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第3章 初恋は圭
No,34 え?なんでそうなる!
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【これは中学校3年のお話】
3年生の1学期はスケジュールが詰まっていた。
──合唱コンクールと修学旅行。
まず初っぱなに校内合唱コンクール。
そこで僕は、伴奏者とは言え一応は合唱部員だった事から指揮者に選ばれてしまった。
正直嫌だった。
男子の多くは照れもあって不真面目だ。今で言うなら中2病と言うやつだろうが(実際は中3だったけれど)本当にたちが悪かった。
(こいつらをまとめるなんて絶対に無理だ!)
と、僕は本気で落ち込んでいた。
ところが練習に入ると、圭がにらみを利かせてくれた。
「理久の言うことをちゃんと聞けよ!」って。
そのあたりから圭は、僕にとってただおちゃらけただけのクラスメイトではなくなってきた。
そんなこんなで親しくなって、色々話すようになってきた。
圭は相変わらず屈託がなくて
「3年で同じクラスになれて良かった」なんて、恥ずかしげもなく平気で言う。
圭のサッカー練習を眺めながら終わるの待ったり、圭が音楽室まで迎えに来てくれたり。いつしか二人は、一緒に帰るのが当たり前になった。
それが今にして思うと笑ってしまう。だって二人の家は逆方向だった。だからあっち行って戻って、こっち来て戻ってって、なかなか家に帰れない。全く意味が分からない。
だけど何だかとっても楽しい。
当時の自分に教えてあげたい、それが恋なんだよって。
だって当時は、そんな自分に気付かなかった。ただ一緒にいるのが嬉しかった。それ以上の思いはなんにも無かった。
ある放課後の事だった。
部活のため、音楽室へ行こうと教室を出た途端、知らない女子から声が掛かった。
「歴野君待って!」
よく見ると、それはいつもサッカー部の練習を見に来ている女子の一人。名前は知らないけど顔は知ってる。
「聞きたい事があるんだけど」
目をつり上げて、顔付きも声色も明らかに険がある。
僕は構えた。
「何ですか。僕は君を知らないけど」
「圭とはどうなってるの?」
「はぁ?どうにもなってないけど?」
そう言う事か、と僕は思った。圭がちゃらちゃら「理久が好きだ」なんてふざけて回るから、こう言う勘違いする奴も現れるんだ。
僕はもう、ため息しか出てこない。
「あのねえ、何をどう勘違いしているのか分からないけど、圭とは仲のいいクラスメイト。それだけだよ」
「うそでしょ!私、はっきり聞いたのよ!俺は理久が好きだからって!」
「だからそれは……」
その子は一気に感情が昂り、目が潤んで泣きそうになった。
「違うのよ!どう言う意味?って聞いたら!愛しているって!」
「え?」
パシーン!
いきなり平手で頬を打たれた。ちなみに僕は、親にも叩かれたこと無く育ったくちだ。
「ええっ……??」
人をいきなり叩いておいて、その女子は素早くその場から駆け去ってしまった。
(う!う!う!う!う!)
呆気に取られて棒立ちだったけれど、やがて沸々と怒りが込み上げてきた。
(なんだよこれ!!)
僕は音楽室へは向かわずに、ずかずかとサッカー部の部室へと押し掛けた。
3年生の1学期はスケジュールが詰まっていた。
──合唱コンクールと修学旅行。
まず初っぱなに校内合唱コンクール。
そこで僕は、伴奏者とは言え一応は合唱部員だった事から指揮者に選ばれてしまった。
正直嫌だった。
男子の多くは照れもあって不真面目だ。今で言うなら中2病と言うやつだろうが(実際は中3だったけれど)本当にたちが悪かった。
(こいつらをまとめるなんて絶対に無理だ!)
と、僕は本気で落ち込んでいた。
ところが練習に入ると、圭がにらみを利かせてくれた。
「理久の言うことをちゃんと聞けよ!」って。
そのあたりから圭は、僕にとってただおちゃらけただけのクラスメイトではなくなってきた。
そんなこんなで親しくなって、色々話すようになってきた。
圭は相変わらず屈託がなくて
「3年で同じクラスになれて良かった」なんて、恥ずかしげもなく平気で言う。
圭のサッカー練習を眺めながら終わるの待ったり、圭が音楽室まで迎えに来てくれたり。いつしか二人は、一緒に帰るのが当たり前になった。
それが今にして思うと笑ってしまう。だって二人の家は逆方向だった。だからあっち行って戻って、こっち来て戻ってって、なかなか家に帰れない。全く意味が分からない。
だけど何だかとっても楽しい。
当時の自分に教えてあげたい、それが恋なんだよって。
だって当時は、そんな自分に気付かなかった。ただ一緒にいるのが嬉しかった。それ以上の思いはなんにも無かった。
ある放課後の事だった。
部活のため、音楽室へ行こうと教室を出た途端、知らない女子から声が掛かった。
「歴野君待って!」
よく見ると、それはいつもサッカー部の練習を見に来ている女子の一人。名前は知らないけど顔は知ってる。
「聞きたい事があるんだけど」
目をつり上げて、顔付きも声色も明らかに険がある。
僕は構えた。
「何ですか。僕は君を知らないけど」
「圭とはどうなってるの?」
「はぁ?どうにもなってないけど?」
そう言う事か、と僕は思った。圭がちゃらちゃら「理久が好きだ」なんてふざけて回るから、こう言う勘違いする奴も現れるんだ。
僕はもう、ため息しか出てこない。
「あのねえ、何をどう勘違いしているのか分からないけど、圭とは仲のいいクラスメイト。それだけだよ」
「うそでしょ!私、はっきり聞いたのよ!俺は理久が好きだからって!」
「だからそれは……」
その子は一気に感情が昂り、目が潤んで泣きそうになった。
「違うのよ!どう言う意味?って聞いたら!愛しているって!」
「え?」
パシーン!
いきなり平手で頬を打たれた。ちなみに僕は、親にも叩かれたこと無く育ったくちだ。
「ええっ……??」
人をいきなり叩いておいて、その女子は素早くその場から駆け去ってしまった。
(う!う!う!う!う!)
呆気に取られて棒立ちだったけれど、やがて沸々と怒りが込み上げてきた。
(なんだよこれ!!)
僕は音楽室へは向かわずに、ずかずかとサッカー部の部室へと押し掛けた。
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