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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~
ver.4.2-16 ミステリートレイン in 目的地
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…元凶となった者たちは排除され、元の場所へ戻ってきた。
黒き女神の新形態が出ていたが、アレはフロンおば…お姉ちゃんに頼み込み、用意してもらった電子空間を行き来できるような肉体である。
黒き女神単体では、現実での性能は限られているだろう。
だからこそ、その能力を万全に発揮できるような、電子の海の中も進めるような肉体をと頼んだのだが…予想以上の性能だった。
そのついでに、色々と頼んで、果ての世界も借り受けたのだが…あの世界でこれからずっと、肉塊と成り果てたものたちは生きていくことになるだろう。
「まぁ、ミーちゃんを傷つけた者たちの末路としては、ふさわしいものかな?」
「恐ろしい末路だね…」
バラバラになっていた肉片をつなぎ合わせ、元の体になってベッドに横たわっているミーちゃん。
幸いなことに、このファンタジックアイランドでの医療技術も優れたものであったからこそ、すぐに復活した。
残念ながら半日もつぶれたので、ここで過ごせるのは明日だけなのだが…出来ればこのままゆっくり静養してもらったほうが良いのかもしれない。
「でも、それだともったいないよ」
「ミーちゃんの体のほうが大事だよ。ミステリートレインのツアーも予定通りじゃないといけないようだし…まぁ、今回は運営側のほうの防衛の不備ということで、治療費などはなかったけどね」
僕らだけではなく、他にも乗客がいるため予定をずらすことはできないらしい。
その代わりに、ミーちゃんへの今回の被害に関する損害賠償などは大量に払われるらしいが…それでも、ここ最終日の一日は寝て過ごすほうが良い。
「いくら真祖でも、全身バラバラにされていたのをつなぎ合わせただけだからね。常人なら間違いなく死亡なのが間違いない状態で生きていたけど、体力までも回復したわけじゃないからね」
「むぅうう…いくら春が成敗してくれたとはいえ…はぁぁ…」
しょぼんとした顔で落ち込むミーちゃん。
楽しい旅行になるはずだったのに、残った分がここでの静養になるからなぁ…
「うーん…大丈夫と言っても、それは本人申告で微妙だしなぁ」
「でも、最後の一日でやり残した勝負やりたかったんだけど…」
3本勝負だったのに、邪魔されたせいで結局一本しかできていない。
油断していたとはいえ、それでも襲撃をされるとは思っていなかったし、襲ってきた相手に怒りを覚えたくなる。
…まぁ、やつらはもう、二度と僕らに手を出すこともできないし、永遠に許されることもない。
ずっとその世界に囚われ続けて、生き続ける地獄に移住させたからね。
顔を合わせることがないどころか、仮に僕らが先に逝ったとしてもあの世で出会うこともない。
「だから、ぶつけようのない怒りはどうにもならないか…あ、そうだ」
「どうしたの?春?」
「ミーちゃん、出来れば明日にはもう、復活してさっさと勝負したいよね?」
「そうだけど…なにかあるの?体力が超回復するすごい豆のような道具とか?」
「いや、流石に無かったけど…」
なんか腹が膨れたり途中から回復したりするようなものはないのだが、ふと思いついたことがある。
「ねぇ、ミーちゃん。僕の血を吸ってみない?吸血鬼って血で回復するイメージとかあるし…真祖なミーちゃんにも同じような効果があるかはわからないけど、試す価値はあるよね?」
「…」
前にも血を吸う提案をしたが、その時は断られた。
でも今回は、ミーちゃんの負傷もあるし、可能性があるならやってみたいが、どうなのだろうか。
しばし考えこむような顔になり…そしてミーちゃんは口を開く。
「…わかったよ。確かに、吸血にはちょっと回復作用もあるけど…でも春、心にしっかり刻んでほしいけど、その吸血を求める言葉は、他の吸血種に言っちゃ駄目だからね」
「わかったよ」
どういう意味合いになるのかは不明だが、気軽に提案してはいけない模様。
だが、今回ばかりはということで、ミーちゃんは受け入れたようだ。
「それじゃ、春。ちょっと首を近づけて。…ああ、先に言うけど、私にただ血を吸われるだけなら吸血鬼になることないよ」
「そうなの?」
「同族にするにはそれ相応の儀式がいるから…普通の吸血行為なら、大丈夫」
そう言いながらミーちゃんは僕の首筋を見て、口を開く。
きらりと、普段は見ることがない様な尖った牙が出て、髪や目の色が真っ赤になる。
「それじゃ…いただきます」
かぷっ
首筋にちくっとした痛みがあったが、気にするようなものでもない。
とくとくと血を吸われている感触はするのだが、牙が刺さっている割には激しい痛みを感じはしない。
「うくっ…ごきゅっ………っ!!」
ごくごくと少しばかり飲んだところで、ミーちゃんのぐわッと開く。
「こ、これは…ちょっと、不味いかも」
「僕の血って激マズなの!?」
「いや、そんなことはなくて…むしろその逆ですんごく美味しいけど…ああ、ごめん、春」
「え?」
「吸血衝動って飲んだら大抵収まるけど…やばい、止められないかも」
ぐびぐびぐびぐびぐび!!
「ちょ、ミーちゃん!!なんかすごい勢いで吸っているから、搾り取られそうなんだけど!!」
「ごめんごめん春、いったん抑える!!」
ずぼっと音がして、牙を抜くミーちゃん。
抜き取った勢いでアクロバティックにベッドとから飛び上がり、くるくると宙を舞って着地して距離を取る。
その目や髪の色は深紅からより真っ赤に…言い表せないほどに、発色しており、少し興奮しているような様子さえもうかがえる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…やっぱり…春の…」
「えっと、大丈夫?ミーちゃん?燃え滾っているようになっているんだけど」
「大丈夫、大丈夫、大丈夫。…というかこれは…春、絶対に今後、本当に私以外の吸血種以外に血を与えちゃだめだよ!!この血、下手するとガチで戦争が起こりかねない!!」
「そんなに!?」
「主に私が全吸血種を殲滅する立場の意味で!!」
「ミーちゃんがやらかす方向性で!?僕の血で全部滅ぼしたら駄目でしょ!!」
ミーちゃんはしばし呼吸が荒くなりつつも何とか抑え、冷静になって説明してくれた。
いわく、僕の血は不味くはなく、激ウマな分類に当てはまるらしい。
しかしながら、その血の味はほかの種も引き寄せるほどであり…うかつに飲ませたら、争いの火種になりかねないのだとか。
「というか、下手すると私の自制の箍が吹っ飛びかねないから!!今日はもう、春は部屋から出て行って!!」
「わ、わかった!!あ、体調のほうは?」
「そっちは問題ない!!元気百倍と言って良いほど良くなったから、ひとまずは離れて!!明日改めて、一緒に回れるだけの回復もしたからね!!」
僕の血を飲んだことで物凄く回復したようだが、逆に興奮しすぎてしまうようだ。
吸血衝動もかなり強く出てしまったようで、今のままだと制限が効かずにそのまま襲って干からびさせる危険性もあるらしい。
落ち着くまで、いったん明日まで別の部屋へ避難させてもらうことになったのであった…
「…ううっ、春の血、かなり効いたけど…この味、やっぱり間違いないのかも?」
…春が去った後、どうにか衝動を抑えてそうつぶやくミント。
いったん飲んだらやめられない止められないと、どんどん出てくる感覚が恐ろしくなり、物理的に距離を離してどうにか落ち着かせる。
春から吸血をして、その味を直に味わってしまったが…それゆえに、わかってしまうこともあるのだ。
「…まぁ、それはそれで問題ない。美味しければ大丈夫…でも、この感じ…」
病気や不健康な気配もなく、優良な味わいやその他に関しても深く理解できた。
だが、それと同時に別の部分を彼女は感じ取ったのである。
「…んー…まぁ、良いか。ちょっとだけ、人間じゃない味が混ざっていたような気がするけど…フロンおばあ、こほん、お姉ちゃんがいるんだし、大したことじゃないかもね」
いとこの立場にあるからこそ、春の血縁関係は把握しており、どういうものなのか理解している。
だからこそ、気にするようなことではないとは思ったが、それでも少しだけ気になる味。
なんにしても、今後吸血する機会が再び訪れるかもしれないときに備えて、全力で精神を鍛えようとミントは思うのであった…
「…でも、気になるところでもあるし…今度、フィーおじさまあたりに聞いてみようかな…?」
黒き女神の新形態が出ていたが、アレはフロンおば…お姉ちゃんに頼み込み、用意してもらった電子空間を行き来できるような肉体である。
黒き女神単体では、現実での性能は限られているだろう。
だからこそ、その能力を万全に発揮できるような、電子の海の中も進めるような肉体をと頼んだのだが…予想以上の性能だった。
そのついでに、色々と頼んで、果ての世界も借り受けたのだが…あの世界でこれからずっと、肉塊と成り果てたものたちは生きていくことになるだろう。
「まぁ、ミーちゃんを傷つけた者たちの末路としては、ふさわしいものかな?」
「恐ろしい末路だね…」
バラバラになっていた肉片をつなぎ合わせ、元の体になってベッドに横たわっているミーちゃん。
幸いなことに、このファンタジックアイランドでの医療技術も優れたものであったからこそ、すぐに復活した。
残念ながら半日もつぶれたので、ここで過ごせるのは明日だけなのだが…出来ればこのままゆっくり静養してもらったほうが良いのかもしれない。
「でも、それだともったいないよ」
「ミーちゃんの体のほうが大事だよ。ミステリートレインのツアーも予定通りじゃないといけないようだし…まぁ、今回は運営側のほうの防衛の不備ということで、治療費などはなかったけどね」
僕らだけではなく、他にも乗客がいるため予定をずらすことはできないらしい。
その代わりに、ミーちゃんへの今回の被害に関する損害賠償などは大量に払われるらしいが…それでも、ここ最終日の一日は寝て過ごすほうが良い。
「いくら真祖でも、全身バラバラにされていたのをつなぎ合わせただけだからね。常人なら間違いなく死亡なのが間違いない状態で生きていたけど、体力までも回復したわけじゃないからね」
「むぅうう…いくら春が成敗してくれたとはいえ…はぁぁ…」
しょぼんとした顔で落ち込むミーちゃん。
楽しい旅行になるはずだったのに、残った分がここでの静養になるからなぁ…
「うーん…大丈夫と言っても、それは本人申告で微妙だしなぁ」
「でも、最後の一日でやり残した勝負やりたかったんだけど…」
3本勝負だったのに、邪魔されたせいで結局一本しかできていない。
油断していたとはいえ、それでも襲撃をされるとは思っていなかったし、襲ってきた相手に怒りを覚えたくなる。
…まぁ、やつらはもう、二度と僕らに手を出すこともできないし、永遠に許されることもない。
ずっとその世界に囚われ続けて、生き続ける地獄に移住させたからね。
顔を合わせることがないどころか、仮に僕らが先に逝ったとしてもあの世で出会うこともない。
「だから、ぶつけようのない怒りはどうにもならないか…あ、そうだ」
「どうしたの?春?」
「ミーちゃん、出来れば明日にはもう、復活してさっさと勝負したいよね?」
「そうだけど…なにかあるの?体力が超回復するすごい豆のような道具とか?」
「いや、流石に無かったけど…」
なんか腹が膨れたり途中から回復したりするようなものはないのだが、ふと思いついたことがある。
「ねぇ、ミーちゃん。僕の血を吸ってみない?吸血鬼って血で回復するイメージとかあるし…真祖なミーちゃんにも同じような効果があるかはわからないけど、試す価値はあるよね?」
「…」
前にも血を吸う提案をしたが、その時は断られた。
でも今回は、ミーちゃんの負傷もあるし、可能性があるならやってみたいが、どうなのだろうか。
しばし考えこむような顔になり…そしてミーちゃんは口を開く。
「…わかったよ。確かに、吸血にはちょっと回復作用もあるけど…でも春、心にしっかり刻んでほしいけど、その吸血を求める言葉は、他の吸血種に言っちゃ駄目だからね」
「わかったよ」
どういう意味合いになるのかは不明だが、気軽に提案してはいけない模様。
だが、今回ばかりはということで、ミーちゃんは受け入れたようだ。
「それじゃ、春。ちょっと首を近づけて。…ああ、先に言うけど、私にただ血を吸われるだけなら吸血鬼になることないよ」
「そうなの?」
「同族にするにはそれ相応の儀式がいるから…普通の吸血行為なら、大丈夫」
そう言いながらミーちゃんは僕の首筋を見て、口を開く。
きらりと、普段は見ることがない様な尖った牙が出て、髪や目の色が真っ赤になる。
「それじゃ…いただきます」
かぷっ
首筋にちくっとした痛みがあったが、気にするようなものでもない。
とくとくと血を吸われている感触はするのだが、牙が刺さっている割には激しい痛みを感じはしない。
「うくっ…ごきゅっ………っ!!」
ごくごくと少しばかり飲んだところで、ミーちゃんのぐわッと開く。
「こ、これは…ちょっと、不味いかも」
「僕の血って激マズなの!?」
「いや、そんなことはなくて…むしろその逆ですんごく美味しいけど…ああ、ごめん、春」
「え?」
「吸血衝動って飲んだら大抵収まるけど…やばい、止められないかも」
ぐびぐびぐびぐびぐび!!
「ちょ、ミーちゃん!!なんかすごい勢いで吸っているから、搾り取られそうなんだけど!!」
「ごめんごめん春、いったん抑える!!」
ずぼっと音がして、牙を抜くミーちゃん。
抜き取った勢いでアクロバティックにベッドとから飛び上がり、くるくると宙を舞って着地して距離を取る。
その目や髪の色は深紅からより真っ赤に…言い表せないほどに、発色しており、少し興奮しているような様子さえもうかがえる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…やっぱり…春の…」
「えっと、大丈夫?ミーちゃん?燃え滾っているようになっているんだけど」
「大丈夫、大丈夫、大丈夫。…というかこれは…春、絶対に今後、本当に私以外の吸血種以外に血を与えちゃだめだよ!!この血、下手するとガチで戦争が起こりかねない!!」
「そんなに!?」
「主に私が全吸血種を殲滅する立場の意味で!!」
「ミーちゃんがやらかす方向性で!?僕の血で全部滅ぼしたら駄目でしょ!!」
ミーちゃんはしばし呼吸が荒くなりつつも何とか抑え、冷静になって説明してくれた。
いわく、僕の血は不味くはなく、激ウマな分類に当てはまるらしい。
しかしながら、その血の味はほかの種も引き寄せるほどであり…うかつに飲ませたら、争いの火種になりかねないのだとか。
「というか、下手すると私の自制の箍が吹っ飛びかねないから!!今日はもう、春は部屋から出て行って!!」
「わ、わかった!!あ、体調のほうは?」
「そっちは問題ない!!元気百倍と言って良いほど良くなったから、ひとまずは離れて!!明日改めて、一緒に回れるだけの回復もしたからね!!」
僕の血を飲んだことで物凄く回復したようだが、逆に興奮しすぎてしまうようだ。
吸血衝動もかなり強く出てしまったようで、今のままだと制限が効かずにそのまま襲って干からびさせる危険性もあるらしい。
落ち着くまで、いったん明日まで別の部屋へ避難させてもらうことになったのであった…
「…ううっ、春の血、かなり効いたけど…この味、やっぱり間違いないのかも?」
…春が去った後、どうにか衝動を抑えてそうつぶやくミント。
いったん飲んだらやめられない止められないと、どんどん出てくる感覚が恐ろしくなり、物理的に距離を離してどうにか落ち着かせる。
春から吸血をして、その味を直に味わってしまったが…それゆえに、わかってしまうこともあるのだ。
「…まぁ、それはそれで問題ない。美味しければ大丈夫…でも、この感じ…」
病気や不健康な気配もなく、優良な味わいやその他に関しても深く理解できた。
だが、それと同時に別の部分を彼女は感じ取ったのである。
「…んー…まぁ、良いか。ちょっとだけ、人間じゃない味が混ざっていたような気がするけど…フロンおばあ、こほん、お姉ちゃんがいるんだし、大したことじゃないかもね」
いとこの立場にあるからこそ、春の血縁関係は把握しており、どういうものなのか理解している。
だからこそ、気にするようなことではないとは思ったが、それでも少しだけ気になる味。
なんにしても、今後吸血する機会が再び訪れるかもしれないときに備えて、全力で精神を鍛えようとミントは思うのであった…
「…でも、気になるところでもあるし…今度、フィーおじさまあたりに聞いてみようかな…?」
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