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清算する時も新しく生み出す時も
#389 どこからともなくぼわっとデス
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SIDEシアン
【シャゲシャゲシャゲェェェ―――!!】
「ん?今の声は‥‥‥」
ぽかぽか陽気であり、娘たちがのんきに遊んでいる中、突然ドーラの声が響き渡った。
何事かと思い、衣を出してふわっと空に浮かんでみれば、地上の方でドーラが猛ダッシュでこちらに向かっていた。
植物なのに、根っこを使って器用にぐるぐる回転絵の漫画走りをしているドーラだが、何やら物凄い緊迫しているようだ。
魔界まで行って修行したりして、色々と強くなっているドーラだが…‥‥ここまで焦っているという事は、何かただ事でも無い事が起きたのだろうか?
とにもかくにも、全速力で駆け抜けてくるドーラを王城内に入れると同時に、シスターズ経由でゼリアスたちからもとある情報がこちらに届けられるのであった‥‥‥‥
「‥‥‥冥界の植物!?」
『ああ、間違いない。そしてそっちの方だと‥‥‥』
【シャゲシャゲシャゲェ!!】
『‥‥‥なるほど。それは確実に冥界の植物の一種だろう。タケノコに近いのだと‥‥‥確か「バンブードゥ」だったはずだ』
カクカクシカジカと、シスターズ越しの通信と、ドーラの話を聞き、まとめ上げると非常に面倒な事態が起きていることが理解できた。
「まさか、悪魔グズゥエルゼが冥界から脱走したとは‥‥‥」
【しかも、嫌な土産として、世界を滅ぼしかねない冥界の植物を一つ、植えたまま‥‥‥】
「その上、既に接近している可能性が大きいですカ‥‥‥被害も出ているようですし、最悪過ぎマス」
なんというべきか、情報量が色々と多い。
ひとまずボードをワゼに用意してもらい、軽く要点だけをまとめ上げてもらった。
―――――――――――――――
・悪魔グズゥエルゼ、脱走
・冥界の植物(世界滅ぼせる)も持ち逃げ
・そのうちの一種、既に植えられ、国一つ悪魔一人モンスター数名ほど犠牲
『バンブードゥ』
冥界の植物の一種であり、見た目はタケノコ。冥界料理の材料にされることもあるが、冥界以外の世界では世界を滅ぼしかねない植物。
自身の栄養補給のためにありとあらゆる生物に分身を突き刺し、命を吸引しまくって跡形もなく消滅させてしまう。その地に根付かずに多くの命がある場所に惹かれて移動し、強力なエネルギーを常に求めて生物を全滅させていく。
過去にとある世界で解き放たれてしまい、神々が対応する事態にまでなったが、その時にはすでに遅く滅亡していた。
―――――――――――――――
「その冥界の植物を先にどうにかしないといけないな‥‥‥ドーラ、そのモンスター同士での集会現場って、どの辺の位置だ?」
【シャゲシャゲェ】
地図を広げ、大体この辺りだと葉っぱで指し示すドーラ。
まだ相当な距離があるが‥‥‥命を狙って動く植物が、次に狙いそうな場所はここで間違いないだろう。移動速度を考慮すると余裕はなさそうだ。
「都市の外部及び地下からの侵入に備え、シスターズを総動員させろ!!」
「了解デス!」
ワゼの素早く命令し、シスターズを何時でも動かせるようにして置く。
ただ、問題として、その冥界の植物は…‥‥
『生憎ながら、魔力などで感知が不可能だろう。冥界の植物は死の概念そのものでもあり、捕らえることができない。しかも、普通の攻撃はほぼ確実に通用しない』
「というと?」
『死の概念で攻撃を色々と変えることができる‥‥‥例えば魔法でも、魔力の塊だが、尽きたら消える≒死であると捕らえられるだろうし、そうなれば効果はないかもしれないのだ』
厄介な性質というべきか、何と言うか‥‥‥生半可な魔法どころか、様々な攻撃手段は死とは関係ないように見えても、死につながるような概念がわずかに存在していれば、それは死そのものであり、冥界の植物にはダメージを与えないらしい。
そもそも冥界の植物は冥界でぐらいしかダメージは通らないそうだ。
『あの世界自体が、死そのもの‥‥‥死の概念で無効化できても、より強大な死の概念には意味をなさない。だからこそ冥界では問題にはならないんだ』
【うーん、その死の概念でより強力なものさえあれば、冥界の植物でもどうにかできるんでしょうか?】
『難しい所だ。死という概念自体が、そもそも捕らえにくかったりするからな…‥‥』
とはいえ、ダメージが通らずとも、多少の誘導や妨害程度なら可能らしい。
それならどうにか侵攻を阻止して、時間を稼いでいる間にどうにかできればいいのだが…‥
『下手すれば世界が滅びかねない、冥界の植物持ち出し自体、神々も介入して抑えるべきなのだが‥‥‥先手を打たれたようだ』
「というと?」
『どうやったのかはわからんが、ブロックされているようだ。神々のいる神界全体が現在通信及び通行不可能状態で手出しすらできん』
…‥‥冥界の植物が別の世界に植えられた場合、過去の事例から神々が全て強制対応をしなければいけず、強制的な降臨によって全力で排除するらしい。
だがしかし、今回は悪魔グズゥエルゼが何か施したのか神界側から別の世界へ行く方法は取れないようで、神々が動けないようである。
つまり、現時点で対応できるのは僕たちぐらいしかおらず、そもそも対応し切れるのかどうかという問題がある。
「‥‥‥絶望しかないような」
『一応、冥界の植物には魔法とかもほぼ効かないからな‥‥‥そちらの火力があっても、多分意味はないだろう。対応来出来る手段は…‥‥聖剣ぐらいか』
「え?」
以前、ちょっとどこぞやの馬鹿皇子が暴走して思いっきり扱いまくった聖剣。
既にしっかりと整備し直し、色々とワゼの手によって何重にも厳重に保管してある代物。
それがどうして対応手段になるかと言えば‥‥‥‥
『聖剣も一応、神々の力に近いものがあるからな。聖魔法とはちょっと違う部分もあるのが原因かもしれんが、あれでも伐採とかは可能だったはずだ。『偽物の聖剣』とは違う、正真正銘まっとうな聖剣であれば、どうにかできるだろう』
ただ、問題としては、聖剣は魔王特攻武器ともいえる代物。
魔王の力を持つものにとっては最悪の武器でもあり、僕自身が扱えるわけでもない。
で、誰が扱えそうかと言えば…‥‥
「ワゼ、聖剣って使えるか?」
「んー、ちょっと無理ですネ。メイドたるもの、ご主人様の鍛錬のために、ある程度の武器は嗜む者なのですが…‥‥」
魔王特攻に力を振り過ぎたのか、普通に扱うと非常に切れ味が悪すぎるなまくらな剣でもある。
なので、聖剣を普通に振るったところで斬るには時間もかかるだろうし、うまく扱えない可能性の方が大きいのだ。
「‥‥‥っと、目視で確認できた連絡がありましたネ」
考え込む中、ワゼがふとそう口にした。
「大体どのぐらいだ?」
「うーん、移動速度ですとそう足は早くないようですが…‥‥3日以内には到着する感じですネ。こちらの対抗策が聖剣ぐらいしかないですが、扱うには問題が…‥‥いえ、もしかすると、どうにかできるかもしれまセン」
地図を広げ、位置を記し、どの程度かかるのか話し合う中で、ぽんっとワゼが手を打って名案を想いついたようだ。
「ただ、これをやっちゃうと聖剣が消失する可能性も大きいので、チャンスは一回限りですが‥‥‥どうしましょうカ?」
「…‥‥何をしでかす気だ?」
「前からちょっと構想していた、大規模ご主人様絶対安全邪魔者排除装置に組み込む気なのデス」
何を構想していたんだといいたいが、一応前にやらかした件で事後報告しないようにしつつ、色々と考える点があったので建造していなかったらしいその代物。
それに聖剣を組み込みどうにかできるらしいが、やってしまえば聖剣は失われるそうだ。
悪魔グズゥエルゼが他に冥界の植物を持ち込んでいないとは限らないし、対抗策になりそうなのを失うのは不味いが…‥‥それでも、今ある状況を逃れなければいけないだろう。
「なら、それをやってしまえ」
「了解デス!」
後で後悔することになるかもしれないが、それでも今は対抗策が少ない以上、やれる手段をやっておかなければいけないだろう。
そう判断し、僕はワゼにやるように命じるのであった‥‥‥‥
【シャゲシャゲシャゲェェェ―――!!】
「ん?今の声は‥‥‥」
ぽかぽか陽気であり、娘たちがのんきに遊んでいる中、突然ドーラの声が響き渡った。
何事かと思い、衣を出してふわっと空に浮かんでみれば、地上の方でドーラが猛ダッシュでこちらに向かっていた。
植物なのに、根っこを使って器用にぐるぐる回転絵の漫画走りをしているドーラだが、何やら物凄い緊迫しているようだ。
魔界まで行って修行したりして、色々と強くなっているドーラだが…‥‥ここまで焦っているという事は、何かただ事でも無い事が起きたのだろうか?
とにもかくにも、全速力で駆け抜けてくるドーラを王城内に入れると同時に、シスターズ経由でゼリアスたちからもとある情報がこちらに届けられるのであった‥‥‥‥
「‥‥‥冥界の植物!?」
『ああ、間違いない。そしてそっちの方だと‥‥‥』
【シャゲシャゲシャゲェ!!】
『‥‥‥なるほど。それは確実に冥界の植物の一種だろう。タケノコに近いのだと‥‥‥確か「バンブードゥ」だったはずだ』
カクカクシカジカと、シスターズ越しの通信と、ドーラの話を聞き、まとめ上げると非常に面倒な事態が起きていることが理解できた。
「まさか、悪魔グズゥエルゼが冥界から脱走したとは‥‥‥」
【しかも、嫌な土産として、世界を滅ぼしかねない冥界の植物を一つ、植えたまま‥‥‥】
「その上、既に接近している可能性が大きいですカ‥‥‥被害も出ているようですし、最悪過ぎマス」
なんというべきか、情報量が色々と多い。
ひとまずボードをワゼに用意してもらい、軽く要点だけをまとめ上げてもらった。
―――――――――――――――
・悪魔グズゥエルゼ、脱走
・冥界の植物(世界滅ぼせる)も持ち逃げ
・そのうちの一種、既に植えられ、国一つ悪魔一人モンスター数名ほど犠牲
『バンブードゥ』
冥界の植物の一種であり、見た目はタケノコ。冥界料理の材料にされることもあるが、冥界以外の世界では世界を滅ぼしかねない植物。
自身の栄養補給のためにありとあらゆる生物に分身を突き刺し、命を吸引しまくって跡形もなく消滅させてしまう。その地に根付かずに多くの命がある場所に惹かれて移動し、強力なエネルギーを常に求めて生物を全滅させていく。
過去にとある世界で解き放たれてしまい、神々が対応する事態にまでなったが、その時にはすでに遅く滅亡していた。
―――――――――――――――
「その冥界の植物を先にどうにかしないといけないな‥‥‥ドーラ、そのモンスター同士での集会現場って、どの辺の位置だ?」
【シャゲシャゲェ】
地図を広げ、大体この辺りだと葉っぱで指し示すドーラ。
まだ相当な距離があるが‥‥‥命を狙って動く植物が、次に狙いそうな場所はここで間違いないだろう。移動速度を考慮すると余裕はなさそうだ。
「都市の外部及び地下からの侵入に備え、シスターズを総動員させろ!!」
「了解デス!」
ワゼの素早く命令し、シスターズを何時でも動かせるようにして置く。
ただ、問題として、その冥界の植物は…‥‥
『生憎ながら、魔力などで感知が不可能だろう。冥界の植物は死の概念そのものでもあり、捕らえることができない。しかも、普通の攻撃はほぼ確実に通用しない』
「というと?」
『死の概念で攻撃を色々と変えることができる‥‥‥例えば魔法でも、魔力の塊だが、尽きたら消える≒死であると捕らえられるだろうし、そうなれば効果はないかもしれないのだ』
厄介な性質というべきか、何と言うか‥‥‥生半可な魔法どころか、様々な攻撃手段は死とは関係ないように見えても、死につながるような概念がわずかに存在していれば、それは死そのものであり、冥界の植物にはダメージを与えないらしい。
そもそも冥界の植物は冥界でぐらいしかダメージは通らないそうだ。
『あの世界自体が、死そのもの‥‥‥死の概念で無効化できても、より強大な死の概念には意味をなさない。だからこそ冥界では問題にはならないんだ』
【うーん、その死の概念でより強力なものさえあれば、冥界の植物でもどうにかできるんでしょうか?】
『難しい所だ。死という概念自体が、そもそも捕らえにくかったりするからな…‥‥』
とはいえ、ダメージが通らずとも、多少の誘導や妨害程度なら可能らしい。
それならどうにか侵攻を阻止して、時間を稼いでいる間にどうにかできればいいのだが…‥
『下手すれば世界が滅びかねない、冥界の植物持ち出し自体、神々も介入して抑えるべきなのだが‥‥‥先手を打たれたようだ』
「というと?」
『どうやったのかはわからんが、ブロックされているようだ。神々のいる神界全体が現在通信及び通行不可能状態で手出しすらできん』
…‥‥冥界の植物が別の世界に植えられた場合、過去の事例から神々が全て強制対応をしなければいけず、強制的な降臨によって全力で排除するらしい。
だがしかし、今回は悪魔グズゥエルゼが何か施したのか神界側から別の世界へ行く方法は取れないようで、神々が動けないようである。
つまり、現時点で対応できるのは僕たちぐらいしかおらず、そもそも対応し切れるのかどうかという問題がある。
「‥‥‥絶望しかないような」
『一応、冥界の植物には魔法とかもほぼ効かないからな‥‥‥そちらの火力があっても、多分意味はないだろう。対応来出来る手段は…‥‥聖剣ぐらいか』
「え?」
以前、ちょっとどこぞやの馬鹿皇子が暴走して思いっきり扱いまくった聖剣。
既にしっかりと整備し直し、色々とワゼの手によって何重にも厳重に保管してある代物。
それがどうして対応手段になるかと言えば‥‥‥‥
『聖剣も一応、神々の力に近いものがあるからな。聖魔法とはちょっと違う部分もあるのが原因かもしれんが、あれでも伐採とかは可能だったはずだ。『偽物の聖剣』とは違う、正真正銘まっとうな聖剣であれば、どうにかできるだろう』
ただ、問題としては、聖剣は魔王特攻武器ともいえる代物。
魔王の力を持つものにとっては最悪の武器でもあり、僕自身が扱えるわけでもない。
で、誰が扱えそうかと言えば…‥‥
「ワゼ、聖剣って使えるか?」
「んー、ちょっと無理ですネ。メイドたるもの、ご主人様の鍛錬のために、ある程度の武器は嗜む者なのですが…‥‥」
魔王特攻に力を振り過ぎたのか、普通に扱うと非常に切れ味が悪すぎるなまくらな剣でもある。
なので、聖剣を普通に振るったところで斬るには時間もかかるだろうし、うまく扱えない可能性の方が大きいのだ。
「‥‥‥っと、目視で確認できた連絡がありましたネ」
考え込む中、ワゼがふとそう口にした。
「大体どのぐらいだ?」
「うーん、移動速度ですとそう足は早くないようですが…‥‥3日以内には到着する感じですネ。こちらの対抗策が聖剣ぐらいしかないですが、扱うには問題が…‥‥いえ、もしかすると、どうにかできるかもしれまセン」
地図を広げ、位置を記し、どの程度かかるのか話し合う中で、ぽんっとワゼが手を打って名案を想いついたようだ。
「ただ、これをやっちゃうと聖剣が消失する可能性も大きいので、チャンスは一回限りですが‥‥‥どうしましょうカ?」
「…‥‥何をしでかす気だ?」
「前からちょっと構想していた、大規模ご主人様絶対安全邪魔者排除装置に組み込む気なのデス」
何を構想していたんだといいたいが、一応前にやらかした件で事後報告しないようにしつつ、色々と考える点があったので建造していなかったらしいその代物。
それに聖剣を組み込みどうにかできるらしいが、やってしまえば聖剣は失われるそうだ。
悪魔グズゥエルゼが他に冥界の植物を持ち込んでいないとは限らないし、対抗策になりそうなのを失うのは不味いが…‥‥それでも、今ある状況を逃れなければいけないだろう。
「なら、それをやってしまえ」
「了解デス!」
後で後悔することになるかもしれないが、それでも今は対抗策が少ない以上、やれる手段をやっておかなければいけないだろう。
そう判断し、僕はワゼにやるように命じるのであった‥‥‥‥
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