帰らずの森のある騒動記   (旧 少女が魔女になったのは)

志位斗 茂家波

文字の大きさ
29 / 76

とある修道女の話 その6

しおりを挟む
 神の怒りを買い、人々が逃げ、何もかもいなくなった街に、ルミアとゼリアスが小さな教会を建てて数年が過ぎた。


 ルミアはそこで修道女として、立てた教会の掃除を行い、毎日を神に祈りを捧げ、黒猫のゼリアスは狩りを行い、木の実を取ってきたり、大きな獣を狩って一緒に調理して食べていた。


 あの街での化け物騒ぎが嘘のように、以前の教会での日々のように、毎日が平穏に過ぎていく。





 神の怒りを買ったこの土地に、訪れる者はおらず、一人と一匹だけの毎日であった。









……そんなある日、ついにゼリアスの猫になる呪いが解けた。

 それはいつものように、ルミアが神に祈りを捧げていた時であった。


『なぁ、今日は何かリクエストがあればそれを狩ってきてやるがどうだ?』
「そうね、たまには甘い甘い木の実が欲しいわ」
『ふむ、それなら確か南の方になっていたはずだな』

 カリカリと、器用に猫の手で棒を持って、地面に文字を書くゼリアスに返答するルミア。

 このやり取りもずいぶんやって来たので、今では短く書かれても大体伝わっていた。


「それでいいわ……いつもありがとうね、ゼリアス」

 そうにこやかに言いながら、ゼリアスの頭を撫でたその瞬間…‥‥彼の体が光った。


カッ!!

「へ?」


 一瞬、何が起きたのか理解できず、二人は固まる。


 そしてすぐに何か煙が出て、辺りが白く覆われた。






…‥‥煙が晴れ、辺りを見渡せるようになった時、ルミアは驚愕した。


「え?」
「は?」

 二人の口から出るのは驚愕の声。

 それもそうだろう。ルミアの目の前にさっきまであったのは、毛並みの良い黒猫の姿をしたゼリアス。

 だが、今目の間にいるのは、銀髪の赤目の男性だったのだ。


「‥‥‥ありゃ?呪いが解けているのか?」

 そう口にした言葉に、ルミアは反応した。


「呪いって‥‥‥え?やっぱりゼリアスなんですか!?」

 黒猫の姿から一転、ゼリアスが銀髪の美しい男性になった事に気が付き、ルミアはそう声を上るのであった。









「…‥‥なるほど、どうやら完全に力も、何もかも戻ったようだな」
「いや、なんかすごすぎるんですけど」

 ゼリアスの言葉に、半目でルミアはツッコミを入れた。


 呪いが解け、力も完全に戻ったらしい悪魔のゼリアス。

 とはいえ、その力が完ぺきに戻っているのか軽くテストを行うために、今まで住んでいた教会のリフォームをやってもらったのだが…‥‥すごいの一言しか言いようがなった。

 

 今までボロボロだった教会は、新築同然…‥‥いや、それ以上のものになっていた。



 流石にこの状況では手入れが完全に行き届かず、雑草がちらほらと生え、意志もまばらにあった庭は、雑草が綺麗に刈り取られ、ふかふかの芝生になっている場所や、大きな木が生えた居心地のいい庭に。

 外壁がはがれた教会は、壁が綺麗な白色で塗り直され、心なしぼんやりと発光し、神々しさを際立てている。



 中に入れば、絨毯はほつれ、木の椅子なども修理が必要なほど痛んでいたのが、金具でしっかりと補強され、金の刺繍を施された美しいじゅうたんが床を覆い、光が差し込んで中は明るくなっていた。

 それでいて神秘的な雰囲気を醸し出し、ここが人のいない土地でなければ、誰もが祈りをささげるような教会…‥‥いや、規模も一緒に大きくなって、聖堂と言った方が正しいのかもしれない建物へと生まれ変わっていたのであった。



「調子に乗って、やり過ぎたかな?」
「やりすぎですよーーーーーーーーー!!」

 首を傾げつぶやくゼリアスに対して、ルミアは全力でツッコミを入れた。


 調子の乗った悪魔ほど、やり過ぎるとこんなことになるのだろうか…‥‥というか、悪魔が神々を祭る教会をリフォームして良かったのだろうか。

 そんな疑問はありつつも、やり過ぎたゼリアスに対してルミアは修正を細かく指示したのであった。







―――――――――――――――――――

 そんな彼らが教会の修正をしていた丁度その頃、その場から離れた平原を駆け抜ける者たちがいた。


「なぁ、本当にこっちの方にいるのか?ココは神々の怒りを買った土地とか言われていただろう?」
「いると言えばいるんじゃないかね?神のお告げとか言うし、とりあえず確認しないことには分からないだろう?」


 馬に乗って草原をかけ、目的地へと目指す者たち。

 彼らが何を目的にしているのか、そして何を為そうとするのか。

 何にせよ、彼らがその場へたどり着くまで、あと数日ほどであった…‥‥‥
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

65歳定年後に色々と思い出したので、魔法と異世界で最期の自由を楽しもうと思う。

mitokami
ファンタジー
 名もなき主人公の物語の5作目。高齢出産で生まれた子が親の介護で生活基盤壊された状態で(パート・アルバイトの類だけど)定年退職の年齢に!でも、魔法を思い出して、使えんの?ってか、使えたし!然も異世界に移転できるぞ!!なら、無駄な金払わずに済むように成ったらクビにしてくれそうな会社なんて退職して、魔法と異世界使って節約生活をしよう。どの道、独居老人は孤独死するしか無いんだし、何処で如何やって野垂れ死んでも一緒だろ?と言う自称オバちゃんの御話。(作者→)以前の様に短編と言うには長く、長編と言うには短い作品に成りそうです。

よくある風景、但しある特殊な国に限る

章槻雅希
ファンタジー
勘違いする入り婿、そしてそれを受けてさらに勘違いする愛人と庶子。そんなお花畑一家を扱き下ろす使用人。使用人の手綱を取りながら、次期当主とその配偶者の生きた教材とする現当主。それをやりすぎにならないうちに収めようと意を痛める役所。 カヌーン魔導王国では、割とよくある光景なのである。 カヌーン魔導王国シリーズにしてしまいました(笑) 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

お母さんはヒロイン

鳥類
ファンタジー
「ドアマット系が幸せになるのがいいんじゃない」 娘はそう言う。まぁ確かに苦労は報われるべきだわね。 母さんもそう思うわ。 ただねー、自分がその立場だと… 口の悪いヒロイン(?)が好きです。

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

ともボン
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」 夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。 この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。 そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……

処理中です...