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日常
第二百二話 餅ピザ
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「お前らさ、ピザで何が好き?」
朝比奈の机を囲んで、ゼリービーンズをお供に話をしていたら、唐突に咲良がそう聞いてきた。ゼリービーンズを持ってきたのは当然、百瀬だ。こればっかりは手作りではなく「安売りしてたし、食べたかったから」とのことらしい。俺はもも味とマスカット味が好みだ。ねっちりした食感がうまい。
「急にどうした」
朝比奈が聞けば「それがさあ」と咲良は腕を組んでうなった。
「昨日の晩飯、ピザだったんだよな」
「すげー、豪華じゃん。なんかあったの?」
そう聞く百瀬に、咲良は首を横に振った。
「いや。ただ、晩飯何がいいかって話になって、そしたら鈴香が『ピザがいい!』って聞かなくて」
「ちょっと待て鈴香って誰だ」
三人そろって聞き返す。聞き返した後で、ふと思い当たることがあったがそれを口にする前に咲良がきょとんとした表情を浮かべながら答えた。
「妹だけど?」
「妹いたのか」
朝比奈と百瀬の声が見事に重なる。あー、やっぱり。こないだ妹いるっつってたもんなあ。橘のおかげで聞きそびれてたんだった。
咲良は笑って頷いた。
「おー、いるぞー。中二の。生意気なのが」
「知らなかった」
「言わなかったからな。特別言うようなことでもないだろ?」
きょうだいってそんなもんなのか。こればっかりはどう頑張っても分からん、未知の世界だ。
逸れた話題を咲良が元に戻す。
「で、好きな味を選べってなって。俺は肉がいいっつったんだよな。照り焼きとか」
「あー、うまいよな」
「でも妹はマルゲリータがいいってなって、で、ちょっとした喧嘩になったわけ」
「デリバリーピザだったらハーフとかにできるんじゃないの?」
百瀬の言葉に朝比奈はうなずき、俺と咲良は一瞬沈黙する。
「うちの周り、デリバリー圏外」
「俺も」
デリバリーピザとは無縁過ぎて考えも及ばなかったな。
「え? そうなの?」
「じゃあどうやってピザ食うんだ」
「どうやってって、そりゃお前……」
咲良と目を合わせるとどちらからともなく答えた。
「冷凍とか?」
「あー……なるほど」
「スーパーとかに売ってるやつをこう、アレンジするな」
「だから選択肢少ないよなー。個人のピザ屋とかもあるけど、結構値が張るからさ。まあ、後のせで色々するのも楽しいもんだぜ」
咲良はゼリービーンズを一つ口に含んで笑った。
「お前らんとこ、デリバリー来るんだな。ちょっとあこがれだわ」
「まあしょっちゅうは食わないけど、そっか。デリバリー圏外なのか」
繰り返さんでいい、と咲良は頬杖をついた。
デリバリーのピザ、広告はよく入るけど実際のところ食べる機会がないんだよな。小さい頃は近くに店があった気がするけど、一年ともたずなくなったんだっけ。あんまり記憶にない。
「で、結局どうなったんだ」
そう聞けば咲良は少し不満げな表情になった。
「マルゲリータになった。で、俺は照り焼きのミートボールトッピングで妥協」
「ピザにのせて食ったのか」
「おう。意外とうまかったぞ」
ミートボールのせピザ。確かにうまそうだ。
「お前らは何が好きなんだ?」
「俺は……やっぱシンプルなマルゲリータだな」
そう答えれば咲良は「この裏切り者~!」と両肩をつかんで揺さぶってきた。
「おい、やめろ。酔う」
「俺はシーフードをよく食う。てか、姉さんが好きなんだよ。シーフード」
「やっぱきょうだいに左右されるよな~」
「でも俺は辛いのがいい」
朝比奈が答えたところでやっと解放された。
百瀬は少し考えてから「ご飯系じゃないけど」と前置きして言った。
「チョコマシュマロとかがいいな」
「チョコマシュマロ?」
「チョコソースにマシュマロのっけて焼いたの。結構うまいんだぜ~」
なんとも百瀬らしい回答だ。
甘いピザか。そういやフルーツのっけたピザもあったよな。なんだっけ。
「ハワイアンは?」
そうそう、それだ。咲良ナイス。
「あれも果物のって甘そうじゃん? まあ、妹が苦手だから食ったことねえけど」
「あー、あれね。出されれば食うけど、率先しては頼まないな。甘いのは甘いの、しょっぱいのはしょっぱいの、がいい」
「ピザ生地も好み分かれるよな」
そもそもピザ自体、あまり食わないからよく分からない。でもだからこそ話が盛り上がる。
にしてもピザ食いたくなってきたなあ。買って帰ろうか。
……あ、そうだ。いいこと思いついた。
前に漆原先生も言ってた餅ピザ。今日こそ作り時だろう。
レンチンして柔らかくした餅をクッキングシートの上に広げる。そしてケチャップを塗ったら、ピーマン、玉ねぎ、ベーコンをのせ、仕上げにチーズをたっぷり。
これをオーブンで焼いたら完成だ。
「いただきます」
切り餅とは違って完全に餅同士が溶けあっているわけではないが、食べやすくていい。
「おお、のびる」
もちもチーズもよく伸びる。熱々なのでやけどに気を付けよう。
縁の方はカリッと香ばしく、もっちもちな部分はもち米の味がしっかりしていい。ケチャップの酸味とチーズの塩気がよく合う。
ベーコンのうま味が餅にもよく染みている。
ピーマンの苦みもいいアクセントだ。玉ねぎは程よい食感が残っていながらも、加熱されているので甘みがある。ほんのり残った辛味も爽やかでおいしい。
あ、これタバスコ合いそうだ。
……うん、やっぱり。唐辛子の辛さがキリッと味を引き締める。
餅ピザ、結構腹にもたまるし、いいな。それに大量のモチを消費するのにもうってつけである。
今度は違った具材で作ってみよう。いろいろ試す余地があるから楽しみだ。
デリバリーピザがなくても、こうやって楽しめるなら十分だな。
「ごちそうさまでした」
朝比奈の机を囲んで、ゼリービーンズをお供に話をしていたら、唐突に咲良がそう聞いてきた。ゼリービーンズを持ってきたのは当然、百瀬だ。こればっかりは手作りではなく「安売りしてたし、食べたかったから」とのことらしい。俺はもも味とマスカット味が好みだ。ねっちりした食感がうまい。
「急にどうした」
朝比奈が聞けば「それがさあ」と咲良は腕を組んでうなった。
「昨日の晩飯、ピザだったんだよな」
「すげー、豪華じゃん。なんかあったの?」
そう聞く百瀬に、咲良は首を横に振った。
「いや。ただ、晩飯何がいいかって話になって、そしたら鈴香が『ピザがいい!』って聞かなくて」
「ちょっと待て鈴香って誰だ」
三人そろって聞き返す。聞き返した後で、ふと思い当たることがあったがそれを口にする前に咲良がきょとんとした表情を浮かべながら答えた。
「妹だけど?」
「妹いたのか」
朝比奈と百瀬の声が見事に重なる。あー、やっぱり。こないだ妹いるっつってたもんなあ。橘のおかげで聞きそびれてたんだった。
咲良は笑って頷いた。
「おー、いるぞー。中二の。生意気なのが」
「知らなかった」
「言わなかったからな。特別言うようなことでもないだろ?」
きょうだいってそんなもんなのか。こればっかりはどう頑張っても分からん、未知の世界だ。
逸れた話題を咲良が元に戻す。
「で、好きな味を選べってなって。俺は肉がいいっつったんだよな。照り焼きとか」
「あー、うまいよな」
「でも妹はマルゲリータがいいってなって、で、ちょっとした喧嘩になったわけ」
「デリバリーピザだったらハーフとかにできるんじゃないの?」
百瀬の言葉に朝比奈はうなずき、俺と咲良は一瞬沈黙する。
「うちの周り、デリバリー圏外」
「俺も」
デリバリーピザとは無縁過ぎて考えも及ばなかったな。
「え? そうなの?」
「じゃあどうやってピザ食うんだ」
「どうやってって、そりゃお前……」
咲良と目を合わせるとどちらからともなく答えた。
「冷凍とか?」
「あー……なるほど」
「スーパーとかに売ってるやつをこう、アレンジするな」
「だから選択肢少ないよなー。個人のピザ屋とかもあるけど、結構値が張るからさ。まあ、後のせで色々するのも楽しいもんだぜ」
咲良はゼリービーンズを一つ口に含んで笑った。
「お前らんとこ、デリバリー来るんだな。ちょっとあこがれだわ」
「まあしょっちゅうは食わないけど、そっか。デリバリー圏外なのか」
繰り返さんでいい、と咲良は頬杖をついた。
デリバリーのピザ、広告はよく入るけど実際のところ食べる機会がないんだよな。小さい頃は近くに店があった気がするけど、一年ともたずなくなったんだっけ。あんまり記憶にない。
「で、結局どうなったんだ」
そう聞けば咲良は少し不満げな表情になった。
「マルゲリータになった。で、俺は照り焼きのミートボールトッピングで妥協」
「ピザにのせて食ったのか」
「おう。意外とうまかったぞ」
ミートボールのせピザ。確かにうまそうだ。
「お前らは何が好きなんだ?」
「俺は……やっぱシンプルなマルゲリータだな」
そう答えれば咲良は「この裏切り者~!」と両肩をつかんで揺さぶってきた。
「おい、やめろ。酔う」
「俺はシーフードをよく食う。てか、姉さんが好きなんだよ。シーフード」
「やっぱきょうだいに左右されるよな~」
「でも俺は辛いのがいい」
朝比奈が答えたところでやっと解放された。
百瀬は少し考えてから「ご飯系じゃないけど」と前置きして言った。
「チョコマシュマロとかがいいな」
「チョコマシュマロ?」
「チョコソースにマシュマロのっけて焼いたの。結構うまいんだぜ~」
なんとも百瀬らしい回答だ。
甘いピザか。そういやフルーツのっけたピザもあったよな。なんだっけ。
「ハワイアンは?」
そうそう、それだ。咲良ナイス。
「あれも果物のって甘そうじゃん? まあ、妹が苦手だから食ったことねえけど」
「あー、あれね。出されれば食うけど、率先しては頼まないな。甘いのは甘いの、しょっぱいのはしょっぱいの、がいい」
「ピザ生地も好み分かれるよな」
そもそもピザ自体、あまり食わないからよく分からない。でもだからこそ話が盛り上がる。
にしてもピザ食いたくなってきたなあ。買って帰ろうか。
……あ、そうだ。いいこと思いついた。
前に漆原先生も言ってた餅ピザ。今日こそ作り時だろう。
レンチンして柔らかくした餅をクッキングシートの上に広げる。そしてケチャップを塗ったら、ピーマン、玉ねぎ、ベーコンをのせ、仕上げにチーズをたっぷり。
これをオーブンで焼いたら完成だ。
「いただきます」
切り餅とは違って完全に餅同士が溶けあっているわけではないが、食べやすくていい。
「おお、のびる」
もちもチーズもよく伸びる。熱々なのでやけどに気を付けよう。
縁の方はカリッと香ばしく、もっちもちな部分はもち米の味がしっかりしていい。ケチャップの酸味とチーズの塩気がよく合う。
ベーコンのうま味が餅にもよく染みている。
ピーマンの苦みもいいアクセントだ。玉ねぎは程よい食感が残っていながらも、加熱されているので甘みがある。ほんのり残った辛味も爽やかでおいしい。
あ、これタバスコ合いそうだ。
……うん、やっぱり。唐辛子の辛さがキリッと味を引き締める。
餅ピザ、結構腹にもたまるし、いいな。それに大量のモチを消費するのにもうってつけである。
今度は違った具材で作ってみよう。いろいろ試す余地があるから楽しみだ。
デリバリーピザがなくても、こうやって楽しめるなら十分だな。
「ごちそうさまでした」
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