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第3章 初恋は圭

No,33 圭との出会い

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【これは中学校3年のお話】

 今想い出しても胸がキュンとする。
 懐かしく鮮明な記憶。
──初恋は圭。


 中学3年の一学期。
 僕の中学校は市内でも有名なマンモス校で、当時14クラスもあったからクラス替えでシャッフルされると、ほぼほぼ知らない人の方が多くなる。

「おう!理久。また一緒のクラスだな」

 声を掛けてきたのはサッカー部の佐藤だ。そしてその横に立っていたのが圭だった。

「こいつ、圭って言うんだけど、理久の事が好きなんだとさ」
「ええっ?」

 佐藤はニヤリとして、でも真面目に圭を紹介してきた。

「圭とは幼稚園の頃からの付き合いなんだ。家が近所で、幼馴染みって言うやつだよ。悪い奴じゃないんだけどちょっと変わってるんだ。女にモテるくせにさ、理久の方がいいから紹介しろって」

 僕はちょっと怪訝な顔を圭に向けた。

「今の紹介で、正解?」
「ああ、俺、前から理久のこと知ってたよ。佐藤の言う好きってのはなんだけど、以前から理久と話したいとは思ってた」
「え、なんで僕なんかに?」
「ピアノ弾くだろ?俺の回りにはいないタイプだったからさ」

 佐藤が突っ込んだ。
「なんだよ圭!そこいらの女子より理久の方が可愛いって言ってたじゃねえか!俺のスタンドプレーみたいに言うなよな!」
「ああ、ごめんごめん。いきなり好きじゃ、理久が驚くと思って」

 それはまるで掛け合い漫才のように軽快で、深刻さも真実味も全く無くて、僕には冗談にしか聞こえなかった。
 とにもかくにも、初対面からいきなり呼び付けで「理久」だった。だから僕も自然に「圭」って呼べた。
 それからはもう、遠慮も何もあったもんじゃない。圭がやたらと絡んでくる。でも僕は、それが全然いやじゃなかった。

 それまで合唱部で伴奏をしていた僕はサッカー部の圭とは全く接点が無かったから、正直僕は圭の事を知らなかった。
 圭はどうして僕を知っていたんだろう?
 それは本人には聞き難くて、佐藤に聞いた事がある。

「そりゃ、理久は有名人だから」
 って、全く意外な答えに僕は頭を振って否定した。
「いやいや、しょっちゅう講堂でピアノ弾くだろ?校歌の伴奏とか。おまえ、案外有名なんだぜ」
「ふ~ん」
 そんな事言われたら、はにかむしかない。

「それ言や圭だって有名人だ」
「そうなの?」
「サッカー部じゃ2年の頃からレギュラーだし、あのルックスだから、結構ファンの女達がキャーキャー言ってるだろ?」
「ふ~ん」
 遠からず僕は、そのキャーキャー言っている女子の一人に言い掛かりを付けられる事になる。

 僕から見た圭の第一印象は、背は高いけど顔は幼くて可愛い感じ。そして日に焼けて元気そうで、笑顔がまぶしい──。

 あれ?……今にして思うと一目惚れだった?

 でも、当時の僕にはそんなことは分からなかった。ただ圭がまぶしかっただけ。
 そんな圭に「好きだ」と言われて、僕の心は満ち足りていた。

──想い出深い、中学3年生が始まった。


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