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学園1年目

9話

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‥‥‥馬車の旅で数日後、ようやくグリモワール学園がある都市へ、ルースたちはたどり着いた。

 そこそこの大人数での移動であり、他の村や街からも学園目指して途中から乗車してくる人も多くいたりはしたが、それでもギュウギュウ詰めにならなかったのは良かったことであろう。というか、それを見越して馬車が大きく作られていたのだろう。


「えっと、ここが学園がある…‥メルドランって都市だよな」
「あの奥の方の、すでに十分目立つ時計塔がある位置が学園がある場所だって」



 馬車内での他の会話を聞いて、見てみれば確かに巨大な時計塔が都市の中央に鎮座していた。

「あれが学園名物ベルビックンという時計塔らしいわよ?」
「でかいなぁ…‥」

 その大きさに、ルースたちは驚愕する。



 何しろ、この世界はまだ建築技術が未発達なのか高層ビルとかはなく、でかい建物の例としては王城などが挙げられるそうだが、それでもそこまで大きな建造物を見ることはないからである。

 魔法とかがあるし、出来そうなものなのだが‥‥‥まぁ、魔法もそんなに万能ではないという証明でもあるようだ。



 ただし、あの巨大時計塔ベルビックンは事情が少し違うらしい。

「元々、ここは岩山だったそうだけど、周辺を削っていって、芯の部分があの時計塔らしいわね」
「そこを改造して、今の時計塔になったのか…‥」



 どうやらこの地域、昔はごつごつした頑強な岩山だったそうだ。

 ただ、何がきっかけなのかはわからないけど、ここを平野にしようという案が出て、その作業で岩山は削り取られていったそうだ。

 さながら、リンゴの皮むきのごとく外側から削ったらしい。なぜその工法で山を削ったのかは不明だけど‥‥‥なんとなく、やった人のこだわりなのだろうと思えた。匠の技とも言うかな?

 そして、最終的に芯の部分として一本の巨大な岩の柱ができ、せっかくなので記念として時計塔に改装して、今は都市中どこでも日時を教える役割を持つようになったのだとか。


 さらに、今の時刻ではなく、特定の時刻で美しい音色がするという鐘までセットされているようで、中々楽しみである。







 都市内に入り、学園の門前で馬車から皆下車し、地に降り立つ。


「ここがグリモワール学園か‥‥‥」

 この国で、魔導書グリモワールを手に入れた者たちが集い、その使い道を学び、将来を考えていく学び舎。

 これからの学園生活が楽しみになっていくルースであった。


「そういえば、学生は寮生活らしいわね。‥‥‥ルース君、合鍵作って渡してくれないかしら?」
「いや、男子寮と女子寮に分かれるそうだから無理かな」

 というか、絶対に授業の合間とかに潜り込んで何かされそうで怖い。

 楽しみから一転、少し恐怖を覚えたルースであった。

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