家から追い出されました!?

ハル

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番外編

学校は家??

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 初めて大勢で過ごすクリスマスと年末年始という行事はとても楽しかった。
 クリスマスパーティはハプニング、元婚約者候補 vs 婚約者、があったけれど、あのことでジークの母が実家から何か苦情が来たということはなさそうだった。それどころか、向こうの方が平謝りの上、私をまた連れてきて、と言っていたらしい。普通はそんな騒動を起こせば主催者はいい迷惑なので怒って当然だと思っていたが、彼らはそうではないようだ。
 そして、年末年始はジークの家でゆっくりと過ごしつつ年が明けたら皆で抱きしめ合って新年のお祝いを言い合った。今まで他人とそんな風にスキンシップをしたことがなかったが、ここにきてまだ1か月ぐらいだというのに、すっかりカスタマイズされたように自然とできてしまった。ジークに日本にいた時から鳴らされていた気もする。
 おせち料理はリオウの祖父の手作りで振舞われ、他は世界各国の料理が並んでテーブルはお祭りのようだった。おせち料理は日本にいた時にコマーシャルで見たことがあるけれど、母の実家で過ごす際は日本ではなくフレンチや中華などの有名シェフ監修という名目がついたおせちを取り寄せていただけで、手作りがこんなにおいしいのかと驚いた。
 そのおすそ分けに来てくれたリオウの祖父に会った時には驚いた。リオウに似すぎていた。
 顔のつくりは母親らしいが、柔らかい雰囲気とか笑顔が瓜二つだった。
 そのことを伝えると、彼は少しだけ照れくさそうで、どうも、リオウの笑みで隠された真っ黒な正確は彼譲りではなかったらしい。では、誰かと思うと、ジークの父の秘書のリオウの父だったようだ。かのメッセージカードとケーキを送ってくれた、ジークの父の命令だったが、人であり、恒例だといってジークとリオウの家族が全員集合した時に気付かされた。
 リオウの祖父はおせち料理を早めに来て準備してくれていただけで、その準備を私も手伝ったから、彼の表情は本当で根が素直だと分かりましたが、彼の息子でありリオウの父はたぶん真っ黒です。
 一番怖かったのはクリスマスパーティでのことをリオウの父に訊かれたので素直に返答したのですが、その時の顔が笑みは笑みだったのだけれど、何というか形容しがたい何かを纏って恐怖を覚えた。しかし、ジークや他の人の気遣いのおかげで雰囲気は悪くならずに済んだのでした。

 しかし、そうして遊び呆けているわけにもいかず、通常のクリスマス休暇も終わる3週間前にクリスマスパーティの時に中断された私の学校について話し合うべく、ジークの執務室に突撃した。

 いつまでも切り出さないから、このまま行くと、なんだか、進学の話がなかったことになりそうだからね。

 ノックをすると、すぐに返答があり私は扉を開けた。そこには、誰もいないが溜まっていた資料が山を作っていたので、静かだが広い部屋とは考えられなかった。さすがに、これには罪悪感が湧いた。

「あの、やっぱり、また後で訪ねます。」
「いや、ゆっくりして行ってよ。せっかく来てくれたんだからね。」
「でも、忙しそうですし。あ、それなら手伝えることがあれば手伝います。」

 妙案とばかりに提案すると、彼はにっこり笑った。

「そうか。じゃあ、お茶とお菓子も用意してもらって2人でそこに並んで資料の処理をしよう。リオウが休暇で旅行に行きたいらしく、そのためにあいつが処理する分の資料がこっちに回って来たからこんなに大量になったよ。」
「そうなんですか。リオウさんより役には立たないかもしれませんが、少しなら何とかできると思います。」
「うん、全然問題ないよ。いや、むしろ君がいる方が早く片づく。」

 後半何かを言ったようだったけれど、ほとんど聞き取れなかった。
 ??
 疑問符で首を傾げたが、彼は結構こういう胡麻化しが多かった。私にとって不要な情報だと思っているから気にはしなかったけれど、今回は私のことな気がしたからもう一度だけ確認したが、彼は苦笑するだけだったので、それ以上は諦めた。
 彼に渡された資料をもとにプレゼン用の資料をまとめて、完了したのはディナーまで1時間弱という時間だった。疲れたようにあくびをする彼に申し訳なく思いつつも私は意を決して口を開いた。

「ジークさん、お話があります。」
「話?ああ、そういえば、仕事の手伝いじゃなかったね。ごめん、忘れてた。」
「いいえ、それは私が急に来たのが悪いので気にしないでください。」
「そう?それで話って何?」

 カップをソーサーの上に置いて彼はこちらを見た。

「あの、クリスマスパーティで私が言ったことを覚えていますか?」
「うん、もちろん。地に足を付けた人間になりたいって話だったよね?」

 意外とちゃんと覚えているようで驚いた。
 それが顔に出ていたのだろう。彼は私を見て苦笑いだった。

「何を驚いているの?僕が君のことをたとえ罵詈雑言だって覚えているよ。何、僕が忘れていると思ったの?心外だね。君に僕の気持ちが伝わっていないなんて、悲しいよ。」
「そ、そんなことはないですよ。」

 顎を掴まれた状態で顔を近づけてくる彼から唯一視線だけをずらして何とか平常を保った。

 本当にいつスイッチが切り替わるか分からない!!
 この時のジークさんって本当に怖いよ!!何か犯罪犯していないよね!?

「そ、それならいいけど、それで話って?」
「あ、はい。」

 彼があっさりと顎から手を離して、かつ、常識範囲内の距離に戻った。

「学校に通いたいって言ったのは覚えていますか?」
「ああ、その話か。それなら、すでに準備はできつつあるから心配しなくていいよ。あと、君は僕の会社の社員だってこと、忘れてないよね?」

 意を決して放った言葉が彼には、なーんだ、と安堵を覚えるものだったらしい。
 私には急な展開に頭が追い付かなかったが、訊かれた内容は理解していた。

「はい、社員です。」
「そう、君は僕の会社の社員。そして、わが社には社員の教育支援システムというのがあって、仕事をしながら学業もできるんだよ。」
「・・・・え!?」

 今までで一番驚いていたし、その驚きの声には間違いなく歓喜が混ざっていたと思う。

「社員の育成は会社の利益につながることだからね。金銭的援助なんかもしているし、今はオンラインで授業なんかも受けられるんだから、例えば仕事を終わった後とか休暇を取って時間を作ったりとかで自己成長のために励んでいる社員は多いよ。」
「へえ、すごいですね。じゃあ、それに私も加えていただけるんですか?」
「もちろんだよ。君は社員だからね。」
「ありがとうございます。」

 私は勢いよく頭を下げた。

「それで、君は何を学びたいと思っているの?以前は夢はないって言っていたし、学校に行って学習しながら夢を見つけたいって言っていたけど、学習したいものは何があるの?」
「えっと、ざっくりとしたことでもいいですか?」
「もちろん。」

 なんだか年の近い人に話すのは照れが出た。

「マネジメントとお金の運用とプログラミング、あとはデザイン関連です。」
「そんなにあるのか。結構な量になるから大変だよ。」
「そうですよね。」
「マネジメントとお金の運用とプログラミングは僕も僕の父、あとは義理の兄が得意だから3人で教えるよ。デザインはリオウの祖父が教えてくれるかもしれない。」
「え?え?学校じゃないんですか?」

 急にあげられた面々に動揺を隠せなかった。多忙な人達にさらに荷物を背負わせるに等しい行為だろう。

「ここには経済界のプロフェッショナルが集まっているし、実際に活躍している人から聞いた方が為になるからね。生の意見を聞いた方がいいだろう。それに講義は1人の教師が生徒に教えるからあまり深く学べないことが多いんだよ。それに対して、ここではマンツーマンだし、直接会話できるし、質問もしやすいでしょう。本もたくさんあるからね。」
「そうなんですね。リオウさんの祖父というのは?」
「ああ、リオウの祖父は結構有名な画家であり庭師でもあるんだよ。静江はあの人の弟子だった人なんだ。」
「そうなんですか!?」
「そうなんだよ。彼に教われば美意識も身に着くよ。」
「はい、ありがとうございます。」

 ご厚意に甘えることにした。
 学校に通うつもりが、教育環境が全てジークの家に揃っているなんて、灯台下暗しだった。
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