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第百四話 『神聖魔法』万能説
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ラクト達が巨大バジリスクと対峙していた時、カズキはフローネ、ナンシー、クレアを伴って、港町リーザで食べ歩きをしていた。
一度は断念したシーサーペントを捕獲し、泥抜きをすれば食べられるかどうかを検証するためであったのだが、ナンシーとクレアとフローネが、リーザに到着するなり屋台に駆け寄ってしまったので、本来の目的は後回しになっている。
本当ならカズキとナンシーだけで来る予定だったのだが、話を聞いていたクレアが自分も連れていけ、とカズキに訴え、それに便乗したフローネまでもが騒いだ(飼い主の責任とかなんとか)結果、このような編成になった。
「シーサーペントがいなくなったお陰で、この街にも活気が戻ってきましたね♪」
「ミャー♪」
屋台で買ったイカ焼きをクレアと仲良く分け合いながら、フローネが楽しそうな表情で言う。相方のクレアも、ご機嫌な声で同意した。
これが、フローネとクレアが同行した理由である。前回来た時は、シーサーペント騒動のせいで、楽しみにしていた屋台巡りが出来なかったので、相当なストレスをため込んでいたのだ。
「そうだな。おっ、これも美味い。ほら、ナンシーも食べるだろ?」
「ニャ」
同じく屋台で買った串焼きを片手に、カズキが応える。彼が手にしているのは、貝柱が複数刺さった物だった。
「・・・・・・じー」
「・・・・・・にゃー」
味わうように咀嚼していると、傍らから強い視線を感じた。いつの間にかイカ焼きを平らげたフローネとクレアが、羨ましそうにカズキが手にしている串焼きを見つめていたのだ。
「・・・・・・はいはい」
色々な種類を少しづつ食べるスタイルのカズキとナンシーは、色々な種類を大量に食べたいフローネとクレアに、串焼きを手渡した。
「ありがとうございます!」
「ミャーン!」
受け取った串焼きを一瞬で食べ尽くし、物足りなかったのか追加を購入してパクついているフローネとクレアを放置して、ナンシーが気にしている屋台へとカズキが歩み寄ると、遠くの方で叫び声があがった。
「何かあったんでしょうか?」
「港のほうから聞こえたな。あ、これ下さい」
騒ぎを気に掛けながらも、買い物はきっちりと済ませるカズキ。ナンシーが御所望の品なので、買わないという選択肢は、最初から存在していないのだ。
「美味いか?」
「「ミャーン♪」」
「はい!」
「そうかそうか」
浜茹でされたカニの身を、喉を鳴らしながら食べるナンシーとクレアの愛らしさに、カズキの顔が綻ぶ。
港で起こった騒ぎへの興味は、既に失せていた。
「こちらにおられましたか!」
だが、そんなカズキを放っておかない人物がいた。この街の冒険者ギルドの支部長、テオである。
「あれ? テオさん? どうして僕らがこの街にいるって知ってるんです?」
「ジュリアン殿下から、カズキさんとフローネ様が行くからよろしく、と連絡が来たので」
「成程」
疑問が解消されたカズキは、それだけ言ってナンシーとクレアを愛でる作業に戻った。口ぶりからテオに探されていた事はわかっていたが、猫が最優先のカズキは、目の前の事に忙しかったのだ。
「実は、クラーケンに襲われてボロボロになった商船が港に現れまして」
カズキにスルーされるのは織り込み済みだったのか、テオは勝手に話し始めた。
クラーケンという単語をやけに強調しているのは、カズキが猫の為に、未知の食材集めをしている事を、ジュリアンから聞いている為である。
「・・・・・・どのクラーケンですか?」
テオの思惑通り、カズキが反応した。
ちなみに、カズキがどの? と確認したのは、クラーケンとは、一種類の魔物を指す言葉ではないからだ。
タコやイカだったり、エビやカニなどの甲殻類だったり、果てはヒトデの姿だったりと、一言では言い表せないのがクラーケンという魔物である。
共通しているのは、どれも船を沈められる程に巨大化していて、何故か船を目の敵にしているという事だ。
そうなると並の冒険者では歯が立たないので、魔物としてのランクもAとなっている。
「今回現れたのはカニの姿をしていたそうです。ああ、そういえばカニって自切しても脱皮すればまた足が生えるらしいですよ?」
テオの言葉に、フローネとナンシーとクレアの目が光った。
「それはつまり、生きたまま捕獲すれば、カニの足食べ放題!?」
「「ミャア!?」」
「いや、食べ放題は無理だ。そもそも、どれくらいの頻度で脱皮するかもわからないしな。――だが、脱皮に頼らない方法ならあるぞ?」
「本当ですか!?」
「「ニャンと!?」」
カズキの言葉に、一人と二匹が驚きの声を上げた。
「猫が喋った!?」
テオだけは、違う事に驚いていたが。
「ああ。【リペアー】の魔法を使えばいい。確か、生きてさえいれば、失った人体の欠損を回復する事が出来るんだよな?」
神聖魔法の【リペアー】は、その名の通り、人体の欠損を修復する神聖魔法である。この魔法を行使できる人間は、世界に数人(ぶっちゃけ、エルザとフローネの二人だけ)しかいないという程、難易度が高い(信仰心は必須だが、それだけでは高位の魔法は使えないのだ)魔法でもあるが。
「その発想はなかったです! 流石カズキさん!」
「【キュアポイズン】で食材の毒抜きをしようと考えた、フローネの方が凄いと思うけどな」
発想のヒントになったのはフローネの思い付きだったので、褒め讃えられて複雑なカズキであった。
一度は断念したシーサーペントを捕獲し、泥抜きをすれば食べられるかどうかを検証するためであったのだが、ナンシーとクレアとフローネが、リーザに到着するなり屋台に駆け寄ってしまったので、本来の目的は後回しになっている。
本当ならカズキとナンシーだけで来る予定だったのだが、話を聞いていたクレアが自分も連れていけ、とカズキに訴え、それに便乗したフローネまでもが騒いだ(飼い主の責任とかなんとか)結果、このような編成になった。
「シーサーペントがいなくなったお陰で、この街にも活気が戻ってきましたね♪」
「ミャー♪」
屋台で買ったイカ焼きをクレアと仲良く分け合いながら、フローネが楽しそうな表情で言う。相方のクレアも、ご機嫌な声で同意した。
これが、フローネとクレアが同行した理由である。前回来た時は、シーサーペント騒動のせいで、楽しみにしていた屋台巡りが出来なかったので、相当なストレスをため込んでいたのだ。
「そうだな。おっ、これも美味い。ほら、ナンシーも食べるだろ?」
「ニャ」
同じく屋台で買った串焼きを片手に、カズキが応える。彼が手にしているのは、貝柱が複数刺さった物だった。
「・・・・・・じー」
「・・・・・・にゃー」
味わうように咀嚼していると、傍らから強い視線を感じた。いつの間にかイカ焼きを平らげたフローネとクレアが、羨ましそうにカズキが手にしている串焼きを見つめていたのだ。
「・・・・・・はいはい」
色々な種類を少しづつ食べるスタイルのカズキとナンシーは、色々な種類を大量に食べたいフローネとクレアに、串焼きを手渡した。
「ありがとうございます!」
「ミャーン!」
受け取った串焼きを一瞬で食べ尽くし、物足りなかったのか追加を購入してパクついているフローネとクレアを放置して、ナンシーが気にしている屋台へとカズキが歩み寄ると、遠くの方で叫び声があがった。
「何かあったんでしょうか?」
「港のほうから聞こえたな。あ、これ下さい」
騒ぎを気に掛けながらも、買い物はきっちりと済ませるカズキ。ナンシーが御所望の品なので、買わないという選択肢は、最初から存在していないのだ。
「美味いか?」
「「ミャーン♪」」
「はい!」
「そうかそうか」
浜茹でされたカニの身を、喉を鳴らしながら食べるナンシーとクレアの愛らしさに、カズキの顔が綻ぶ。
港で起こった騒ぎへの興味は、既に失せていた。
「こちらにおられましたか!」
だが、そんなカズキを放っておかない人物がいた。この街の冒険者ギルドの支部長、テオである。
「あれ? テオさん? どうして僕らがこの街にいるって知ってるんです?」
「ジュリアン殿下から、カズキさんとフローネ様が行くからよろしく、と連絡が来たので」
「成程」
疑問が解消されたカズキは、それだけ言ってナンシーとクレアを愛でる作業に戻った。口ぶりからテオに探されていた事はわかっていたが、猫が最優先のカズキは、目の前の事に忙しかったのだ。
「実は、クラーケンに襲われてボロボロになった商船が港に現れまして」
カズキにスルーされるのは織り込み済みだったのか、テオは勝手に話し始めた。
クラーケンという単語をやけに強調しているのは、カズキが猫の為に、未知の食材集めをしている事を、ジュリアンから聞いている為である。
「・・・・・・どのクラーケンですか?」
テオの思惑通り、カズキが反応した。
ちなみに、カズキがどの? と確認したのは、クラーケンとは、一種類の魔物を指す言葉ではないからだ。
タコやイカだったり、エビやカニなどの甲殻類だったり、果てはヒトデの姿だったりと、一言では言い表せないのがクラーケンという魔物である。
共通しているのは、どれも船を沈められる程に巨大化していて、何故か船を目の敵にしているという事だ。
そうなると並の冒険者では歯が立たないので、魔物としてのランクもAとなっている。
「今回現れたのはカニの姿をしていたそうです。ああ、そういえばカニって自切しても脱皮すればまた足が生えるらしいですよ?」
テオの言葉に、フローネとナンシーとクレアの目が光った。
「それはつまり、生きたまま捕獲すれば、カニの足食べ放題!?」
「「ミャア!?」」
「いや、食べ放題は無理だ。そもそも、どれくらいの頻度で脱皮するかもわからないしな。――だが、脱皮に頼らない方法ならあるぞ?」
「本当ですか!?」
「「ニャンと!?」」
カズキの言葉に、一人と二匹が驚きの声を上げた。
「猫が喋った!?」
テオだけは、違う事に驚いていたが。
「ああ。【リペアー】の魔法を使えばいい。確か、生きてさえいれば、失った人体の欠損を回復する事が出来るんだよな?」
神聖魔法の【リペアー】は、その名の通り、人体の欠損を修復する神聖魔法である。この魔法を行使できる人間は、世界に数人(ぶっちゃけ、エルザとフローネの二人だけ)しかいないという程、難易度が高い(信仰心は必須だが、それだけでは高位の魔法は使えないのだ)魔法でもあるが。
「その発想はなかったです! 流石カズキさん!」
「【キュアポイズン】で食材の毒抜きをしようと考えた、フローネの方が凄いと思うけどな」
発想のヒントになったのはフローネの思い付きだったので、褒め讃えられて複雑なカズキであった。
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