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秋の訪れで章

157話

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――――――収穫祭で、ルースがヴィーラによって攫われた事件が解決してから数日が経過した。


 あの事件によって、出来たあの地下空洞は今、改装工事が行われることになった。

 距離的には案外近い位置にあり、うまいこと行けば地下迷宮とかにして、客寄せができるのではないかと、ここの領主・・が学園長からの報告を聞いて、決めたらしい。



「あれ?バルション学園長がこの都市メルドランを収めているんじゃあないんですか?」
「いーつかーら、誰がそー言ったかな?あくまーで私はこの学園の学園長という立場でー、私自身が領主とは一言も言っていなーいはずだよ?」

……言われてみれば、そうかもしれない。

 確かにバルション学園長はグリモワール学園の学園長と言う地位にいるのだが、この都市の領主とは言っていないのだ。

 いやまぁ、衛兵とかに命令できていたりするけど、それはあくまでそれなりの権限を持つだけであり、この都市の領主そのものではないそうだ。


 2年生の秋後半にして、なにやら驚愕の事実を知ってしまったような気がするルースたちであった。

 ちなみに、その領主とやらは学園長以下の権限しかないらしいが…‥‥何かやらかしたのだろうか?





 それはともかくとして、ヴィーラについてが問題であった。
 
 エルゼ達によって毛皮を削がれたヴィーラ。

 一命はとりとめているものの、完全にトラウマと化したのか、袋詰めにされた状態のまま引きこもっているらしい。

 仮にも国を滅ぼせるだけの力を持つモンスターだが‥‥‥タキの方が格上だったのか、はたまたはエルゼ達による折檻が上であったのか。



 何にせよ、まだまだ袋詰めの状態から出てこないのである。

「学園長室の隅っこにある大きな袋……そこに置かれたままですよね?」
「万が一のこートを考えると、わたーしが管理しておいたほうがいいかーらね」

 隅っこに置かれている袋を見てつぶやくルースの言葉に、バルション学園長は答える。


 ピクリとも動いていないが‥‥‥パンとか食べ物を置けばいつの間にか無くなっているので、食べて生きていることだけは確認できているのだ。


「‥‥気のせいか、袋が少々小さくなっているような気がするんだけど」

 あの巨大兎、人より大きめのサイズだったのだが‥‥‥なんか袋詰めされている今、明らかに小さくなってきているような気がするのだ。

 いや、毛皮の分と流出した血の分を抜いたらそのサイズになったのかもしれないが‥‥‥。



「まー、生きていれば別にいいーでしょう」

 そう学園長は言うが、不安しか感じないルースであった。




 まぁなんにせよ、ヴィーラの事は置いておくとして、別の話題が出てくる。

「ところで、あの精霊薬を彼女は飲んでいないのですか?」
「えーえ、そのようなーのね」

 学園長がごそごそと取り出したのは、あの時ヴィーラに渡した精霊薬。

 どうも何かこう、この世には強くなってもかなわないような存在がいると悟ったのか、彼女はもうその薬はいらなくなったらしい。


 で、その精霊薬をどうするべきかが問題なのだ。


「元あった場所に戻しても‥‥‥狙う輩がでますよね?」
「でーるわね。情報統制しーても、目ざといとーころは直ぐにかぎつけーるわ」


 元々精霊王とその関係者によって隠されていたらしい精霊薬。

 偶然見つけてしまい、戻そうと思ったが‥‥‥いかんせん、今の状況では露見する可能性がある。


 まぁ、そもそもの隠し場所が精霊王関係者以外では露見しにくいようなところにあったが…‥‥一度バレればもう同じ手は使えない。

 となれば、どう扱えばいいのかが問題なのである。


「別にいらないし、かと言って放置するのもまずいからな…‥‥」

 精霊王に事情説明出来ればいいけど‥‥‥どう連絡すればいいのだろうか?

「やっぱり母さん経由で話したほうが良いのかな?」
「そーすることを勧めるわーね」

 ルースの言葉に、バルション学園長は同意した。


 ルースの母親アバウトは精霊王の娘でもあった。

 今は色々あって娘としてではないらしいが、それでも精霊王との連絡手段はあるようで、ついこの間も助けてくれたことがあったばかりだ。

「というか、そもそも‥‥‥精霊王本人と顔合わせをしたことが無いからな。この機会にきちんと正面から向き合ってみるか」

 ルース以外の面子は何かとあって精霊王の姿を見てはいるが、その時に限ってルースは意識が無い状態だったので、結局その姿をよく見ていないのだ。

 自身の祖父に当たる人、もとい精霊をきちんと見ておきたいのだ。



 とりあえず、母アバウトに手紙を出して、そこからいろいろ考えておくかという結論に至ったのであった。

 


 
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