桜の奇跡 ~赤い糸の絆~

綾月百花   

文字の大きさ
25 / 35
桜の奇跡  ~赤い糸の絆~

4-3

しおりを挟む


 水を取り替えられて、嬉しそうなピンクの薔薇は、凛と咲いている。
 部屋には甘い薔薇の香りがしている。
 加納がくれたピンクの薔薇の花束。
『植物園に行けるまで、これで我慢してくれるか』
 植物園に行けなくても、加納の気持ちだけで充分だった。
「澄人は、今日は外来?」
「午前は外来で、昼からはOP(手術)だ」
「忙しいね。頑張ってね」
「晃平は、今日はどこだ?」
「今日はね、初診室とヘリ当番」
「晃平こそ、頑張り過ぎて倒れるなよ」
「最近は倒れてないよ。ちゃんとご飯食べるようになったからかな?」
 今日の朝食はチーズを挟んだオムレツとコンソメスープ。簡単なサラダとヨーグルト、トーストとコーヒーだ。
 朝食はふたりで、手早く作る。
「さて、僕はそろそろ行くけど」
「俺も行くよ。一緒に行こう」
 お皿を集めて、キッチンに運ぶ。
 原はそれを手早く洗う。その隣にきて、加納は原の頬にキスをする。
「一緒に出勤してもいいのかな?」
「なにか、問題でもあるのか?」
「問題・・・」
 原はすっと目を伏せて、首を振る。
 ふと嫌な思い出が頭を過る。
 洗い終わって、水道を止めるとタオルで丁寧に手を拭く。
 濡れたままにしておくと手が荒れやすいからだ。
「俺たちの関係に誰も口を挟ませない」
 加納の言葉は、勇気をくれる。
「晃平は俺たちの関係は、やましい関係だと思っているのか?」
「思ってないよ。でも、誰もが認めてくれるとは限らない」
「言いたい奴らには、言わせておけばいい。ほら行くよ」
「ああ、うん」
 加納はブリーフケースを持つと、原の右腕を軽く引く。原も鞄を持つと後を追う。
「引っ越し、そろそろ考えてもいいんじゃないか?」
 玄関を出る前に、唇に加納の唇が触れる。
 軽くキスをして、玄関が開かれた。
「毎日、着替えを取りに行かなくてすむだろう」
「・・・考えておく」
 加納の後から部屋を出て、一緒に隣を歩く。
「今日は暑くなりそうだ」
「そうだね」
 春はあっという間に過ぎていく。
 肌寒い日と、夏のような日がやってくる。寒暖の差も大きいので、体調を崩しやすくなる。センターは自然に忙しくなる。
「仕事が終わったら、今日はどこに食べに行く?」
「前に一緒に行ったイタリアンのお店。ワインが少し飲みたいな」
「じゃあ、決まりな。今夜はイタリアンだ。今から夜が楽しみだな」
「そうだね」
 時々触れる指先が熱い。
「うん、そうだね。早く夜にならないかな」
 一瞬指が絡んで離れていく。
 隣を見上げると、加納がウインクしていた。
 小さな悪戯が成功したような顔だ。
 昔と変わらないハンサム顔に、原は綺麗な微笑みを返した。
 この時間が永遠に終わらなければいいと願いながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

ほたるのゆめ

ruki
BL
恋をすると世界が輝く。でもその輝きは身体を重ねるといつも消えてしまった。そんな蛍が好きになったのはオメガ嫌いのアルファ優人だった。発情したオメガとその香りを嫌悪する彼に嫌われないように、ひたすらオメガである事を匂わさないようにしてきた蛍は、告げることの出来ない思いに悩んでいた。 『さかなのみるゆめ』の蛍と(木佐)優人のお話です。時間軸的には『さかな・・・』のお話の直後ですが、本編主人公達はほとんど出てこないので、このお話だけでも楽しめるかと思います。けれど『さかな・・・』の方も読んで頂けると幸いです。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

亡国の王弟は女好きの騎士に溺愛される

コムギ
BL
アラバンド国の王弟ルカーシュは、騎士のシモンによって地下牢から救い出された。 その時、肌に触れたシモンに、やけどのような怪我を負わせてしまう。 ルカーシュは北の魔女の末裔であり、魔力を持っていた。 魔力を持たない者に触れると、怪我をさせてしまうという。 騎士団長からの命令で、シモンはルカーシュの護衛につくことになった。 ※他サイトにも掲載しています。

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

処理中です...