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さがしもの(テナ視点)
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貴重な書物のみを保管している図書室。
ここフロロフィア魔法学校には、他の一般生徒向けに図書館もあるが、希少価値の高いものや危険なものは全てここに保管されている。
図書室に入れるのは極一部の人間で、自分もその中の一人だ。
ただ魔法に関しては素質がないこともあり、許可されているのは専攻している魔法薬学に関するものだけ。
中に入ってしまえばどの本も開くことはできる。でも魔法に素質がないと分かっているのにわざわざ手を出すほどの余裕はない。
「えっと……確かこの辺りに……。」
部屋の隅にある魔法薬学の材料に関する本が収められた棚の前で、目的の物がないかと探しながら呟く。
ここの本は貸し出しは出来ないはずなのに、見当たらない。
本棚にも抜かれた形跡はないし、この部屋に自分以外の人は見当たらず、見落としたかともう一度確認する。
探している本は、表紙が深みのある緑の上質な布が使われた上製本で、一昨日別の本の内容を確認しに来た時にたまたま見かけ、次に閲覧する候補の一つにしていたもの。
………やはり見当たらない。
ここの本は定期的に手入れをするためにと本の入れ替えが行われる。
一冊だけ入れ替えるのは不自然だが、もしかすると誰かが酷い扱いでもしたのかもしれないと肩を落とす。
無い物は仕方がない。けれど何故かあの本が引っ掛かって、今は他のものを読む気にはなれない。
どうしようかと本棚を前に思案する。
魔法薬学室を使おうにも今からだと中途半端なところで終わってしまいそうだ。
材料を採取に森に行くにしても、あの森は貴重な植物も多く、たまに許可のないものが侵入することもあり一定の時間になると中が暗くなるように魔法がかけられている。
中で光の魔法は使えないし、暗くなった後に入るには学校の所持する特殊な魔法具を使う必要があるが、それを借りるには色々と手続きが必要だ。
………諦めて帰ろうか。このままここで悩んでいても仕方がない。
そんな時間があるのなら、寮に帰って勉強をした方が有意義だろう。
そうと決まればすぐに帰らなくてはと振り返り、見覚えのある金色の髪に、思わず声を掛けてしまう。
「ジュリアスがここに来るとは思いませんでした。」
「少し調べたいことがあってね。」
驚く様子がないことから考えるに、彼は僕がここにいることに気付いていたのだろう。
それなら声を掛けてくれたらよかったのに、と心の中で呟きながら彼に近付き、視線の先にあるものを確認する。
「…………魔力検査、ですか?」
そこに並んでいたのは魔力検査に関する物ばかりで、何故今それをと疑問に思っていると、ようやくこちらへと視線が向いた。
「テナ、前に面白い話をしていたよね。」
「面白い話?………ああ、もしかして魔力石のことですか?」
自分の魔力の少なさを補うために考えたまだ空想の段階のそれを、彼はちゃんと覚えていたらしい。
「そうそれ、魔力石のこと。
君の家に……いや、君自身に話が伝わっているかは分からないけど、一人候補がいるよ。」
「それは………本当に?」
「瞳に色を持つ子。彼女なら、きっと君の力になってくれる。」
驚きのあまり声が出なくなる。
瞳に色を持つ者の話は勿論知っているが、実在するとは、いや現れるとは思ってもみなかった。
「…………そう、ですか……。」
嬉しいはずのことなのに、心に蟠りが生まれる。この複雑な感情はなんだろうか。
ここフロロフィア魔法学校には、他の一般生徒向けに図書館もあるが、希少価値の高いものや危険なものは全てここに保管されている。
図書室に入れるのは極一部の人間で、自分もその中の一人だ。
ただ魔法に関しては素質がないこともあり、許可されているのは専攻している魔法薬学に関するものだけ。
中に入ってしまえばどの本も開くことはできる。でも魔法に素質がないと分かっているのにわざわざ手を出すほどの余裕はない。
「えっと……確かこの辺りに……。」
部屋の隅にある魔法薬学の材料に関する本が収められた棚の前で、目的の物がないかと探しながら呟く。
ここの本は貸し出しは出来ないはずなのに、見当たらない。
本棚にも抜かれた形跡はないし、この部屋に自分以外の人は見当たらず、見落としたかともう一度確認する。
探している本は、表紙が深みのある緑の上質な布が使われた上製本で、一昨日別の本の内容を確認しに来た時にたまたま見かけ、次に閲覧する候補の一つにしていたもの。
………やはり見当たらない。
ここの本は定期的に手入れをするためにと本の入れ替えが行われる。
一冊だけ入れ替えるのは不自然だが、もしかすると誰かが酷い扱いでもしたのかもしれないと肩を落とす。
無い物は仕方がない。けれど何故かあの本が引っ掛かって、今は他のものを読む気にはなれない。
どうしようかと本棚を前に思案する。
魔法薬学室を使おうにも今からだと中途半端なところで終わってしまいそうだ。
材料を採取に森に行くにしても、あの森は貴重な植物も多く、たまに許可のないものが侵入することもあり一定の時間になると中が暗くなるように魔法がかけられている。
中で光の魔法は使えないし、暗くなった後に入るには学校の所持する特殊な魔法具を使う必要があるが、それを借りるには色々と手続きが必要だ。
………諦めて帰ろうか。このままここで悩んでいても仕方がない。
そんな時間があるのなら、寮に帰って勉強をした方が有意義だろう。
そうと決まればすぐに帰らなくてはと振り返り、見覚えのある金色の髪に、思わず声を掛けてしまう。
「ジュリアスがここに来るとは思いませんでした。」
「少し調べたいことがあってね。」
驚く様子がないことから考えるに、彼は僕がここにいることに気付いていたのだろう。
それなら声を掛けてくれたらよかったのに、と心の中で呟きながら彼に近付き、視線の先にあるものを確認する。
「…………魔力検査、ですか?」
そこに並んでいたのは魔力検査に関する物ばかりで、何故今それをと疑問に思っていると、ようやくこちらへと視線が向いた。
「テナ、前に面白い話をしていたよね。」
「面白い話?………ああ、もしかして魔力石のことですか?」
自分の魔力の少なさを補うために考えたまだ空想の段階のそれを、彼はちゃんと覚えていたらしい。
「そうそれ、魔力石のこと。
君の家に……いや、君自身に話が伝わっているかは分からないけど、一人候補がいるよ。」
「それは………本当に?」
「瞳に色を持つ子。彼女なら、きっと君の力になってくれる。」
驚きのあまり声が出なくなる。
瞳に色を持つ者の話は勿論知っているが、実在するとは、いや現れるとは思ってもみなかった。
「…………そう、ですか……。」
嬉しいはずのことなのに、心に蟠りが生まれる。この複雑な感情はなんだろうか。
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