帰らずの森のある騒動記   (旧 少女が魔女になったのは)

志位斗 茂家波

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とある聖女(?)の話 その3?

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‥‥‥人は言う。彼女こそが、この国に終焉を告げる者だと。

 また、別の人はこうも語る。彼女こそが、この国が犯した罪に対して裁きを下す者だと。

 さらにある者は、全てを破壊しリセットしてしまう者だとも言う。

 様々な人がそう残していくが、語る内容としてはどれもこれも一人の聖女の話のはずである。

 だがしかし、何故だろう。何故、聖女と言われているはずなのに、こんないわれが数多く残されているのだろうか…



「という訳で、実際にインタビューをして見たいと思い、この度かつて使われていたという聖女召喚の儀式を利用し、貴女様をお呼びいたしました」
「実行力、凄すぎないかしら?」

 
 既に何千年も経過してボロボロになっている、とある古代遺跡。

 そんな遺跡に残されていた召喚陣は修復され、その中に聖女が呼び出されたのをみて、その場にいた記者は説明した。

「数多くの偉業や伝説が残っているのですが、なぜ聖女様、貴女に対する評価が色々と凄まじいものしか残っていないのでしょうか?」
「うーん、不思議ねぇ。私としてはただ、その地で困っている人々のために動いただけですわよ?」

 インタビューをするための配慮を忘れずに、きちんと聴取しやすいように椅子と机を用意して座ってもらい、お茶を飲みながら聖女本人に語ってもらう。

 何千年と経過した魔法陣に、そもそも大昔から語られる聖女ではあるが、この召喚陣はどうも時間を選ぶことなく呼び出せるようで、都合よく聖女伝説が作られている中の聖女を呼びだせたようである。

 ただ、伝説の中には聖女に仕える獣や人の話もあるはずだが、どうも今回はそれを呼びだすことはなかったようで、聖女しかいないようだ。


「ただね、私だけでもやれることには限りがあった。だからこそ、使えるものは全て使い、ありったけの聖女としての想いをぶつけて動いただけなのよ。その必死さが、その伝説に尾びれを残したのじゃないかしら?」
「なるほど‥‥‥必死になって働く様がどこかで曲解されたと。人の頑張りと言うのは、後世になると都合の良い様にされたり、あるいは悪かったことを消したり、逆に嫌な相手の者は誇張したりしますものね。となると、この伝説を残した人たちの事を考えると、誇張の類なのでしょうか?」
「そうかもしれないわね。流石に私だって、その伝説の中にあるように大岩を動かずに粉砕したり、はたまたは国ひとつを海に沈める様な真似なんてできないわ。そう、私はただ、助けたい思いだけで動き、人々を救っていただけだもの」

 にこやかに答える聖女の雰囲気に、伝説の凄まじい片鱗は見えてこない。

 どうやら本当に曲解と誇張されたものが多いだけのようで、聖女本人はまさに聖女というべき心のありようだ。



「でもね、そんな私でもまだまだ救えない者は多い。そう、だからこそ終わりなき道‥‥‥けれども、聖女として全てを救う人生を成し遂げてみせるのよ」
「おお、聖女様は流石聖女様というか、気高い理想をお持ちですな。この伝説の凄まじさはさておき、本当に聖女として素晴らしいお方のようだ」

 うんうんと納得しつつ、そろそろ時間が来てしまったらしい。

 結構古いものを稼働させたせいなのか、どうもすでに限界が来ており、魔法陣にひびが入り始めると同時に聖女の体が輝き始める。


「あら、もう時間のようね」
「そのようですね。貴重な時間とお話、どうもありがとうございました」
「ええ、それじゃさよならね」

 にこやかに手を振って、そのまま魔法陣が砕け散り、同時に聖女の姿は消え失せた。

 ほんのわずかな短い時間、けれども聖女について知る事が出来たことに関しては、かなり貴重な時を過ごせたと言えるだろう。

「さてと、それじゃ聖女についてインタビューできたことをまとめるか!」

 そう口にして、記者は聖女と過ごせた時間をしっかりと無駄なく使うために、記事にまとめ上げていくのであった‥‥‥












――――――


「…都合の良い幻覚と話を見せるって、それもう聖女じゃなくて魔女の領域なんじゃ?」
「大丈夫よ。しっかりと相手にとって理想のものを見せたはずなのよね」


…‥‥どこかの世界に引っ張られていたと思ったが、どうやら聖女は未来に呼ばれていたらしい。

 話を聞く限り、間違っていないと思えるのだが、そんなことを聖女がして良いのかと俺は思う。


「それに、聖女としての思いなどは嘘ではないわ。だからこそ、最後まで聖女として求められるのであれば、そうであるようにしただけなのよ」

 ごほごほっとせき込みつつ、ベッドに横になる聖女。

 無理もない。もうだいぶ限界が近づいているというのに、聖女としての残り少ない力を使ったのだから。


「だって、聖女として呼ばれたのに出てきたのが、こんなお婆ちゃんじゃ悲しい事でしょ?だからこそ、少しはごまかしても良いわよね」
「‥‥‥まぁ、それで良いなら別に言うことも無いか」

 お婆ちゃんと言われても、まぁ確かにそうかもしれない。

 自分は悪魔であり、人間の感覚に疎い部分があるとは言え、多少は見た目の年齢を隠したくなるというのはどこの人でも大抵同じであり、この聖女もそうだったのだろう。


「けれども、人外レベルまで生きている状態で、聖女として勤めたのは感嘆に値するよ。まさか、100を超えて桁違いの千歳超えだしなぁ‥‥‥」


 そこまで生きている時点で、聖女としての力というか生命力は凄まじいものかもしれない。

 ここからかなり月日がたった未来でも伝説が残っているぐらいだし、そんな事が出来てもおかしくないとは思われるだろう。


「しかし、誇張と思われているけど、まだ過小だよな?動かずに岩を砕いたんじゃなくて、大岩が自ら砕け、国を一つどころか数十ぐらい…破壊神とか邪神とか言われておかしくないのに、何で聖女ってことで残ったのやら」
「そこは分からないわ‥‥‥でも、面白くなっているならそれはそれでいいかしらね」

 ふふっと笑う聖女だが、もうその寿命は長くないだろう。

 命の灯が消えうせかけており、あと少ししか話すことはできない。


「…‥‥ねぇ、悪魔さん。聖女の死後ってどうなるのかしら?やっぱり、私を聖女にしてくれた神様のもとへいって、仕えることになるのかしら?」
「…‥‥さぁな。死後の分野に関して言えば、悪魔と契約した部分もあるから、本来なら地獄や魔界の方へお前の魂は落ちるはずだった。けれども、お前に聖女としての力を与えた神…‥‥いや、神という名称は人間が付けたものだし、あれをそう言って良いのか分からんが、そいつの力が強すぎてどうなるのかはわからん。少なくとも、相当気に入られているようなら、今度はまた新しい聖女として生まれ変わるんじゃないか?」
「そういうものかしらねぇ。なら、また生まれ変わった時、私がまた召喚してあげるわ」
「絶対に拒否する。どれだけ付き合わされたと思っているんだよ」
「ふふふふ、かなり長い付き合いだったものね」


 笑いつつも、聖女は悟っているのだろう。

 ここでの別れでもう、あえなくなることを。


「それじゃ、さようなら悪魔さん。また来世で会えたら今度は‥‥‥‥こき使いまくるわ」
「そこはせめて、もうちょっとまともな事を言ってほしかったな!!」

 最後の方にひどいことを言いつつも、笑顔で聖女はそう告げ、消え失せた。

 聖女の体ごと、この世界から失われたようだ。





「‥‥‥まったく、最後の方までろくでもなかったというか、転生したら二度と会いたくないな」

 聖女が失われ、俺はその場を去る。

 聖女の死を感知したのか、各地で教会が鳴り始め、その鐘の音が届いてくる。


ゴーン ゴーン ゴーン・・・



「言ってなかったが、聖女に生まれ変わりはあるかもしれない。けれども、記憶も何もかも消されて俺のことも知らない魂になるだろう。新しい魂として出される際に、支障がない様に特例などは除く」

「でもな、聖女お前の場合はその特例にならず、きちんと処理される方になっているんだ」







「…‥‥さよならだ。世界最凶最悪にして、多くの民に愛された聖女よ」



 酷い話しばかりが伝わっていたようだが、それでも彼女に救われた者は多い。

 また、彼女の聖女としての心は本物であり、だからこそ伝わる者には伝わり、残すことになったのだろう。


 そう考えると、長年何かと呼ばれ付き合わされてきた身としては、何とも言えない気持ちになるのであった…‥‥いや本当に、良く聖女として伝わったなと思う部分が大半を占めて‥‥‥
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