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秋の訪れで章

156話

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「‥‥‥‥何これ?」

……今、ルースはそうつぶやくしかできなかった。

 なぜならば、エルゼ達が持っている物体にはどうしても「アレ」が使用されているようにしか見えなかったのである。

「できたてほやほや、もこもこもフワフワの今の季節には欲しくなる毛皮のコートよ」
「うむ、現地調達してできたが、中々の傑作だと思うぞ」
【我の毛は流石に無理であったが、これでも文句はないはずじゃよな】
――――暖カイハズダヨー。

 皆がにこやかに説明してくれるが…‥‥どう見ても、そのコートの材料とやらがものすごく不安になる者二しか見えない。


「えっと…‥‥その原材料って、今タキの後ろにある袋の中身かな?」
【そうじゃよ。息絶えておらぬとはいえ、見せられるようなものでもなくなったからのぅ】

 ルースが恐る恐る指さすのは、タキの背後に袋詰めされた物体。

 尋ねたことに対して返されたその言葉に、ルースは確信を持った。


「ヴィーラの毛皮……剃ったの?」
「「【うん】」」
―――――エルゼノ水ノ刃、レリアノ炎ノ刃デ切リ取ッテ、タキト私デ作ッタノ!

 いい笑顔をしてはっきりと答えたが、これはむごい。

 と言うか、短時間で作り上げた技術にも驚くけど、その袋の周辺に血の池が出来ているのはどうなのだろうか…‥‥まぁ、息絶えていないだろうけど、因幡の白兎状態だろうな‥‥‥。


「なぁ、友よ…‥‥女って怖いな」
「‥‥ああ」

 ぐったりとしながらもつぶやくスアーンの言葉に、ルースは同意したのであった。









 とにもかくにも、約一名(頭?)の犠牲が出たものの、今回の件はこれで解決だと思いたい。

 念のために、フェイカー製らしいグッグゴゴーチの件についても話し、とりあえず今後の判断を仰ぐため身も、まずは学園長の元へいたほうが良いんじゃないかと言う意見で一致した。


「さてと、じゃぁここから出ないといけないんだけど‥‥‥‥」

 見渡す限り、辺りは土壁。

 ここは地下であり、脱出するには掘られた通路を通るか、もしくはタキたちが掘ってきた穴を通るかしなければいけないのである。


……だが、それは先ほどまでの話。

「見事に全部落盤しているな」
「完全にうまってますものね」


 全部の穴が、今、ふさがれていた。

 いや、元からやや脆かったのだろうけれども…‥‥タキたちによるヴィーラへの折檻の影響か、全部崩れ落ちてしまったのだ。

 その為、現在、密室に閉じ込められた状態なのであった。


「と言うか、掘っていけばいいんだろうけれども‥‥‥スアーン、出来るか?」

 この中では茶色の魔導書グリモワールの持ち主であり、土魔法のエキスパートとでもいうべきスアーンに尋ねてみたが‥‥‥

「すまん、無理……」

 まだ体力が回復していないのか、それともエルゼ達から発せられた怒気を浴びてしまった影響か、ぐったりと彼はそう答えた。


 となれば、ヴィーラに地上まで掘ってもらうという手段も取ってもらうことができたのだが、ただ今彼女は袋詰め状態。

 ピクリとも動かなくなったし、生きているのか不安になるが、そんな状態では頼めるわけもない。


「となると、俺が魔法で掘っていくしかないのかよ‥‥」

 複合魔法で土も扱えるため、現状地上までの脱出経路を掘れるとしたらルースだけであった。


「んーっと、上まで掘るのだから土を基本にして、土砂とかを水で排斥しつつ、崩れにくいように火でガンガン過熱して固めて、あとは木で植物とかを出して固めていけばいいか?」

 土、水、火、木の4属性複合魔法。

 この人数で地上まで行くには、これらを組み合わせないと途中で落盤が起きたりしてまずそうだから、しっかりと複合させなければいけないが…‥‥

「途中でちゃんと地上へ向かっているか心配になるし、光で直進した道も作って道標にするようにすべきか‥‥‥?」

 この場合5属性の複合となるが…‥‥うまいこといくだろうか?

 いや、やらざるを得ないだろう。まともに進めないと困るし、自身の力もどれだけあるのかしっかりと把握しなければいけないのだ。



 そういうわけで、戦闘にルースが立ちつつ、その後ろを万が一に備えてエルゼとレリア、サイズ的に負担を減らすために人型になったタキを加え、あとは引きずる形でスアーンとヴィーラを後方へ配置。

「それじゃ、魔法を使うぞ」


 土壁の前にたち、これから複合させる魔法を確認しつつ、発動させる。

「5属性複合魔法‥‥‥『マッドリルライト』!!」

 


 魔法の発動と同時に、目の前の土壁が掘られて道が出来始める。

 そのまままっすぐ進んでみると、通路がきちんと出来上がり、歩きやすい形状となっていた。



「よし、これで地上に帰れるな」

 この魔法でならば、地上まで安心して進め…‥‥

「あ」
「どうしたの、ルース君?」
「最初からこれを使えばよかったじゃん…‥‥」



 ここから脱出する際に、ヴィーラが作った通路を彼女に見つからないようにして移動していた。

 だが、この魔法であればわざわざそんな危ない橋を渡らずとも、そっと逃げ出せたであろう。

 そのうえで、後々きちんと彼女と話し合って、精霊薬とやらを見つけることに協力していればよかったのではなかろうか?

 グッグゴゴーチとかは……まぁ、あれはあれでどうにかなっていたし、そのあたりは考えなくても良かったのかもしれない。


 とにもかくにも、そうしておけばこんな回りくどい事をしなくとも、さっさとかいけつぃていたのだと気が付き、ルースは肩を落とすのであった。

……あと、犠牲者がでなかったかもしれないしね。いや、どちらにせよこうなる未来はあったかもしれないが。

 そう思いつつ、ヴィーラが詰められた袋を見て、これ以上考えるのを止めたのであった。
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