Another world currency

haya

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敗走

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「よし! 今日から冒険者の仕事を頑張るぞ! と意気込んでみたものの・・・まったく無いな・・・」

 シイヤ草を採取に来たが、何処を行っても採取可能な物がほとんど生えてなかった。


「この辺りもだいぶ採取したしな・・・まだ伸びきってない物ばかりだ。」


 しょうがないので早いが今日はギルドに戻る事にした。


※※※※※

「あら? ユウジさん、お帰りなさい。今日は早いですね?」

「フランさん、ただいまです。今日はシイヤ草が全然見つからなくて・・・ この辺りはだいぶ採取しましたしねぇ・・・何処か良い場所知りませんか?」

「そうですね~。採取だと街から南西にあるクロナの森が良いですよ。色々な物が取れるので重宝されています。」

「そうですか! 早速、行ってみますね!」

「ただこの森は魔物が多いのでゴブリンやフォレストウルフは群れで出てくる場合もありますし、毒を持つ魔物も多数いて別名『初心者殺しの森』とも呼ばれています。」

「そ、そうなんですか・・・」

「なので決して森には入らないで下さいね。今のユウジさんなら死んでしまう可能性が高いです。大丈夫、森に近付くほど魔素も豊富になりますので森の外周でも十分に採取できるはずです。」

「分かりました! まだ日も高いので行ってきます。」

 フランさんに見送られながら俺は南西の森を目指した。



※※※※※

「ホントだ。南西に進むほどシイヤ草を発見しやすくなるなぁ。」

 魔素が豊富なお陰か背負い籠の中にどんどんシイヤ草が埋まっていき、腰の左右にはプラボラビットが1匹づつぶら下がっていた。


「朝と違って順調だな~。 お、あれがクロナの森かな?」


 目の前には木が生い茂った広大な森が見えてきた。


「フランさんに言われた通り中に入らないようにしないとな。」


 森から少し離れた場所で採取してると目の前の森からプラボラビットが飛び出してきた。


「おっ、3匹目だな。アイツも狩っていくか。」


 短剣に手を掛け近付こうとした時、プラボラビットの後から1匹の犬・・・ではなく狼が飛び出してきた。
 狼は手足が白く、胴体は焦げ茶色していた。
 どうやらプラボラビットは狼から逃げているところだったみたいだ。
 プラボラビットは狼から逃げるが速度が違いすぎてすぐに捕まり食べられてしまった。


「(おいおい・・・めっちゃ強そうなんですけど・・・骨もボリボリ食べてるし、あれがフォレストウルフか?)」


 大型犬より一回り大きく、骨も噛み砕く強靭の顎を持つ目の前の狼にビビり、俺は静かに後退りする。 

 しかし、すぐに食事を終えた狼は鼻をピクピクさせたと思ったら俺の存在に気付き、敵意を向けた。


「グルゥゥゥ!!」


 低い唸り声をあげながら徐々にこちらに歩いてくる。


「いや、俺なんか食べても美味しくないよ? むしろお腹壊すかもよ?」


 そんな話しをお構いなしに狼は駆け出した。
 急いで逃げるが狼の方が足が速く、あっという間に追い付かれた。
 狼は強靭な口を大きく開けて俺に飛び掛かって来る。


「あぶなっ!」


 咄嗟に短剣を抜き、横に寝かせて狼の開いた口に押し込み噛みつかれるのを阻止した。
 狼の顎が強靭なのか、それとも短剣がショボいせいなのか短剣はミシミシと嫌な音を立てていく。


「(やばっ! 剣にヒビが入ってきた! このままじゃ持たないぞっ!)」

 
 何とか押し返したいが悲しい事に力は狼の方が上で徐々に押されていく。
 
そして遂にヒビの入った短剣が砕けた。
 

「(今だ!!)」


 短剣が砕けた瞬間、体がぐらついた狼を思いっきり蹴り飛ばす。
 狼は2mほど飛ばされヨロヨロと起き上がろうとしていた。
 今が逃げるチャンスと見て、即座に駆け出した。


「げっ! もう追いかけて来てる!」


 後ろを振り向きながら走っていると、狼は1mほど後ろを走っていた。


「これでも喰らえ!!」


 両腰に吊るしていたプラボラビットを狼の後ろへと投げる。
 先ほどプラボラビットを食べていたから、これに食い付くハズだ。


「えぇ!? 見向きもしないのかよ!?」


 予想とは裏腹に狼は見向きもせずに俺の方へと向かってくる。


「やばっ! どうしよ・・・あっ!」


 後ろを見ながら走ったせいか、転んでしまう。
 すぐに寝ながら後ろを見るが、狼は口を大きく開けながら俺に向かって跳躍していた。


「(もうダメだ・・・)」


 そう思った瞬間、俺と狼の間に大きな赤い弾丸が通る。正確には目で追いきれなかったので、弾丸のように思えた。弾丸が通りすぎると狼の体と頭は離ればなれになり俺の体を通りすぎた。
 弾丸が通り過ぎた場所を見ると人がしゃがみこんでいて、足からは少し煙が出ていた。


「(まさかあの速度で飛んで来たって事か!? だとしたら人間じゃねぇ・・・)」


「いやー。危なかったね、お兄さん♪」


 赤い軽鎧を着た赤髪の少女が近づいて話し掛けてきた。
 全身が赤いので赤い弾丸と勘違いしたのだろう。


「キミが助けてくれたの?」

「そうだよ♪ 森から出てきたらフォレストウルフに追いかけられてる人がいたから急いで追いかけたんだ。間に合って良かったよ♪」

「本当にありがとう。もうダメかと思ったよ・・・」

「いえいえ~。見たところ低ランク冒険者みたいだけど、1人で無茶はしないようにね。」


 少女は話しながら自分の背丈くらいある大剣の血糊を拭いていた。


 「あはは・・・森の外周なら平気だと思ったんだけどねぇ。キミも1人みたいだけど、近くに仲間がいるのかい?」

「私も1人だよ。ちょっと王都まで用があったから森に好物の果物を取りに来たんだ。走って疲れたでしょ? 一つあげるよ。」


 そう言って少女は腰のポーチから拳より一回り大きな赤いハート形の果物を取り出した。
 俺に一つ渡し、自分で二つ食べ始めていた。
 ポーチの大きさより果物の方が大きいって事は、あのポーチは収納系の魔道具なのだろうか?


 「じゃあ、ありがたく頂くね。 何コレ!? 甘っ!」


 一口噛ると口の中にとても甘い桃の様な味が広がるが、でもしつこくない甘さで後味がスッキリだ。そしてとても瑞々しくて日本でもこんなに美味しい果物は食べた事ない。


「どう? 美味しいでしょ? この森限定でしか取れないんだよ。 こんなに美味しいのに皆食べないんだよねぇ・・・やっぱ私みたいに【麻痺無効】持ってないからかなぁ・・・」

「え!? ぐっ、がっ・・・」


 急に体が動かなくなってきた。少女の口振りからして体が麻痺になるようだ。


「あらら。お兄さんも【麻痺無効】持ってなかったのね。せっかく美味しいのに残念だね・・・ ここに放置すると危ないから王都まで運んであげるね♪」


 そう良いながら少女は俺をヒョイっと片手で持ち上げ、自分の右肩に担いで歩いた。
 少女の身長が低いせいか俺の足が地面に引きずられているが動けないので文句は言えない。


「(それにしてもいいオッサンが女の子に運ばれるのは恥ずかしいなぁ・・・)」


 今回、フォレストウルフに敗北してこの先まともに採取の仕事ができるのかを不安に思いながら街へ戻っていった。

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