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6章 悪意と善意、トラブルメーカーと苦労人

6-9 同じ手はあっちでも

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‥‥‥フィーがゼナの資格に対してツッコミを放棄しようとしていたその頃。
 
 ミルガンド帝国の方でも、実は同様の襲撃事件が生じていた。

 異なる点があるとすれば、襲撃対象になったものには魔剣はなく、単純に搦め手で落そうとしており、事前に周囲に痺れ薬やその他色々な身動きできなくなる薬が漂っており、常人であればその場にいただけで、全員動けなくなっていただろう。

 だがしかし、混ざり物が少々あれども、大半は同じ細胞…特に、ドラゴンとしての個性が強く出ている彼女にとっては、まったく意味を成さない手段だった。


『…アアア?』
「うごぼぉ…」
「おげぇ…」

 襲ってきた奴らが全員地に伏せ、びくびくと軽く痙攣しているようすに、フィリアは首をかしげていた。
 本日は気分良くひとりで散歩していたところで、適当にこの辺で仲良くしている裏路地の猛者たちとまた殴り合いという名の話し合いをしようとしていたところで、突然襲われたのである。

 襲ってくるやつらは撃退される覚悟がある奴だと思い、返り討ちにして見たのだが…思ったよりもべっきべきに心がへし折れており、その弱さに思わず疑問を持ったのだ。

 色々と策を立ててやってきたのであろうが、その割には想定を超えた瞬間駄目になるのは弱すぎる。
 やるのであれば一手先、二手先…愛れがドラゴンというのを仮定しているのであれば、大幅にぶっ飛んで千手先までかんがえているのかなとも思っていたが、そこまで念入りにやっていなかったようで、色々と潰しまくった様だ。

『アー…アアア』

 とりあえず、ぶちのめしまくって動けなくなるほどにしたのは良いのだが、ここからどうしたらいいのか。
 襲撃者たちが自爆・自殺して片付くのであればまだ良かったのだが、そうする前にばっきばきに壊し過ぎたようで、その手段もできない様子である。
 ならばこのまま放置しても良いのだが…流石に襲撃者を放置すると後々面倒になるのは分かっている。

『んー‥ア』

「おげげ‥ま、まて、何をする気だ」
「運ぶ気か、どこにだ、国になのか‥」
『アアア、アアアア』
「「‥裏社会の猛者?え?」」

 自分の言葉じゃうまく伝わらない時もあるので、手っ取り早く伝えるために文字を書いて伝えれば、襲撃者たちは目を丸くして驚いた様子になった。

 そんなに驚くことだろうか?こういう場所で起きたのであれば、いっそその類に関して知識があるような人たちに渡した方が良いことなのだから。

 餅は餅屋というように、専門家の下へ…ただし、専門家と言ってもさらなる荒事に特化したような処へ連れ込めばいい話だと、彼女は判断した。

「お、おいまて、まてまて!?」
「明らかにヤバそうなところへ、我々を連れ込むなぁ!!」
「というか、何で帝国の方にいるドラゴンが、そんなのと絡んでいるんだぁぁぁぁ!!」

『アアアア?アアア』

 単純な話。拳での殴り合いである。

 そんな言葉を伝えたが、理解してくれなさそうだし、説明も面倒くさくなったので、とりあえず今は襲撃者たちをずるずると引きずって、二度と日の目も見ることが出来そうにない場所へと向かうのであった‥‥‥

 ある意味たくましく育っているが、関係性としては義理の妹のようなものがそんなものとつるんでいていいのか、フィーが知ったら新たに悩むことになりそうではある‥‥

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