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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~
ver.5.1-67 毒の沼地に毒を投げても意味がない
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…海中からの襲撃に備えて、人為的に生み出された激しい自然の海流防壁、巨大渦潮の群れ。
側面からの襲撃に備えて、頑強な岩肌に見せかけ内部には分厚い鋼の装甲板が張り巡らされており、周囲には電磁波によって生成されたシールドも纏い、鉄壁の要塞となる。
さらに、上空からの襲撃にも備えるために張り巡らされた対空迎撃システムを前にして、そう簡単にこの要塞島ハルカンディアに進入できるものはそう相違ないだろう。
鉄壁の布陣を、いや、鋼鉄すら超えたアダマンタイトやミスリルといったような金属のような豪勢な守りはとてつもない強固さを誇り、来るもの全てを拒める…はずだった。
だがしかし、どれほど堅牢な作りにしていたとしても、所詮は人の手で作られたものゆえか、人の手で破ることは可能である。
争いの中で攻めに回るのは楽なのだが、守りを固めるには相手の攻めを凌駕するだけの力を持つことが重要であり、それだけの力を用意するのは容易なことではない。
たとえ、非常に珍しく女神の力を借りることが出来て、その力がそそがれていた場所だとしても…
チュドォォォォォォォォォォォォォン!!
ヴー!!ヴー!!ヴー!!
『一点集中攻撃による遠距離攻撃により、第273隔壁損傷!!内部への侵入が確認されました!!』
「…相手のほうが、より上の攻撃力を有していると、やはり守りだけにすると厳しいな」
光線がほとばしったかと思えば、次の瞬間に要塞島の一角を貫かれ、穴が開いた。
生体模式型自動修復機能を備えているので数十秒ほどで元の強度を取り戻せるだろうが、そのわずかな間に相手が侵入を試みてくるだろう。
事前にある程度の想定を立てていたとはいえ、いざこうやって貫かれて侵入されるというのは、恐怖を感じさせられる。
だが、恐ろしいと思っていても相手にとっては関係なく、むしろこちらの反撃を心待ちにしているかのような気配を濃厚に感じさせられる。
「島内アナウンス!!欲望戦隊に連絡!!相手は予想ルートのG案を使用していることを確認!!至急、変態式迎撃用意を!!」
『こちらレッドレッド、既に向かっている!!』
『イエローより連絡、集合までにあと数秒はかかる』
『コンマ3秒で集結地点へ、ブルー参る!!』
『グリーン、到着を連絡!!』
相手がどのようにやってくるのか、短い時間だったとはいえ練り上げまくり、想定できた無数の予測のうち、選択されたのはG案だったようだ。
脅威の能力を持つ相手だとしても、度し難い大変態の能力を兼ね備えたものだとしても、一応は人である存在。
ならば、守ることはできなくとも、わずかながらでも上回った変態性を持つ者たちであれば、その変態力でカバーすればいい。
「事前にある程度の陣形も打ち合わせているが…果たして、やれるのだろうか」
毒を以て毒を制すように、変態には変態の猛毒を利用しようと考え、ここまで来た。
中三病をストーカーする彼女に、劇薬は良い薬として作用するだろうか。
いや、してもらわなければ意味がない。ここまでやっておいて、効果がなかったとなると、シャレにならない。
最終手段として、要塞島の自爆システムもあるが…
「…それでもやれるのは、あくまでもこのアルケディア・オンラインの世界のみ。現実のほうは別の戦いを待つしかないか…」
…かけるしかないだろう、友の力に。
「…そう思っているだろうけど、こっちでもなかなか苦戦かぁ…フロンおば、お姉ちゃん、そんなに相手の情報が入手しにくいの?」
「んー、久しぶりに手ごわい相手が出てきたねぇ。これは中々楽しめそうだよ」
中三病が要塞島でスクリーンに映っている欲望戦隊を応援しながら祈っていたその頃、ハルたちは今、現実の方にてフロンの手を借りていた。
どこの監獄に収監されようとも脱獄し、例え消されたとしてもなぜか復活を遂げている謎のストーカー。
運営側の方でもつかみ切れていない何かがあるのか不明だが、それならばより上の人の地下rを借りればいい。
そう考え、結論としてお婆/お姉ちゃんであるフロンに頼んで、相手の情報を得てもらうことにしていたのだが、思いのほか相当ヤバい相手だったようだ。
「良し、ハルもう少し女神のパワーをその装置に注いでおくれ。出力を上げれば、問題なく突破できるはずだよ」
「まず、女神の力を使う時点で、何かしらのヤバい相手だというのが分かるよな…」
現実世界での女神の姿は慣れないが、扱うことはできる。
その力を使って補助を行っていたが、どうも厄介さは相当のもののようだ。
「これまた、恐ろしいものを引いたねぇ、お前の友人は。並の人間ならばいざ知らず、ろくでもないものを引き付ける才能は他者を凌駕しているよ」
「まぁ、中三病さんですし…ろくでもないものを呼ぶのは、天性の才能だとは思う」
そもそも、あの恐竜女帝を姉に持つ時点で並のものではないとは思う。
集まってくるテイムモンスターも、ハルに負けず劣らずの強力なものが多いし、何かと悪運も強いといえば強い方なのだが、やることなすこと最悪な方向に向かいやすい。
ある意味、ハルとはまた違った変な星の下に生まれたのではないかと思えるような人物だったが…その才能は常時開花していたようだ。
「うーん、データ上だと確かに人間なんだけど、中身の真っ黒さはぶっ飛んでいるねぇ。悪意ある変態よりも悪意なしなのに変態神に負けず劣らずの力を持ちつつ、それを自覚して利用しているようだけど…並の人間なら、精神がぶっ壊れているよ」
色々と情報が集まってきているようだが、おもわずフロンが感嘆するほどのモノ。
いったい何を中三病さんは呼び寄せてしまったのだと言いたくなるのだが、詳しく知り過ぎると後々自分の似たような目に遭いそうなので、口で禍を呼ばないように黙っておく。
「力だけなら確かに、まだ女神としての経歴が浅いお前よりもあるだろうねぇ…過去データだと匹敵するのは数例ほどで…これはこれで、平和でなまりそうな腕を磨くにはいい機会だよ」
孫の孫のそのまた孫の…ハルの頼みを聞く祖母の祖母の、色々重ねた末の立場だが、苦労よりも未知のものを知る喜びを久しぶりに味わい、フロンは楽しんでいるようだ。
現実とオンラインの世界での攻防が同時に行われつつ、少しづつストーカーの正体が明かされ始めようとしているのであった…
『おっぎゃぁぁぁぁ!!ガチでいけないやつだこれぇぇぇ!!』
『くっ、奴の変態力は我々を凌駕するというのか…!!』
「…あ、中継映像で欲望戦隊が物凄いピンチになっているのが見えるな…実力だけならあれはあれで凄いのに、一人で追い詰めるとはどんな相手だよ」
…実質的なダメージを全部背負ってもらっているような感じがする。猛毒を盛っても飲み干すような劇薬か…うん、正面から戦うようなこと、僕らでやらなくてよかったよ。
側面からの襲撃に備えて、頑強な岩肌に見せかけ内部には分厚い鋼の装甲板が張り巡らされており、周囲には電磁波によって生成されたシールドも纏い、鉄壁の要塞となる。
さらに、上空からの襲撃にも備えるために張り巡らされた対空迎撃システムを前にして、そう簡単にこの要塞島ハルカンディアに進入できるものはそう相違ないだろう。
鉄壁の布陣を、いや、鋼鉄すら超えたアダマンタイトやミスリルといったような金属のような豪勢な守りはとてつもない強固さを誇り、来るもの全てを拒める…はずだった。
だがしかし、どれほど堅牢な作りにしていたとしても、所詮は人の手で作られたものゆえか、人の手で破ることは可能である。
争いの中で攻めに回るのは楽なのだが、守りを固めるには相手の攻めを凌駕するだけの力を持つことが重要であり、それだけの力を用意するのは容易なことではない。
たとえ、非常に珍しく女神の力を借りることが出来て、その力がそそがれていた場所だとしても…
チュドォォォォォォォォォォォォォン!!
ヴー!!ヴー!!ヴー!!
『一点集中攻撃による遠距離攻撃により、第273隔壁損傷!!内部への侵入が確認されました!!』
「…相手のほうが、より上の攻撃力を有していると、やはり守りだけにすると厳しいな」
光線がほとばしったかと思えば、次の瞬間に要塞島の一角を貫かれ、穴が開いた。
生体模式型自動修復機能を備えているので数十秒ほどで元の強度を取り戻せるだろうが、そのわずかな間に相手が侵入を試みてくるだろう。
事前にある程度の想定を立てていたとはいえ、いざこうやって貫かれて侵入されるというのは、恐怖を感じさせられる。
だが、恐ろしいと思っていても相手にとっては関係なく、むしろこちらの反撃を心待ちにしているかのような気配を濃厚に感じさせられる。
「島内アナウンス!!欲望戦隊に連絡!!相手は予想ルートのG案を使用していることを確認!!至急、変態式迎撃用意を!!」
『こちらレッドレッド、既に向かっている!!』
『イエローより連絡、集合までにあと数秒はかかる』
『コンマ3秒で集結地点へ、ブルー参る!!』
『グリーン、到着を連絡!!』
相手がどのようにやってくるのか、短い時間だったとはいえ練り上げまくり、想定できた無数の予測のうち、選択されたのはG案だったようだ。
脅威の能力を持つ相手だとしても、度し難い大変態の能力を兼ね備えたものだとしても、一応は人である存在。
ならば、守ることはできなくとも、わずかながらでも上回った変態性を持つ者たちであれば、その変態力でカバーすればいい。
「事前にある程度の陣形も打ち合わせているが…果たして、やれるのだろうか」
毒を以て毒を制すように、変態には変態の猛毒を利用しようと考え、ここまで来た。
中三病をストーカーする彼女に、劇薬は良い薬として作用するだろうか。
いや、してもらわなければ意味がない。ここまでやっておいて、効果がなかったとなると、シャレにならない。
最終手段として、要塞島の自爆システムもあるが…
「…それでもやれるのは、あくまでもこのアルケディア・オンラインの世界のみ。現実のほうは別の戦いを待つしかないか…」
…かけるしかないだろう、友の力に。
「…そう思っているだろうけど、こっちでもなかなか苦戦かぁ…フロンおば、お姉ちゃん、そんなに相手の情報が入手しにくいの?」
「んー、久しぶりに手ごわい相手が出てきたねぇ。これは中々楽しめそうだよ」
中三病が要塞島でスクリーンに映っている欲望戦隊を応援しながら祈っていたその頃、ハルたちは今、現実の方にてフロンの手を借りていた。
どこの監獄に収監されようとも脱獄し、例え消されたとしてもなぜか復活を遂げている謎のストーカー。
運営側の方でもつかみ切れていない何かがあるのか不明だが、それならばより上の人の地下rを借りればいい。
そう考え、結論としてお婆/お姉ちゃんであるフロンに頼んで、相手の情報を得てもらうことにしていたのだが、思いのほか相当ヤバい相手だったようだ。
「良し、ハルもう少し女神のパワーをその装置に注いでおくれ。出力を上げれば、問題なく突破できるはずだよ」
「まず、女神の力を使う時点で、何かしらのヤバい相手だというのが分かるよな…」
現実世界での女神の姿は慣れないが、扱うことはできる。
その力を使って補助を行っていたが、どうも厄介さは相当のもののようだ。
「これまた、恐ろしいものを引いたねぇ、お前の友人は。並の人間ならばいざ知らず、ろくでもないものを引き付ける才能は他者を凌駕しているよ」
「まぁ、中三病さんですし…ろくでもないものを呼ぶのは、天性の才能だとは思う」
そもそも、あの恐竜女帝を姉に持つ時点で並のものではないとは思う。
集まってくるテイムモンスターも、ハルに負けず劣らずの強力なものが多いし、何かと悪運も強いといえば強い方なのだが、やることなすこと最悪な方向に向かいやすい。
ある意味、ハルとはまた違った変な星の下に生まれたのではないかと思えるような人物だったが…その才能は常時開花していたようだ。
「うーん、データ上だと確かに人間なんだけど、中身の真っ黒さはぶっ飛んでいるねぇ。悪意ある変態よりも悪意なしなのに変態神に負けず劣らずの力を持ちつつ、それを自覚して利用しているようだけど…並の人間なら、精神がぶっ壊れているよ」
色々と情報が集まってきているようだが、おもわずフロンが感嘆するほどのモノ。
いったい何を中三病さんは呼び寄せてしまったのだと言いたくなるのだが、詳しく知り過ぎると後々自分の似たような目に遭いそうなので、口で禍を呼ばないように黙っておく。
「力だけなら確かに、まだ女神としての経歴が浅いお前よりもあるだろうねぇ…過去データだと匹敵するのは数例ほどで…これはこれで、平和でなまりそうな腕を磨くにはいい機会だよ」
孫の孫のそのまた孫の…ハルの頼みを聞く祖母の祖母の、色々重ねた末の立場だが、苦労よりも未知のものを知る喜びを久しぶりに味わい、フロンは楽しんでいるようだ。
現実とオンラインの世界での攻防が同時に行われつつ、少しづつストーカーの正体が明かされ始めようとしているのであった…
『おっぎゃぁぁぁぁ!!ガチでいけないやつだこれぇぇぇ!!』
『くっ、奴の変態力は我々を凌駕するというのか…!!』
「…あ、中継映像で欲望戦隊が物凄いピンチになっているのが見えるな…実力だけならあれはあれで凄いのに、一人で追い詰めるとはどんな相手だよ」
…実質的なダメージを全部背負ってもらっているような感じがする。猛毒を盛っても飲み干すような劇薬か…うん、正面から戦うようなこと、僕らでやらなくてよかったよ。
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