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学園1年目
15話
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『バルション学園長に、黄金の魔導書の所持者が完全に目を付けられた』
‥‥‥その噂はあっという間に広まり、ある者は安堵し、またある者は号泣して喜んだ。
学園長に目を付けられるという事は、その分彼女が他の生徒たちへの興味を減らしてルースの方へ向けるという事である。
つまり、入学式初日から無茶苦茶をやらかすような人が、他の人達に同様の、もしくはそれ以上の事をさせられる可能性が減るという事で、誰もが心の底から喜んだのだ。
生贄が捧げられ、それによって不幸が来なくなったかのように、ルースという生贄がバルション学園長に捧げられて、生徒たちにも、ついでに教職員の方にも学園長の無茶苦茶さを味合わされる機会が減るという事なので、喜ばないわけがない。
いや、それでも一人だけは猛烈に反対していた。
「バルション学園長!!ルース君から離れてください!!彼はあたしの未来の婿の予定ですよ!!」
「あらあらー?確か貴方たちは婚約していなーいはずですよね?なんでわざわざやってくーるんでしょうか?」
「ルース君に怪しい女がくっつきそうで、その予防に努めているだけです!!」
「んー、でも私は別にー彼を誘惑とかしないよーん。ただ、魔導書の指導を自ら手取り足取り教えてあげーるのよ」
「その最中にルース君が襲われそうで、それを防ぎたいのよ!!」
「‥‥‥その議論の前に、まずは俺を解放してくれませんかね?」
ぷらーんと魔法で空中に吊るされたルースは、下の方で言い争っているバルション学園長とエルゼにそう言ったのだが、全く気が付かれていなかった。
現在、放課後の時間帯で他の生徒たちは皆寮へ戻ったり、バイトをして小遣いを稼いだりしているのだが、先日のタキの召還の一件から、バルション学園長に目を付けられたルースは特別補習授業として魔導書の指導を受けさせられているのだ。
・・・・今日はクラスの友人たちとトランプなどで遊ぶつもりだったのだが、授業終了と同時に学園長が教室前に出てきて、半ば引きずられる形でこうやって指導受けさせられている。
抵抗を試みたが、その前に腹に良い一撃をくらいまして、気絶して目を覚めたらこうやって宙に吊るされていたんだよ。一応女性でそこそこ細腕な学園長なのに、受けたことはないけどプロボクサー級の一撃であった。
最後に見えたクラスメイト達の哀れじみた目は辛かった…‥‥同情をするなら、誰かに本気で身代わりになって欲しい。そう思ったが、全員物凄い首を振る光景しか思い浮かばなかった。
そうルースが考えていると、何とかエルゼたちの話はまとまったようだ。
「じゃあ、今かーら空中に吊るされーている彼にめがーけて、あな-たの愛の魔法を撃ってあ-げてね?本当に彼を愛せるのなーらば、全弾命中なはーずだよーん」
「よし!!全弾命中させるわよ!!」
「なんか思いっきりまるめ込まれていないか!?」
バルション学園長の話術恐るべし。
何処をどうしたらそのように話を捻じ曲げ、そしてエルゼに俺を攻撃させるように仕向けられるのだろうか。そしてなぜエルゼに攻撃させるのだろうか。
「あ、ルース君はー魔導書で何とかその状態で回避をーしてみーてね」
‥‥‥事実上の死刑宣告である。手足は動くとはいえ、自由が利かない宙づり状態であるのだ。
見事に学園長に乗せられたエルゼのあの様子だと、手加減せずに全力で魔法をぶつけまくる可能性が高い。
エルゼの水色の魔導書は主に水や氷に関する力を与える。
となれば、ただの水流とかならまだしも、氷の玉とか水の槍とかだとシャレにはならないだろう。
少なくとも、水の刃の形成とかもできていたので…‥‥あ、これ死んだ?
「『魔導書顕現』!!」
宙にどうやって吊るされているのかは今一つわからないが、とにもかくにも魔導書は使用できるので、何とか対処をするしかない。流石にまだ命を散らしたくない。
「『アイスボール』連射!!」
そうこうしているうちに、早くもエルゼが魔法を発動させた。
空中に多くのガッチガチに固められた氷の塊が出来上がり、ルースの方へ一斉にとびかかってくる。
あまりの容赦のなさにルースは顔を引きつらせる。
だが、氷の玉であるならばまだ対処はいけるはず!!
「『ファイヤトルネード』!!」
火と風の複合魔法で、いわゆる火災旋風…‥‥いや、それとはまったくの別物かもしれないが、強力な熱波が出現し、一気に氷の塊を飲み込んでは溶かし、蒸発させていく。
ルースの場合、複合した魔法を扱えるので組み合わせ次第ではまだまだ対応可能である。
水や氷をエルゼは扱えるが、それ以上の数をルースは扱えるので、なんとなかなりそうであった。
「全弾蒸発・・・・・まだまだあたしの愛が足りないというの!?燃え上がるルース君の心の方が強いの!?」
「いやそれ以前にそもそも何で攻撃を仕掛けるんだよエルゼ!!」
「だったらこの魔法で確実に仕留めるまでよ!!」
「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇえ!!」
ルースのツッコミの叫びもむなしく、エルゼは全く話を聞かず、次の魔法の準備を始めた。
この日、あと10発ほどの魔法を出されなんとかルースは対応しききった。
憔悴し、地面に降ろされた後、ルースは倒れ込む。
「ふぅ‥‥‥まだまだあたしの愛は足りないのかしら‥‥‥もっともっとルース君を引き付けるだけの力を持たないといけないわね」
「だったーらエルゼさん、ルース君の特訓につきあーうだけで、貴女も一緒に愛を育めるはーずなのよ。どーかしら?」
「ええ、ご指導お願いいたしますバルション学園長!!」
学園長の誘導に乗せられ、エルゼも一緒にやることが決定したようである。
‥‥‥類は友を呼ぶ。
訓練の鬼に、ストーカーの鬼が呼び寄せられ、その言葉の意味を身をもって理解したルース。
魔導書の鍛錬において、心を無に出来るような方法がないかと密かに探り始めるのであった。
流石にこのような訓練が続けば心が持たないような気がしたからである‥‥‥いや、先に体の方が持たないかも。
‥‥‥ちょうどその頃、ルースたちがいるグリモワール学園から離れた場所である事件が起きていた。
学園から離れた位置にあるとある村。
そこで、つい最近盗賊の襲撃があったのである。
しかも‥‥‥
「‥‥‥こりゃ酷いな」
「流石にこの惨状は、努めて始めてみますね」
襲撃の情報から調べに来た、事件を調査する衛兵たち。
遺体などが残されていたが、どれもこれも言い表すのが怖ろしくなるような惨状ばかりである。
「あまりにも綺麗な切断面だが‥‥‥なんだこのヌルヌルは?」
遺体に付着しているぬるぬるした謎の液体を見て、衛兵たちは疑問に思う。
「水魔法によるものでしょうか?」
「いや、こういったヌルヌルした液体の類は闇の魔法‥‥‥黒い魔導書を所持する者が使える魔法なはずだ。しかし、こんな液体では流石に切断できないだろうし…‥‥いったいどうやって」
「専門家の方に調査を頼んだほうが良いかもしれません。それに、まだ距離はありますがグリモワール学園もあったはずですし、そちらの方にも連絡を入れておきましょう」
衛兵たちは調査した内容などを報告書にまとめ、それぞれの機関へと連絡を取り、その正体を探るために動き出す。
何か嫌な予感がしつつも、事件の早期解決のために皆一生懸命に働くのであった‥‥‥
‥‥‥その噂はあっという間に広まり、ある者は安堵し、またある者は号泣して喜んだ。
学園長に目を付けられるという事は、その分彼女が他の生徒たちへの興味を減らしてルースの方へ向けるという事である。
つまり、入学式初日から無茶苦茶をやらかすような人が、他の人達に同様の、もしくはそれ以上の事をさせられる可能性が減るという事で、誰もが心の底から喜んだのだ。
生贄が捧げられ、それによって不幸が来なくなったかのように、ルースという生贄がバルション学園長に捧げられて、生徒たちにも、ついでに教職員の方にも学園長の無茶苦茶さを味合わされる機会が減るという事なので、喜ばないわけがない。
いや、それでも一人だけは猛烈に反対していた。
「バルション学園長!!ルース君から離れてください!!彼はあたしの未来の婿の予定ですよ!!」
「あらあらー?確か貴方たちは婚約していなーいはずですよね?なんでわざわざやってくーるんでしょうか?」
「ルース君に怪しい女がくっつきそうで、その予防に努めているだけです!!」
「んー、でも私は別にー彼を誘惑とかしないよーん。ただ、魔導書の指導を自ら手取り足取り教えてあげーるのよ」
「その最中にルース君が襲われそうで、それを防ぎたいのよ!!」
「‥‥‥その議論の前に、まずは俺を解放してくれませんかね?」
ぷらーんと魔法で空中に吊るされたルースは、下の方で言い争っているバルション学園長とエルゼにそう言ったのだが、全く気が付かれていなかった。
現在、放課後の時間帯で他の生徒たちは皆寮へ戻ったり、バイトをして小遣いを稼いだりしているのだが、先日のタキの召還の一件から、バルション学園長に目を付けられたルースは特別補習授業として魔導書の指導を受けさせられているのだ。
・・・・今日はクラスの友人たちとトランプなどで遊ぶつもりだったのだが、授業終了と同時に学園長が教室前に出てきて、半ば引きずられる形でこうやって指導受けさせられている。
抵抗を試みたが、その前に腹に良い一撃をくらいまして、気絶して目を覚めたらこうやって宙に吊るされていたんだよ。一応女性でそこそこ細腕な学園長なのに、受けたことはないけどプロボクサー級の一撃であった。
最後に見えたクラスメイト達の哀れじみた目は辛かった…‥‥同情をするなら、誰かに本気で身代わりになって欲しい。そう思ったが、全員物凄い首を振る光景しか思い浮かばなかった。
そうルースが考えていると、何とかエルゼたちの話はまとまったようだ。
「じゃあ、今かーら空中に吊るされーている彼にめがーけて、あな-たの愛の魔法を撃ってあ-げてね?本当に彼を愛せるのなーらば、全弾命中なはーずだよーん」
「よし!!全弾命中させるわよ!!」
「なんか思いっきりまるめ込まれていないか!?」
バルション学園長の話術恐るべし。
何処をどうしたらそのように話を捻じ曲げ、そしてエルゼに俺を攻撃させるように仕向けられるのだろうか。そしてなぜエルゼに攻撃させるのだろうか。
「あ、ルース君はー魔導書で何とかその状態で回避をーしてみーてね」
‥‥‥事実上の死刑宣告である。手足は動くとはいえ、自由が利かない宙づり状態であるのだ。
見事に学園長に乗せられたエルゼのあの様子だと、手加減せずに全力で魔法をぶつけまくる可能性が高い。
エルゼの水色の魔導書は主に水や氷に関する力を与える。
となれば、ただの水流とかならまだしも、氷の玉とか水の槍とかだとシャレにはならないだろう。
少なくとも、水の刃の形成とかもできていたので…‥‥あ、これ死んだ?
「『魔導書顕現』!!」
宙にどうやって吊るされているのかは今一つわからないが、とにもかくにも魔導書は使用できるので、何とか対処をするしかない。流石にまだ命を散らしたくない。
「『アイスボール』連射!!」
そうこうしているうちに、早くもエルゼが魔法を発動させた。
空中に多くのガッチガチに固められた氷の塊が出来上がり、ルースの方へ一斉にとびかかってくる。
あまりの容赦のなさにルースは顔を引きつらせる。
だが、氷の玉であるならばまだ対処はいけるはず!!
「『ファイヤトルネード』!!」
火と風の複合魔法で、いわゆる火災旋風…‥‥いや、それとはまったくの別物かもしれないが、強力な熱波が出現し、一気に氷の塊を飲み込んでは溶かし、蒸発させていく。
ルースの場合、複合した魔法を扱えるので組み合わせ次第ではまだまだ対応可能である。
水や氷をエルゼは扱えるが、それ以上の数をルースは扱えるので、なんとなかなりそうであった。
「全弾蒸発・・・・・まだまだあたしの愛が足りないというの!?燃え上がるルース君の心の方が強いの!?」
「いやそれ以前にそもそも何で攻撃を仕掛けるんだよエルゼ!!」
「だったらこの魔法で確実に仕留めるまでよ!!」
「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇえ!!」
ルースのツッコミの叫びもむなしく、エルゼは全く話を聞かず、次の魔法の準備を始めた。
この日、あと10発ほどの魔法を出されなんとかルースは対応しききった。
憔悴し、地面に降ろされた後、ルースは倒れ込む。
「ふぅ‥‥‥まだまだあたしの愛は足りないのかしら‥‥‥もっともっとルース君を引き付けるだけの力を持たないといけないわね」
「だったーらエルゼさん、ルース君の特訓につきあーうだけで、貴女も一緒に愛を育めるはーずなのよ。どーかしら?」
「ええ、ご指導お願いいたしますバルション学園長!!」
学園長の誘導に乗せられ、エルゼも一緒にやることが決定したようである。
‥‥‥類は友を呼ぶ。
訓練の鬼に、ストーカーの鬼が呼び寄せられ、その言葉の意味を身をもって理解したルース。
魔導書の鍛錬において、心を無に出来るような方法がないかと密かに探り始めるのであった。
流石にこのような訓練が続けば心が持たないような気がしたからである‥‥‥いや、先に体の方が持たないかも。
‥‥‥ちょうどその頃、ルースたちがいるグリモワール学園から離れた場所である事件が起きていた。
学園から離れた位置にあるとある村。
そこで、つい最近盗賊の襲撃があったのである。
しかも‥‥‥
「‥‥‥こりゃ酷いな」
「流石にこの惨状は、努めて始めてみますね」
襲撃の情報から調べに来た、事件を調査する衛兵たち。
遺体などが残されていたが、どれもこれも言い表すのが怖ろしくなるような惨状ばかりである。
「あまりにも綺麗な切断面だが‥‥‥なんだこのヌルヌルは?」
遺体に付着しているぬるぬるした謎の液体を見て、衛兵たちは疑問に思う。
「水魔法によるものでしょうか?」
「いや、こういったヌルヌルした液体の類は闇の魔法‥‥‥黒い魔導書を所持する者が使える魔法なはずだ。しかし、こんな液体では流石に切断できないだろうし…‥‥いったいどうやって」
「専門家の方に調査を頼んだほうが良いかもしれません。それに、まだ距離はありますがグリモワール学園もあったはずですし、そちらの方にも連絡を入れておきましょう」
衛兵たちは調査した内容などを報告書にまとめ、それぞれの機関へと連絡を取り、その正体を探るために動き出す。
何か嫌な予感がしつつも、事件の早期解決のために皆一生懸命に働くのであった‥‥‥
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