家から追い出されました!?

ハル

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私の顔・・・全国に晒されました

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 ジークは私は知らなかったが、いや、世界に名だたる企業の社長だとは知っていたが、それ以上にとんでもない有名人だったらしい。
 それを知ったのは、彼と出かけた高級ホテルでのビュッフェの後の公園ランチの日の翌日、仕事でなぜかその日だけ忙しくて昼食を遅めに摂ることにした。ジークたちはいつもの時間に摂っていたが、私はその時中途半端なところだったので、彼らの誘いを断った。
 半端なところで中断すると、少し時間を空けてから再開しようとすると全くどういった経緯で数値を入力したのか、私は思い出すまでに時間が掛かってしまうのだ。これは性格上なのか、頭の悪さなのか分からないが、私の場合、1つの資料はさっさと作成して休憩後に確認、その流れが合っていた。
 だから、14時に昼食を摂ることになった。静江は、お茶もかねて、とデザートも追加してくれた。しかも、手作りの抹茶プリンだった。
 いつも用意されているおやつはもらったお菓子が定番だが、静江はたまに時間があると、こうして手作りしてくれることがあった。それも、味も見た目も栄養も申し分ないのだ。添加物の入っているものはあまり使わず、サツマイモやかぼちゃ、フルーツを使って自然の甘味を最大限生かしている。体に良いおやつって実現するんだなとしみじみ感じた。
 そういう経緯でこの日はイレギュラーが多く起こった。そして、一番イレギュラーだったのは私が食後に調子に乗って食べ過ぎたことでリビングに行き、テレビを付けたことだった。
 そして、付けた瞬間、私の体の辛さはどこかに吹っ飛び驚愕にカエルが潰された時のような悲鳴を上げてしまった。それに驚いたダイニングで荒い物を済ませた静江が心配して駆け寄って来た。

「大丈夫!?どこかにぶつけたの?」

 彼女の心配をよそに私はテレビを指さした。
 エンタメなのか経済なのか分からないが、とりあえず、ニュース番組で流れている映像は、昨日出かけた時のホテルで歩いていた私とジークの様子だった。これが他人事であれば、

 お~カップルだな。
 お腹いっぱいです。

 とか思うだけだっただろう。
 しかし、残念ながらそこに映るのは、私、つまり当事者だった。

「あら、郁美さんとジーク様ではないですか!?まあまあ、美男美女でお似合いですね。あの服が似合って良かったわ。」
「いやいや、喜んでいる場合じゃないですよ!静江さん。っていうか、ここについているテロップなんですか??」

 横ではしゃいでいる静江には悪いけれど、私はそんな風に褒められていても嬉しくない。それよりもこのテロップがおかしい。

 ”世界のクラウド家御曹司にして経済界のプリンス、結婚のお相手はモデル!?”

 モデルって誰が?というか、クラウド家っていうのは、ジークの苗字なので、そこは飛ばすとしても、その前に着いている補語がおかしい。その上、確かにプリンスっていう容姿だけど、そんな大げさなの!?
 いや、起業してわずか数年でこの成功ぶりは普通ではないので、その異名は納得したくはないが納得する。
 でも、その他全部の表現が全て理解できない。

「ああ、もう流れているんだ。さすが、日本のマスコミはどこにでもいるな。いや、あのホテルの創業記念でのビュッフェだったから、そういう関係者がいても変ではないかな。」

 背後でそんな暢気な声がした。
 後ろにはジークが立っていて、私は驚きのあまりに飛び上がった。

「驚かさないでください!!」
「いや、普通に入って来ただけだよ。君の尋常でない叫びが聞こえたからね。」

 彼はこちらの困惑を見て面白がっているのか余裕の笑みを浮かべていた。

「でも、よく取れているね。君の美しさのあまりに全く違うのに、“モデル”って書いているし。まあ、パリコレとかに出ている人に見えるよね。郁美は姿勢も歩く姿も何の訓練も受けていないのにとてもきれいだから。その上、国外のモデルに負けないほどに身長もプロポーションも抜群だからね。」

 なんだか、めちゃくちゃ褒めちぎられいる気がした。
 なぜ、そこまで褒める必要があるんだろう。いや、今は、この現状をどうしようか考えようよ。
 私はまだ何か言い続ける彼の言葉を遮るように少し大きめの声を出した。

「ジークさん、今どういう状況か理解していますか?つまり、ですね。私とあなたが、その、特別な関係だと言われているんですよ!?会社経営者であるジークさんのイメージダウンにつながる可能性だってあるんですよ!」

 私は一息に言い切った。
 いつもより力みがあったので、肩で息をしてしまうはめになった。
 彼は驚いたように目を丸くさせた後、にっこりと笑った。

「郁美、あの公園を出る時、僕はマスコミに言う準備は整っていると言ったのを忘れてる?」
「マスコミには言いたいって言っていました。あなたのご家族の準備が整っていると言っていましたよ。」
「そこは引っ掛からないか。まあ、昨日のことだし、おしいな。」

 最後のは小声だった。おそらく本心なのだろう。
 昨日の今日で、しかも昨日一番の爆弾発言を忘れるわけがない。
 私が高校中退だとしても、そこは自信を持てる。

「それでイメージダウンだっけ。確かに数年前に女性とのことは取り上げられたことがあって、実際に親からの紹介で会った人がいたけど、それだけだよ。それなのに、独身で婚約者も恋人もいない僕がこの類の話題を取り上げられても痛くも痒くもないよ。むしろ、恋人に尽くす僕はイメージアップにつながるんじゃない?」
「・・・・確かに。」

 言われて見れば、彼の容姿的にそういう関係の人が他にいると思ってしまったけど、今暴露された内容を考えてみると彼の言うことに納得させられた。
 イメージダウンにつながるのは不倫や痴情のもつれ事件などの場合で、たかが、恋人がいたなどは彼の言う通りイメージアップにつながるかもしれない。
 そこで、はたっと我に返った。

 いやいや、何を私は彼の言葉に流されているんだ!!

 そう自分を叱責した。

「確かに、イメージアップにはつながるかもしれませんけど、相手が平凡以下でどこの誰の子かも分からない私生児はまずくないですか?家柄とか地位とか名誉とか、そんなもの的に。あなたがどうこうっていうより、あなたのバックグラウンドが。こんな映像が出たら拡散されてすぐにバレますよ。そして、今はやりのSNSが炎上っていうやつです。SNS使ったことがないので全く知りませんけど。でも、それも会社にダメージを与えるんじゃ。。。」
「それはどうかな。」

 必死な説得に、いや、そもそも何でこんなに必死に何をしてほしくて熱弁しているのか自分でも謎なのだが、彼は首を傾げた。

「郁美は制服姿しか外部に見せていないし、君と暮らしていたあいつらでさえ、肝のことが分からなかっただろう。それも名前を名乗るまで。それより希薄なつながりの学校関係者や通学で会うだろう人などもはや空気みたいなものだ。まあ、君のことを気にかけていたバイト先の人達は分からないけどね。」
「それは・・そうかも・し・れません。」

 段々と彼の言うことに正しさが増すばかりだった。
 こちらの言い分をことごとく論破していく。最後は体と一緒に声まで縮こまってしまった。
 経済界のプリンスとか寒い異名を付けられている人に口で勝てるわけがない。

「ほかにないなら、この件はこのまま続行ということで。全国版で報道されているみたいだから、しばらく外出しない方がいいかもしれないね。」
「・・なんかなれていませんか?」
「まあ、これでもそういうのは結構あったからね。」
「なるほど?」

 ちょっと最後疑問がついてしまったが、それ以上訊くのが怖くて深堀はしなかった。

「あの、これ事実無根なんですけど、それは否定するんですよね?」
「え?するわけないよ。昨日君も、僕と離れたく、と言ったからね。」

 彼は晴れやかな笑みで言ってのけた。

 「キャッ熱烈」なんて隣で顔を赤くして最近のJKのように盛り上がっている人は無視したい。
 昨日の自分を殴りたくなってしまったが、そう思っているのは本当だった。
 全国に自分の顔を見られているという緊急事態なのに、ここを離れるよりは、と思っている自分がいるのだ。

「私って一体何なんだろう?」
「哲学?まあ、君が僕にとって何かって訊かれたら、何にも代えがたい僕にとっての唯一って答えられるけどね。」
「よくそんな恥ずかしいセリフ言えますね。」

 ソファに疲れて頭を抱えて座ると隣に自然と座った彼は私の肩に手を回してきた。
 私はそれを受け入れて顔に熱が籠るのを感じ、彼から見えないように隠した。

 嬉しいって思うなんて。
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