Another world currency

haya

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世界情勢

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 この世界に来て2ヶ月が経過した。

 この日は宿屋での仕事の最終日だった。ナイラさんの旦那さんの腰が治ったので手伝いがいらなくなった為だ。1人娘のリランちゃんも喜んでいて、父親を荷馬車のように働かせている。うん、彼女の将来の旦那さんは苦労しそうだなぁ・・・。

 俺は冒険者の仕事(相変わらず採取ばかりだが)が1日暮らすのに問題無いくらい稼げるようになっていたので、明日からは採取メインにするつもりだ。


「はいよー!3番テーブルの料理出来たよー!」

「はい! 分かりました!」


 ナイラさんに呼ばれて料理を取りに行く。今は夕飯時で宿屋の食堂は戦場のような忙しさだった。


「お待たせしました! オーク肉のソテーとウサギの香草焼き、エール2つになります! ・・・ん?」


 指定されたテーブルに料理を持って行ったが二人の男性客はこちらに気付かずに話し込んでいた。


「おいおい、国境の話を聞いたか?」

「あぁ。帝国とのだろ? 出入国制限になったらしいじゃないか。俺らみたいな行商人には困るよな・・・」

「あぁ。制限だけなら良いが、このまま戦争にでもなったら、いよいよ他国で商いをしないとだな。」

「だよなぁ。無難なのは東のルブルリントかなぁ。」


 そうか・・・ついに始まってきたか。国王は半年後に戦争するって言ってたから準備しだしたって事かな。
 丁度良い、この商人達から避難先候補の国を教えてもらおう。


 「すみません! 料理持ってきました!」

「うぉ! ビックリしたなー! 普通に話してくれよ!」

「いえ・・・1度声は掛けたんですが・・・  それより面白い話しをしてましたよね? 他の国がどーとか。俺にも聞かせてくれますか?」

「ん? そんな事言ったかな・・・ 仮に言ったとしても何処でライバルが聞いてるか分からないから簡単には言えないよ。なぁ?」

「おぅ。商人は情報が命だからな!」

「まぁまぁ、これで飲んだら口が軽くなるかもしれませんよ?」


 俺はテーブルの上に銀貨3枚置いて酒を飲むように促す。


「はぁ。しょうがねぇなぁ。で? 何が聞きたい?」

「『仮に』帝国と戦争が起きた場合、何処の国が避難先に良いのかなと思いまして。田舎から出てきたのでこの国以外の国を知らないんですよ。」

「おいおい、その歳でこの国しか知らないってすげぇ田舎なんだな・・・兄ちゃん苦労してんだな・・・」


 俺のとっさに言った嘘に商人は信じた様で酒が入ったせいか少し涙目だった。


「よし!じゃあ、一から教えてやるよ。この王国は隣接している国が多いんだ。まずは西の亜人達が暮らすマナート連合国だ。色んな部族が集まり一つの国を形成しているのさ。王国は人族至上主義だから、この国とちょくちょく戦争していて仲が悪い。人族が暮らすには肩身が狭いから止めた方が良いぞ。」

 マジか・・・ この国のアホ王はどんだけ戦争好きなんだよ。


「次は北の神聖エヴィクオンだ。ここは宗教国家でな。創造神エヴィクベーラを崇拝するエヴィク教が治めてるんだ。他国とも中立ではあるな。ほら、あそこにランタンの魔道具があるだろ? この国は魔道具の生産が活発な技術の国でもある。まぁ、避難先の候補の1つだな。」


 へぇー。宗教はあまり興味が無いけど魔道具は面白そうだなぁ。


「次は北東にあるディナール帝国だな。ここは皇帝が治めてて才能ある人材は種族を問わずに登用してもらえるぜ。ここの竜騎士団が強くてな。いつも王国からの侵略を撃退しているんだ。 まぁ、戦争が始まったら避難先にはならんかもな。」


 そうだよな。この帝国の先にある魔族の国に攻め込むのが王国の目的だから避難には向かないよなぁ。


「最後は東にあるルブルリント共和国だ。ここは商業国家で他国とは中立でな。商業ギルドの本部もあるし商売やるにはこの国が良いかもな。王国・帝国と隣接していて両国とも取引が活発だし景気も良いぜ。正直、ここが避難先の最有力候補ではあるな。」

「なるほど~。とても参考になりました。ありがとうございます。」


 聞いた感じだと最後の国が避難先には一番マシかなぁ。まだ先の話だし、もう少し慎重に考えよう。


「ただ何処の国へ行くにしても身支度だけはしっかりしておけよ。街の付近ならともかく、道中には魔物や盗賊だっているしな。行く時は十分に気を付けて行くんだぞ。」

「はい! 分かりました!」

「まぁ、今のお前さんが気を付けなきゃいけないのは後ろだけどな。」

「へ?  ・・・いでぇ!?」


 急に頭に激痛が走り、後ろを振り向くと鬼の様な形相をしたナイラさんがいた。


「仕事サボって何話し込んでるんだい! 給料出さないよ!」

「す、すみません! すぐに戻ります!!」


 背後から商人達の笑い声を聞きながらダッシュで仕事に戻っていった。


    
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