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学園1年目
14話
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‥‥‥結局、タキの召喚後にルースはバルション学園長に言われて学園長室に入れさせられた。
そのせいで召喚魔法の授業は急きょ自由授業として一旦なかったことにされ、補習授業を避けるために必死になっていた生徒たちは安堵の息を吐いていた。
「よっしゃ助かったぁぁぁあ!!」
「これで補習授業の可能性が無くなった!!」
「黄金の魔導書を持っているやつが何やらとんでもないやつを召喚したおかげだ!!」
「なんにせよ、俺達は助かったぞぉぉぉぉ!!」
「今のうちに召喚魔法もさっさとやって、次回からはすぐにでも学園長に見せられるようにしておこう!!この猶予をくれたあいつには感謝だ!!」
‥‥‥物凄い喜ばれていたが、複雑な心境である。
そうルースは思いつつ、学園長室のソファーに座らされて待たされていた。
どうやらタキが過去に起こしたことをバルション学園長は説明してくれるようで、詳しい資料を自宅から探して持ってくるようで、ここでの待機命令を出されたままである。
というか、学園長の家ってどこにあるのだろうか。できれば早めに帰ってきて欲しい。
ついでに、タキは召喚早々返すのも何なので、どうにかできないかと交渉した結果‥‥‥
‥‥‥モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ
【なぁ召喚主殿、ここはこう、我に抱き付いて不安を紛らわせるはずであろう?何で我が尻尾だけをモフモフしまくっているのじゃ‥‥‥】
「いや、尻尾だけなら多分大丈夫かなと。他の女の匂いを付けたら絶対エルゼがお前を特定して、市中引きずり回しの上に打ち首にしそうだもん」
【‥‥‥うん、我は絶対あの小娘の前ではこの姿にならないと心に誓うのじゃ。一度、初召喚時に会ったが、あの嫉妬が何重倍になりそうだと考えるのであればのぅ・・・・】
ルースの説明に、タキは顔を青ざめながらも納得したようである。
国を滅ぼしたことがあるらしいモンスターでさえも、エルゼの嫉妬は恐ろしいらしい。
恐ろしきは人間の欲望や感情‥‥‥いや、エルゼの嫉妬だろう。
そうルースは学びつつ、ひたすらタキのモフモフな9本の尻尾を触って不安を紛らわせていた。
「にしても、室内に入れるほどになれないかと聞いたのは良いけど、せめて子狐サイズとかになれなかったのか?」
【その姿でも召喚主殿は思いっきりモフモフするつもりじゃったろう?】
「うん」
即答である。
モフモフに大小は関係なしと、ルースは思っているので、どのような姿でもモフモフできるのであれば特に文句はなかった。
【召喚主殿は一応年相応の男子のようじゃったし、サービス的なつもりじゃったが‥‥‥なんじゃろう、女としての自信を無くすのじゃ】
ショボーンと、尻尾だけを求められてタキはその狐耳をへにゃりと倒れさせる。
がっくりと手をつき、その豊満な胸をさりげなく揺らしたが、ルースがモフモフな尻尾にしか興味を持っていないのを見て、さらに落ち込んだ。
‥‥‥そう、現在タキは驚くべきことに、あの大きな九尾の狐の姿から、見事な人間の女性のような姿に変化したのだ。
ただし、耳と尻尾だけは残っており、完全に人間という見た目ではない。
和服のような着物を纏い、古い言い方かもしれないが目に見て分かるようなボンキュッボンの妖艶的な身体つきで、金髪に近い黄色の髪の毛に金色の瞳で美人と言っていい造形の顔になり、額に何やら宝石のようなものが付いた姿になっても‥‥‥モフモフ部分にしかルースは目がいっていなかった。
おそらく深層心理的にエルゼを恐れてが故の行為となったのだろうが、それでもある程度は自身に自信があったタキにとっては、かなりのショックだったのだろう。
と、モフモフをルースが存分に味わい、タキがこうなったらどうやってもこの姿で振り向かせてくれようと考え始めたときに、学園長室の扉が開かれた。
「ふぅ、待たせたわーね。ようやーく見つけたわよ」
資料を探している内にバルション学園長は落ち着きを取り戻したのかいつもの口調に戻っており、その手には分厚い巻物が握られていた。
「学園長、それがこのタキが過去にやらかしたという‥‥‥」
「ええ、その記録がここーに記されていーるのよ」
【あの当時の事をのぅ、よく残したのがいたもんじゃ】
巻物を見て、しみじみとタキが感想を述べた。
考えてみれば、確かに国一つ滅びたようなことがあれば、その記録を残すのは難しそうである。
それなのに、なぜ残せたのだろうか?
「その謎に関してだーけど、それじゃー説明していくわね。‥‥‥にしても、これやっぱり少々読みにくーいわね。後世に残すのなら、もう少しだーけ、綺麗な字で書-いてほしいわ」
「確かに何かがのたうち回ったような汚い字ですね‥‥‥」
【挿絵付きじゃが‥‥‥絵はうまいのに、字が下手過ぎて確かに読みにくいのぅ】
学園長のそのつぶやきに同意しつつ、タキの過去にまつわる記録をルースは学び始めた。
――――――
‥‥‥今は昔、このグレイモ王国がまだ建国されていなかった頃のことである。
とあるはるか東方の国にて、一匹のモンスターが生まれた。
最初は小さなモンスターで、害を及ぼすこともなく、その国にあったとある遊女と呼ばれる職業の女性に、ペットとして買われていたそうだ。
モンスターは害をなすものなら討伐されるが、無力そうなその遊女のペットは害をなすようには見えず、皆に可愛がられていたようである。
とはいえ、それでも立派なモンスター。
人間の寿命の限界を超えて生き続け、代々その遊女の子孫に飼育され続け、いつしか人の姿にもなれるようになっていて、仕事を手伝うようになったらしい。
ただし、生娘であり続けたようで、せいぜい酒の酌をとったり、綺麗な舞を踊る程度だったそうな。
魔族のくくりに入りそうなものだったが、モンスターであるがゆえに魔族とは異なり、人の姿に近しい存在とはいえ、どこか中途半端であった。
それでも美しい容姿や、人の姿ではない本来の容姿でも可愛がられ、愛され、幸せな生活を送っていたのである。
しかし、その暮らしはある時、終わりを告げた。
その国で、ある時トップが変わったのだが、それ以降国が荒れ始めたのである。
原因は、新しいトップとなった者の無能さや屑さにあったと言われ、次第に周囲に陰りが見え始めた。
そしてそんなある日、突然そのモンスターが暮らしていた、遊女たちとの家が襲撃にあったのである。
仕掛けてきたのは、その地を納めていた者であり、その理由としては‥‥‥
「ただ、面白そうだと思った」
「付き合いたかったのにフラれた」
「体を求めたのに断られた」
「ムカついた」
などの、そんな理由だけでその家を襲撃したのだ。
その襲撃をかけてきたものは金でならず者たちを雇い、そして次々と陵辱の限りを尽くしていった。
その様子を見て、そのモンスターは必死になって抵抗したのだが押さえつけられ、あわや純潔を散らされそうになり、酷い恨みを抱いた。
‥‥‥それがきっかけだったのであろう。
モンスターというものは、どうも感情に影響されやすいらしいという事が分かっている。
その強い恨みを抱いたのが原因か、突如としてそのモンスターは変貌した。
庇護欲をそそるような小さな体は大きくなり、その尻尾の数は増えて9本となった。
牙や爪が鋭くなり、さらには燃え盛る大きな炎の塊を操り始め、その姿はまさに化け物。
その姿に恐れをなした者たちは逃げようとしたが、時すでに遅し。
後悔する前に、薙ぎ払われ、引き裂かれ、叩き潰され、燃やし尽くされた。
‥‥‥その被害は噂として国内中に広まった。
その惨状は悲惨なものだったのだが、当時のその国のトップは無能で屑。
この力を得れば、自分の国はさらに強大となり、盤石を誇ると考えたようである。
そして、そこでさらにやらかして怒りを買い‥‥‥国は亡びた。
それ以来、九尾の巨大なモンスターは国を滅ぼしたものとして記録され、地域によっては信仰対象ともなり、その怒りを買わないようにしているらしい。
国を滅ぼしたモンスターは当然、その力を危険視された。
しかし、国が滅びた以降は行方は誰も知らない。
妖艶な容姿の人の姿と、巨大な九尾の姿を併せ持ったモンスター。
人は言う。
もしかしたら、すでに人に対する怒りは静まっているのかもしれない。
そして、静かに滅びた国の生き残りを観察し、再び過ちが起きぬように見張っているのだと‥‥‥。
――――
「‥‥‥『そして、この書物は後世にその悲しみを記録するために、かつてその遊女たちの客であったわたしはそのモンスターに話を直接聞き、詳細をここに残す』か。かつての遊女の客が、過去のタキに話を聞いて残したのか」
「よーくわかりやすい特徴故に、細かーい記録が残りやすかったようなのよねー」
【あやつかな?今はもう亡くなったが‥‥‥そんなこともあったのぅ。まぁ、我は人よりも寛容的故にもうそんな怒りも抱いておらぬのじゃよ。だいぶ忘却しておるしな。ただ、優しくしてもらった遊女たちには、毎日を恨むよりも面白おかしく過ごすのが良いと教えられておったのは覚えておるし、過去は過去と割り切っておるのじゃよ】
思った以上に、タキの過去はなかなかヘビーであった。
だがしかし、当の本人にとってはもはや過去。
恨みや怒りはもはや抱いておらず、切り替えて過ごしているようなのである。
ある意味、ここまで明るくなれるのは何処かうらやましいポジティブさであった。
【我のようなモンスターは長い時を生きる。それなのにずっと恨んで過ごすのは間違っておるじゃろう?人間でさえ、モンスターから見れば短い寿命なのに一生懸命すごしておる。毎日を幸せに過ごしたいという想いゆえに生きているのじゃ。まぁ、最初の方は確かに人間を滅ぼしつくそうなども考えたこともあるのじゃが‥‥‥そう悪い者ばかりではないと、あの日々に教わっておるからのぅ】
そうタキはいい、どこか懐かしむような目になった。
彼女の過去に悲惨な事があったとはいえ、もうその恨みも晴らしているようなものだし、あとは面白おかしく生きたいようだ。
国を滅ぼしたことのあるモンスターとはいえ、それはもう過去。
今はタキと言う名を元に、ルースに召喚されるモンスターとして生きていくのも悪くはないと思っているようであった。
「にしても、ルース君だっけ?やーっぱりこういうやばーい奴を召喚できているのって、なーんかおもしろそうだーよね」
‥‥‥うん、良い話でこのまま場をごまかして逃げたかったが、どうやらバルション学園長にロックオンされたようである。
「よし!!せっかくだーし、補習授業入り決定させよーか!!面倒ごとを起こしても、私が近くにいーれば何とーかできるからね!!」
死刑宣告にも等しいバルション学園長の言葉に、ルースはがっくりと膝をついたのであった。
そして、そんなルースの気持ちを察したのか、タキはそっとルースの肩に手を置いて慰めるのであった‥‥‥
そのせいで召喚魔法の授業は急きょ自由授業として一旦なかったことにされ、補習授業を避けるために必死になっていた生徒たちは安堵の息を吐いていた。
「よっしゃ助かったぁぁぁあ!!」
「これで補習授業の可能性が無くなった!!」
「黄金の魔導書を持っているやつが何やらとんでもないやつを召喚したおかげだ!!」
「なんにせよ、俺達は助かったぞぉぉぉぉ!!」
「今のうちに召喚魔法もさっさとやって、次回からはすぐにでも学園長に見せられるようにしておこう!!この猶予をくれたあいつには感謝だ!!」
‥‥‥物凄い喜ばれていたが、複雑な心境である。
そうルースは思いつつ、学園長室のソファーに座らされて待たされていた。
どうやらタキが過去に起こしたことをバルション学園長は説明してくれるようで、詳しい資料を自宅から探して持ってくるようで、ここでの待機命令を出されたままである。
というか、学園長の家ってどこにあるのだろうか。できれば早めに帰ってきて欲しい。
ついでに、タキは召喚早々返すのも何なので、どうにかできないかと交渉した結果‥‥‥
‥‥‥モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ
【なぁ召喚主殿、ここはこう、我に抱き付いて不安を紛らわせるはずであろう?何で我が尻尾だけをモフモフしまくっているのじゃ‥‥‥】
「いや、尻尾だけなら多分大丈夫かなと。他の女の匂いを付けたら絶対エルゼがお前を特定して、市中引きずり回しの上に打ち首にしそうだもん」
【‥‥‥うん、我は絶対あの小娘の前ではこの姿にならないと心に誓うのじゃ。一度、初召喚時に会ったが、あの嫉妬が何重倍になりそうだと考えるのであればのぅ・・・・】
ルースの説明に、タキは顔を青ざめながらも納得したようである。
国を滅ぼしたことがあるらしいモンスターでさえも、エルゼの嫉妬は恐ろしいらしい。
恐ろしきは人間の欲望や感情‥‥‥いや、エルゼの嫉妬だろう。
そうルースは学びつつ、ひたすらタキのモフモフな9本の尻尾を触って不安を紛らわせていた。
「にしても、室内に入れるほどになれないかと聞いたのは良いけど、せめて子狐サイズとかになれなかったのか?」
【その姿でも召喚主殿は思いっきりモフモフするつもりじゃったろう?】
「うん」
即答である。
モフモフに大小は関係なしと、ルースは思っているので、どのような姿でもモフモフできるのであれば特に文句はなかった。
【召喚主殿は一応年相応の男子のようじゃったし、サービス的なつもりじゃったが‥‥‥なんじゃろう、女としての自信を無くすのじゃ】
ショボーンと、尻尾だけを求められてタキはその狐耳をへにゃりと倒れさせる。
がっくりと手をつき、その豊満な胸をさりげなく揺らしたが、ルースがモフモフな尻尾にしか興味を持っていないのを見て、さらに落ち込んだ。
‥‥‥そう、現在タキは驚くべきことに、あの大きな九尾の狐の姿から、見事な人間の女性のような姿に変化したのだ。
ただし、耳と尻尾だけは残っており、完全に人間という見た目ではない。
和服のような着物を纏い、古い言い方かもしれないが目に見て分かるようなボンキュッボンの妖艶的な身体つきで、金髪に近い黄色の髪の毛に金色の瞳で美人と言っていい造形の顔になり、額に何やら宝石のようなものが付いた姿になっても‥‥‥モフモフ部分にしかルースは目がいっていなかった。
おそらく深層心理的にエルゼを恐れてが故の行為となったのだろうが、それでもある程度は自身に自信があったタキにとっては、かなりのショックだったのだろう。
と、モフモフをルースが存分に味わい、タキがこうなったらどうやってもこの姿で振り向かせてくれようと考え始めたときに、学園長室の扉が開かれた。
「ふぅ、待たせたわーね。ようやーく見つけたわよ」
資料を探している内にバルション学園長は落ち着きを取り戻したのかいつもの口調に戻っており、その手には分厚い巻物が握られていた。
「学園長、それがこのタキが過去にやらかしたという‥‥‥」
「ええ、その記録がここーに記されていーるのよ」
【あの当時の事をのぅ、よく残したのがいたもんじゃ】
巻物を見て、しみじみとタキが感想を述べた。
考えてみれば、確かに国一つ滅びたようなことがあれば、その記録を残すのは難しそうである。
それなのに、なぜ残せたのだろうか?
「その謎に関してだーけど、それじゃー説明していくわね。‥‥‥にしても、これやっぱり少々読みにくーいわね。後世に残すのなら、もう少しだーけ、綺麗な字で書-いてほしいわ」
「確かに何かがのたうち回ったような汚い字ですね‥‥‥」
【挿絵付きじゃが‥‥‥絵はうまいのに、字が下手過ぎて確かに読みにくいのぅ】
学園長のそのつぶやきに同意しつつ、タキの過去にまつわる記録をルースは学び始めた。
――――――
‥‥‥今は昔、このグレイモ王国がまだ建国されていなかった頃のことである。
とあるはるか東方の国にて、一匹のモンスターが生まれた。
最初は小さなモンスターで、害を及ぼすこともなく、その国にあったとある遊女と呼ばれる職業の女性に、ペットとして買われていたそうだ。
モンスターは害をなすものなら討伐されるが、無力そうなその遊女のペットは害をなすようには見えず、皆に可愛がられていたようである。
とはいえ、それでも立派なモンスター。
人間の寿命の限界を超えて生き続け、代々その遊女の子孫に飼育され続け、いつしか人の姿にもなれるようになっていて、仕事を手伝うようになったらしい。
ただし、生娘であり続けたようで、せいぜい酒の酌をとったり、綺麗な舞を踊る程度だったそうな。
魔族のくくりに入りそうなものだったが、モンスターであるがゆえに魔族とは異なり、人の姿に近しい存在とはいえ、どこか中途半端であった。
それでも美しい容姿や、人の姿ではない本来の容姿でも可愛がられ、愛され、幸せな生活を送っていたのである。
しかし、その暮らしはある時、終わりを告げた。
その国で、ある時トップが変わったのだが、それ以降国が荒れ始めたのである。
原因は、新しいトップとなった者の無能さや屑さにあったと言われ、次第に周囲に陰りが見え始めた。
そしてそんなある日、突然そのモンスターが暮らしていた、遊女たちとの家が襲撃にあったのである。
仕掛けてきたのは、その地を納めていた者であり、その理由としては‥‥‥
「ただ、面白そうだと思った」
「付き合いたかったのにフラれた」
「体を求めたのに断られた」
「ムカついた」
などの、そんな理由だけでその家を襲撃したのだ。
その襲撃をかけてきたものは金でならず者たちを雇い、そして次々と陵辱の限りを尽くしていった。
その様子を見て、そのモンスターは必死になって抵抗したのだが押さえつけられ、あわや純潔を散らされそうになり、酷い恨みを抱いた。
‥‥‥それがきっかけだったのであろう。
モンスターというものは、どうも感情に影響されやすいらしいという事が分かっている。
その強い恨みを抱いたのが原因か、突如としてそのモンスターは変貌した。
庇護欲をそそるような小さな体は大きくなり、その尻尾の数は増えて9本となった。
牙や爪が鋭くなり、さらには燃え盛る大きな炎の塊を操り始め、その姿はまさに化け物。
その姿に恐れをなした者たちは逃げようとしたが、時すでに遅し。
後悔する前に、薙ぎ払われ、引き裂かれ、叩き潰され、燃やし尽くされた。
‥‥‥その被害は噂として国内中に広まった。
その惨状は悲惨なものだったのだが、当時のその国のトップは無能で屑。
この力を得れば、自分の国はさらに強大となり、盤石を誇ると考えたようである。
そして、そこでさらにやらかして怒りを買い‥‥‥国は亡びた。
それ以来、九尾の巨大なモンスターは国を滅ぼしたものとして記録され、地域によっては信仰対象ともなり、その怒りを買わないようにしているらしい。
国を滅ぼしたモンスターは当然、その力を危険視された。
しかし、国が滅びた以降は行方は誰も知らない。
妖艶な容姿の人の姿と、巨大な九尾の姿を併せ持ったモンスター。
人は言う。
もしかしたら、すでに人に対する怒りは静まっているのかもしれない。
そして、静かに滅びた国の生き残りを観察し、再び過ちが起きぬように見張っているのだと‥‥‥。
――――
「‥‥‥『そして、この書物は後世にその悲しみを記録するために、かつてその遊女たちの客であったわたしはそのモンスターに話を直接聞き、詳細をここに残す』か。かつての遊女の客が、過去のタキに話を聞いて残したのか」
「よーくわかりやすい特徴故に、細かーい記録が残りやすかったようなのよねー」
【あやつかな?今はもう亡くなったが‥‥‥そんなこともあったのぅ。まぁ、我は人よりも寛容的故にもうそんな怒りも抱いておらぬのじゃよ。だいぶ忘却しておるしな。ただ、優しくしてもらった遊女たちには、毎日を恨むよりも面白おかしく過ごすのが良いと教えられておったのは覚えておるし、過去は過去と割り切っておるのじゃよ】
思った以上に、タキの過去はなかなかヘビーであった。
だがしかし、当の本人にとってはもはや過去。
恨みや怒りはもはや抱いておらず、切り替えて過ごしているようなのである。
ある意味、ここまで明るくなれるのは何処かうらやましいポジティブさであった。
【我のようなモンスターは長い時を生きる。それなのにずっと恨んで過ごすのは間違っておるじゃろう?人間でさえ、モンスターから見れば短い寿命なのに一生懸命すごしておる。毎日を幸せに過ごしたいという想いゆえに生きているのじゃ。まぁ、最初の方は確かに人間を滅ぼしつくそうなども考えたこともあるのじゃが‥‥‥そう悪い者ばかりではないと、あの日々に教わっておるからのぅ】
そうタキはいい、どこか懐かしむような目になった。
彼女の過去に悲惨な事があったとはいえ、もうその恨みも晴らしているようなものだし、あとは面白おかしく生きたいようだ。
国を滅ぼしたことのあるモンスターとはいえ、それはもう過去。
今はタキと言う名を元に、ルースに召喚されるモンスターとして生きていくのも悪くはないと思っているようであった。
「にしても、ルース君だっけ?やーっぱりこういうやばーい奴を召喚できているのって、なーんかおもしろそうだーよね」
‥‥‥うん、良い話でこのまま場をごまかして逃げたかったが、どうやらバルション学園長にロックオンされたようである。
「よし!!せっかくだーし、補習授業入り決定させよーか!!面倒ごとを起こしても、私が近くにいーれば何とーかできるからね!!」
死刑宣告にも等しいバルション学園長の言葉に、ルースはがっくりと膝をついたのであった。
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