っておい

シロ

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二、違いにご用心

2ー29、シビアなのだ。

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「・・・・・・で、わいに何が聞きたんや」
あまりに暴れたため、イラついた孟起に水の入ったバケツの如く振り回されてグッタリしたウサギがいた。
「えっと、さっきまで化けていた少女のこと知っているでござるか?」
「知っとるも何も、いくら優秀な式でも姿を知らんもんに化けれるかい。正確にはわいの主人が一回でも見たことのある人物とか物限定ってことやな」
「じゃあ、彼女について教えてほしいでござる」
「無理や」
「何ででござるか?」
「式神は自分の主人が許す範囲でしか行動ができない仕組みだ。当然他人に勝手に情報を与えるなんて論外だろ」
「それなら仕方がないでござるな」
「せや、綺麗サッパリ諦めるんやな」
「だが、魔力操作で無理やり引き出すのは可能だ」
逃がさないように孟起はさらに握る力を強めた。
「わー、それだけは堪忍してくれ」
「あくまで最終手段だが、グズグズしてるとどうなるかわかっただろ。サッサと答えれる範囲で奴のことを答えてもらおうか」
チャキッとウサギの横頭に銃口を押し付ける。完全に脅しだ。
「いいな」
「はい、答えさせていただきます」
完全に孟起の気迫に飲まれていた。
「せやけど、わいもほとんど知らへんで。わいの主人の親友の一人で隣の学校に通うとったんや。元々わいはそいつの身代わり役っちゅうわけや」
このウサギの正体は木属性の式神壬卯で、役割は札を身に着けた者に降りかかる疫災の身代わり。式の仕事ではきつい部類に属す。
「で、ある事件でわいの護衛対象がここに運ばれたときに自分の身代わりにここで治療を受けてくれと本人から頼まれたんや。わいの正体気づいとったみたいやしな。一日中フカフカのベッドで寝ていられ食事付き。はっきり言ってこんな割のいい仕事、二度目はない。断る理由はないんやけど、わいは式になってからまだ日が浅いからな。念のため主人に連絡とってみたところ、『言われたとおりしぃ』と結構な前払いも貰ったんでこうしてのんびりやっとんや」
「前払いでござるか?」
「こいつらの食べ物、つまり気だ」
術者と契約して式神となった魔物は定期的に主人から気力を貰って生活してる。働く代わりに住食の世話をしてもらっているようなものだ。もちろん、何もしていない時でも定期的に貰える。ただし、その質と量はピンからキリまであり、それは主人の機嫌に比例する。つまり、主人に逆らったりしたら即食の危機に陥る。しかし、式神は指名制で、活躍する機会も主人次第。式神の世界もシビアなのだ。
「確か、名前とかの個人情報は答えられなかったな。そいつが何をするかとかは聞いてる訳ないか?」
そうそうと首を振るウサギを孟起は乱雑に投げ飛ばした。
「おまえの主人と連絡取れるか?」
「取れることは取れるがどうすんだ」
「そいつから聞く。元銃騎士からだと伝えれば取り次ぐはずだ」
こくりと頷くと窓の外を向いて手を合わせた。月に帰りたいと願うウサギだ。水色の球体に包まれていなければ可愛い動物芸だ。
「その人はどんな人でござるか?」
「俺と共に巫女の近衛兵だったやつだ。式神術の達人でな。組織では巫女騎士と呼ばれていた。今はのんびりと高校生活を楽しんでんじゃないのか」
「連絡は取ってないんでござるか?」
「ああ、必要なときがなかったからな。組織も解体したわけじゃないから居場所を知られる危険事はできる限り避けるべきだろ」
「孟起も複雑な人生を送っていたのでござるな~」
はやる気持ちを抑えつつ、タイラはしみじみと頷いた。見た目は猫だが、本能は虎である。ウサギを見ると狩りたくなるのは仕方がない。むしろ生きるために必要なことだ。
「つながったで」
ウサギの瞳が陰陽紋に変わる。
「よ、久しぶりだな、元巫女騎士殿」
『ほんに久しぶりどすな~。元銃騎士殿。そっちが担当しとる事件にうちの友達が関わってはるんよ。何か知らんどすか』
「何でそなたが事件のことを知ってるんでござるか」
『うちは何でもお見通しどす。して、うちに聞きたいこととは何どすか?』
「その友達について教えてほしいんだよ。今追っている事件は魔族が何らかの形で関わってる。それに首を突っ込んでる奴が二人いるんだ。漢蜀の一員として止めるべきだろ。」
『・・・・・・』
「おまえも一般人を巻き込むわけにはいかない。悪い話じゃないだろ」
「元巫女騎士殿も関係者でござるか」
「関係者も何も俺達を侵略者退治に利用するため玄劉に集めさせたのはあいつだ」
「本当でござるか。なら、もしかしてそなたは諸葛亮殿の生まれ変わりでござるか?」
『・・・・・・もしかして、そっちの記憶持ってはるの?』
「へ、何がでござるか?」
『何でもあらしまへん。けれど、うちらが選んだことなして知ってはるの?』
「ああ、本人から聞いたからな」
「けど、どうして父上らの部隊が選ばれたのでござるか?」
『ある程度まで絞っりはったんやけど、結局、何組か残ってしまってなぁ。最終的にはくじ引きで決めたんよ』
かなりいい加減な決め方をされたようだ。
「今更グダグダ言ってもどうしようもないな。本題に戻れ」
やれやれようやくかよとウサギが息を吐く。
『うちとて不安してないわけあらしまへん。面倒事嫌いそうに見えて結構無茶しはる人やから、命を落とすことはあらへんと思うけど。あん人もついてはるやろし』
「二人組か。二十歳ぐらいの男に十五、六歳の少女か?」
『・・・・・・そうどす』
「彼らでござるな」
『しかし、うちには彼らを止める資格があらしません』
「なら、拙者らが止めるでござる」
陰陽紋の視線と赤と緑の視線が重なる。一人と一匹、正確には二匹の間で無言のやり取りが続く。三分くらい睨み合った後、ウサギの口が小さく開いた。
『・・・・・・白馬 子龍はんと雲 小龍はんどす。友達は小龍はんの方。うちが通っているところの近くの学園にかよってはる。うちが言えるんはこれくらいです』
ぼぉ~っと自分の世界に入り込んだタイラを孟起は視界から外して話を進めた。
「白馬家の事件と俺達が追っている事件は同一なのか?」
『そっちの事件知らへんからなぁ~。そろそろ通信終わってええ?これ凄く疲れるんよ』
「待ってくだされ。白馬 子龍は支援輸送部隊第三隊員セイ・シリュウでござろうか?」
『知りまへん』
「え、だって」
『うちは頼まれたから選んだだけどす。その部隊の中に誰がいたかなど知らしまへん。選び方も資料見いひんと占いだけでやったし』
最終決定が適当すぎる。タイラは泣きたくなった。そりゃ、宝くじの抽選番号から選んだとかよりマシかもしれないが、これはこれで酷い。
「だったら、その資料を持ってきた奴の名前を教えろ。あとはそいつに聞く」
『シロはんどす。頑張ってなぁ。ほな、さいなら』
ウサギの瞳から出ていた映像が消え、瞳の色が元に戻り、通話は終了した。


                           続く
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