家から追い出されました!?

ハル

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サプライズ誕生日プレゼント

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 予想していたこととは別の事態で嵐の予感は見事に的中したのだが、画面越しには騒がれていても、現実的には全く問題なく今まで通りに過ごしていた。
 理由はこの家にいることをマスコミ関係者が突き止められないからだった。ジークもここでの顔を合わせたい人物とはだいたい会ったようで、ずっとこの家にいたし、私は元々家から出る用事はなかった。
 ここはリオウの祖父名義になっているから、彼らも突き止めにくいらしい。

 そして、驚くべきことに私の名前を以前ジークが予想した通り誰も分からなかったようだ。あの悪縁つながりの人達は分かっていたけれど、なぜか口を噤み、あの高級ホテルでの会話だったことも相して、そこで聞いていただろう人達は口が堅い人種だったのだろう。

 あの騒いでいた娘の方は黙っていなさそうだから不安だな

 そんなことを思っていたけれど、リオウがSNSでもそういう話題は発進されていないことを教えてくれた。

 現実と画面越しの自分の環境が変わってて驚いている日々を送っていた。
 日本滞在も残り3日となった。
 私はこういう状況なので避難という名目の元、ジークたちとともに日本を出て、ジークの実家があるスイスに移ることにした。向こうの家族も歓迎ムードだと電話をしたジークが言っていたのでひとまず安心した。

 英語なんてカタコトだし、フランス語なんかさっぱり話せないから不安だけど。

 パスポートの申請も直接専門機関に行かなくてもできるし、代理受け取りもできるらしくそちらで対応した。
 元々、私服が少ないので服類と私物(漫画)のみをここに来る間も持ち歩いていた肩掛け鞄の中に詰め込んだ。

「準備終わった?」

 一通り準備を終えて休憩でダイニングに行くと、ジークとリオウが隣り合って座っていた。
 ジークがこちらに気付いて声をかけてきた。

「はい。そんなに荷物が多くないですし、静江さんが用意してくれた私服数着増えたぐらいだったので、持っていた鞄に入りました。」
「へえ、あの鞄に入りきったんだ。私服もう少し増やした方がいいな。」
「いいえ、今でも十分足りていますから大丈夫です。」
「私も郁美さんは私服は持った方がいいと思います。あと、制服ではなくフォーマルな服も買いましょう。」

 いつもは止め役のリオウが今回はかなり煽っていた。

 なぜ?

 不思議に首を傾げてリオウを見ると、彼は咳払いをした。

「郁美さんがあの学生服を着ていると必要以上に気を遣うといいますか、なんか犯罪に手を染めている気がすると言いますか。」
「・・・・つまり、仕事を頼みにくいと?」
「そう言うことです。私の精神安定のためにも向こうについたら外商を呼んで購入しましょう。会社支給という形を取りますから問題ありません。」

 彼は楽しげで親指まで立てていた。
 こんなにテンションの高い彼は初めて見た。
 その横でジークはうんうんと大きく頷いていた。

 彼らに任せると大変なことになりそう。

 そんな彼らに不安を抱えてしまった。

 それから出発前日までは仕事をいつものようにこなした。
 その頃にはあれ以来姿を見せていないからか、報道はなくなり画面越しの世界でも穏やかになっていたのだが、
出発前日で仕事が休みの日に、荷物の最終確認をしてテレビを付けてみて、これまた驚いた。

「え!?嘘!?」

 思わず叫んでしまった。
 それは無意識であり、それほどに驚愕の真実だった。
 それに驚いたようにリビングに入って来たのはジークとリオウだった。

「どうしたの?」

 彼に声をかけられ、私はテレビの方を指さした。

 とある会社の外資系買収が報道されている最中だった。
 しかも、それは、以前ジークが商談をされていた企業で日本でも指折りの大手だった。
 いや、そこまでならこれほど驚くことはない。
 それが、元父親が勤めていた会社だったから驚いたのだ。

 それらをジークに言うと、彼は

「ああ、そうなんだ。」

 とだけ言った。
 そのあっけらかんとした彼の反応に怪しさ満点だったが、深く知ると怖くなるので問い詰めはしなかった。
 買収した外資系会社は香港に本社を構える会社でその分野では世界指折りの会社だろう。

 まあ、彼らがどうなろうと私の知ったことではないが、これまでの贅沢はできないのではないだろうか。
 買収されても同じ地位にいられれば別だけど、経営者が変わると方針も変わって業績を見て判断だろうから。

 何となく今後の動向が気になってそのニュースに集中してしまっていると、ジークが肩に手を置いた。

「あいつらが心配?」

 以前から、彼らを”あいつら”なんて表現しているあたり、彼の嫌悪が伝わってくるようだ。
 あの人達と対峙した時も彼は笑みを浮かべていても目が全く笑っていなかった。
 私は彼の言葉にすぐに首を横に振って否定した。

「そういうことは一切ありません。彼らとは縁を切りましたから。それより、今後のこの会社がどういう風に変わるのかが見てみたいだけです。」
「そっか。それなら、僕が教えてあげるよ。この香港系の会社は一族経営でそのトップの息子は僕の大学時代の同期なんだ。仲は、まあ、悪友みたいな感じだろうか。僕より4つ上だね。」
「ということは、誠さんとも知り合いなんですか?」
「そうだよ。あいつは特に仲良かったな。」
「へえ。」

 彼の新たな友人発言に感心した。
 彼のような変人でもやはり付き合える人はいるようで安心もしたが、誠とも仲が良いと聞いてさらに納得した。

 それって、誠さんがあなたに紹介してくれたのでは?
 そして、さらっと自供してますよね?
 黒に近いグレーゾーンですよ。私の中の疑惑が確認になりました。

 私は決して声には出さなかった。
 それほどに本当に彼らがどうなろうと私は知ったことではなかったから。
 彼らと連絡を取る手段もないから安心もしている。

「3時のお茶の時間にしませんか?」

 和やかな声が聞こえた。
 すると、立派なチョコレートケーキを持った静江がいた。

「どうしたんですか?そのケーキ。」

 作っている素振りはなかったので、おそらく貰い物だろうと思い、彼女に尋ねた。
 すでにテレビのニュースは眼中になく、ジークがすぐに消していた。
 リオウはすでに皿を出し始めていた。

「リオウ様のお父さまである、エイジ様が送ってくださいました。スイスで有名なお店のザッハトルテです。」
「そうなんだ。エイジが。どうして?」
「エイジ様は頼まれただけだと思いますので、本当はジーク様のお父さまであるファブリ様からかもしれません。」
「何かお祝い事でもありましたか?」

 私が尋ねると静江はニンマリと笑った。

「郁美さまのお誕生日ですので、お祝いのケーキですよ。メッセージカードも入っていました。」

 そう言われて私は初めてカレンダーを見て、ああ、と気付いた。
 確かに、日付を見ると私の誕生日だった。今日で17歳だ。
 静江に渡されたメッセージカードは手書きの日本語だった。

 達筆だ。

 外国生まれで外国育ちの人に負けた思いだった。

「何?そんなに変な内容だったの?お父さんは情緒が足りないな。」
「あなたはそんなこと言えないでしょう。というか、違いますよ。ファブリ様はただお祝いをしてくださっただけです。私はただ日本育ちなのに情けないと思っただけで。」
「え?どういうこと?」
「いえ、何でもありません。」

 私はそのカードを失くさないようにポケットに入れた。

「さあさあ、食べましょう。」

 静江と後で入って来た紘一も一緒に食べてくれるようだ。
 彼らとともに初めて食べるザッハトルテはとても甘かったが、それ以上に心に何かが満ちていく感覚を噛みしめるたびに覚えた。

「美味しいですね。」
「スイスに行けば毎日でも食べられるよ。」
「それはちょっと遠慮したいです。月1ならいけますけど。」

 なんて、冗談?をジークと言い合った。
 笑いが絶えない家庭を築くとよく聞くが、こういう光景が日常に溢れているんだろう。

 ザッハトルテを食べた後、私は自室に戻りベッドの上に座ってまた、メッセージカードを見た。

 ”17歳、お誕生日おめでとう。君がこちらに来てくれるのを家族皆楽しみにしている。
  本当の家族になれることを祈っている。  
  未来の娘へ   未来の義父より”

 その文字を指でなぞり、涙が出そうになった。
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