍感でも…うん、わかった。それじゃ、もらっていくね」

 母の言葉がどういう意図をもっているのか、理解したミントはそれを手に持って帰路につく。

 そして彼女がこの場所からいなくなったところで、一服休憩を取った。

「ふぅ…娘が素直に育ってくれてよかったわぁ。あれは確かに、その効果を持つけど…もう一つ、別の効果が出てくれたら良いけれどねぇ」

…自称敏腕凄腕スパイを自称していると思われているが、そんな行動を行う中で、自然と様々な情報が耳に入ってくる。
 その中で、偶然知ってしまった娘の思い人に対しての情報があったのだ。

「少しは厄介事がこれで減るとは思うけれども…さて、どうなるかしらねぇ」

 一応、信頼できる伝手で入手したもので、娘には先ほど話した効果しか実感できないだろう。
 春の鈍感さが想定以上であれば、意味をなさない可能性もあるが…それはまぁ、表向きのことなのでどうでも良い。
 問題なのは、もう一つの効果が作用してくれるかということである。

「あ~あ、面倒ねぇ、こういうことは。わからないことは現場よりも、上で解決してほしいわぁ」

 そんなことをつぶやきつつ、娘の恋路も応援して、その様子を楽しませてもらう。
 どんなに仕事が忙しく、危ない橋を渡る様なことがあったとしても、自身の大事な愛娘が不幸にならなければそれでいいかと彼女は思うのであった…

「あ、しまったわぁ。せっかくだから、一気に一線を越えられないかと思って用意していた色々なものも渡すのを忘れていたわねぇ」

…他にも娘のために、鈍感すぎる相手対策として用意していたやばめの代物もあったが、残念ながら渡し損ねてしまっていた。
 幸か不幸か、それは誰にも分らないが、一つ言えることとすればどういうものなのか実際に効果を確認するために泣かされまくった男たちがいただけで…哀れな犠牲者の列に春が並ばずに済んだことであった。
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