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41 一つの裁判を終えて
傍聴席にわたしは残っていた。
母様の死を思い出して、わたしは泣いていた。
わたしを強く抱きしめて、わたしの名前を呼び続けた母様の最後の様子を思い出す。
目の前が真っ赤に染まっていったのは、母様の血だったのか、わたし自身の血だったのか、分からない。
最後までわたしの名前を呼び続けて、亡くなってもわたしを抱きしめていた母様。
わたしも意識を失ったが、その体は、確かに力強く抱きしめられていた。
裁判の中で知った。
わたしは母様の弟子だったのだ。
医術を5歳にして、もう学んでいたのだ。
珍しい難病のルル夫人を観察していたと、裁判官は言っていた。
今からでは、母様が望んでいた未来は作れない。
母様には申し訳ない。
今から医師になるには、もう遅いのだ。
経験値が足りなさすぎる。
ドゥオーモ王国で、わたしは無駄な時間を過ごし過ぎていたのだ。
「マリアナ」
兄様が静かな声で話しかけてきた。
「挨拶の日、ぼくはマリアナに酷いことを言った」
わたしは首を左右に振った。
兄様の怒りも分かるのだ。
「マリアナ、生きていてくれてありがとう」
「兄様」
「本心だよ。母上が、命を懸けて助けた命だと、今日の裁判でよく分かった」
「はい、わたしは最後まで母様に助けられていました」
「マリアナまで死んでいなくて、よかった。父上も、今日の裁判はきっと見ていたと思う。母上がどうして儚くなったのか、知る事ができた。どうして、マリアナが戻って来なかったのかも分かった」
「でも、兄様は怒ってもいいです。父様を亡くしたのは、わたしの記憶がなくなってしまったから」
「君たち、いい加減にしなさい」
兄様と話していたらクラクシオン様が怒った。
「マリアナ、アルが生きていてありがとうと言ったのだ。素直に受け取ればいい。アルも、素直になりなさい」
「はい」
わたしと兄様は、返事をしたが、仲良く一緒だった。
それがおかしかったのか、クラクシオン様はクスッと笑う。
「アル、明日の裁判も見に来いよ。マリアナが過ごした11年が分かる。母上を殺した首謀者だ。父上を苦しめた悪党だ。最後のあがきを見ておけ」
「クラクシオン様、ありがとうございます」
「今日は宮殿に来て、マリアナと一緒に食事をしてみるか?」
「是非、お邪魔させて戴きます」
「マリアナ、いいな?」
「はい、兄様、明日は一緒に見ましょう」
「そうだな」
「落ち着いたら、我が家に一度、戻っておいで、マリアナの部屋はそのままの状態だ。部屋の掃除はさせているが、当時のままの状態だ。何か思い出せるかもしれない」
「兄様、ありがとうございます。裁判が終わったら、見せて戴きます」
「では、行こうか?」
「はい」
また声が揃って、今度は兄様が笑った。
「気が合うようだ」
「さすが、兄妹だな」
クラクシオン様は、わたしと手を繋ぎながら、兄様と並んで話をする。
わたしはハンカチで涙を拭った。
前を向かなければ、母様に叱られてしまうかもしれない。
わたしにできることはあまりないけれど、わたしを最後まで守ってくれた母様は、きっと兄様のことも愛していたはずだ。
兄様とも仲良くできるように努力しよう。
その夜、兄様がやって来て、わたしは初めて宮殿のダイニングで食事をした。
兄様以外にも皇后様と皇女様達、皇子達もいて、皇帝陛下もいた。
激しく緊張する中での食事でしたが、味がしなくなるような事はありませんでした。
皇帝陛下は、わたしや兄様の代わりに、原告として立ってくださっています。
感謝しかありません。
皇后様と皇帝陛下は、やっと皆の前に出てこられるようになった事を喜んでくださいました。
わたしもいつまでも引き籠もっていないで、外の世界に目を向けなくてはいけないと思いました。
明日、わたしはドゥオーモ王国とわたしの元夫、ペリオドス様と決別します。
母様の死を思い出して、わたしは泣いていた。
わたしを強く抱きしめて、わたしの名前を呼び続けた母様の最後の様子を思い出す。
目の前が真っ赤に染まっていったのは、母様の血だったのか、わたし自身の血だったのか、分からない。
最後までわたしの名前を呼び続けて、亡くなってもわたしを抱きしめていた母様。
わたしも意識を失ったが、その体は、確かに力強く抱きしめられていた。
裁判の中で知った。
わたしは母様の弟子だったのだ。
医術を5歳にして、もう学んでいたのだ。
珍しい難病のルル夫人を観察していたと、裁判官は言っていた。
今からでは、母様が望んでいた未来は作れない。
母様には申し訳ない。
今から医師になるには、もう遅いのだ。
経験値が足りなさすぎる。
ドゥオーモ王国で、わたしは無駄な時間を過ごし過ぎていたのだ。
「マリアナ」
兄様が静かな声で話しかけてきた。
「挨拶の日、ぼくはマリアナに酷いことを言った」
わたしは首を左右に振った。
兄様の怒りも分かるのだ。
「マリアナ、生きていてくれてありがとう」
「兄様」
「本心だよ。母上が、命を懸けて助けた命だと、今日の裁判でよく分かった」
「はい、わたしは最後まで母様に助けられていました」
「マリアナまで死んでいなくて、よかった。父上も、今日の裁判はきっと見ていたと思う。母上がどうして儚くなったのか、知る事ができた。どうして、マリアナが戻って来なかったのかも分かった」
「でも、兄様は怒ってもいいです。父様を亡くしたのは、わたしの記憶がなくなってしまったから」
「君たち、いい加減にしなさい」
兄様と話していたらクラクシオン様が怒った。
「マリアナ、アルが生きていてありがとうと言ったのだ。素直に受け取ればいい。アルも、素直になりなさい」
「はい」
わたしと兄様は、返事をしたが、仲良く一緒だった。
それがおかしかったのか、クラクシオン様はクスッと笑う。
「アル、明日の裁判も見に来いよ。マリアナが過ごした11年が分かる。母上を殺した首謀者だ。父上を苦しめた悪党だ。最後のあがきを見ておけ」
「クラクシオン様、ありがとうございます」
「今日は宮殿に来て、マリアナと一緒に食事をしてみるか?」
「是非、お邪魔させて戴きます」
「マリアナ、いいな?」
「はい、兄様、明日は一緒に見ましょう」
「そうだな」
「落ち着いたら、我が家に一度、戻っておいで、マリアナの部屋はそのままの状態だ。部屋の掃除はさせているが、当時のままの状態だ。何か思い出せるかもしれない」
「兄様、ありがとうございます。裁判が終わったら、見せて戴きます」
「では、行こうか?」
「はい」
また声が揃って、今度は兄様が笑った。
「気が合うようだ」
「さすが、兄妹だな」
クラクシオン様は、わたしと手を繋ぎながら、兄様と並んで話をする。
わたしはハンカチで涙を拭った。
前を向かなければ、母様に叱られてしまうかもしれない。
わたしにできることはあまりないけれど、わたしを最後まで守ってくれた母様は、きっと兄様のことも愛していたはずだ。
兄様とも仲良くできるように努力しよう。
その夜、兄様がやって来て、わたしは初めて宮殿のダイニングで食事をした。
兄様以外にも皇后様と皇女様達、皇子達もいて、皇帝陛下もいた。
激しく緊張する中での食事でしたが、味がしなくなるような事はありませんでした。
皇帝陛下は、わたしや兄様の代わりに、原告として立ってくださっています。
感謝しかありません。
皇后様と皇帝陛下は、やっと皆の前に出てこられるようになった事を喜んでくださいました。
わたしもいつまでも引き籠もっていないで、外の世界に目を向けなくてはいけないと思いました。
明日、わたしはドゥオーモ王国とわたしの元夫、ペリオドス様と決別します。
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