桜の奇跡 ~赤い糸の絆~

綾月百花   

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桜の奇跡  ~赤い糸の絆~

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 引っ越した翌日、加納からSDカードを渡された。
「警察に行こう」
 忘れてしまいたい写真のデーターだった。
 原は首を左右に振った。
「警察には届けない」
「俺に遠慮は必要ないよ」
「そういう問題じゃない」
 警察に届けるつもりはなかった。半分に割ろうとしたSDカードを加納は取り上げる。
「警察に届けないなら、俺にこれを預けてくれないか?」
「どうするつもり?」
「俺は母を信用してないんだ。これは母の弱みになる。晃平が持っているのが辛いなら、俺が保管する」
「澄人、僕は忘れてしまいたいんだ」
「母が何かしでかさない為の保険だよ」
「保険が必要なの?」
「恥ずかしい話だけど。母は昔から壊れてる」
「澄人がそう言うなら、預けるよ」
 加納は原の手を引くと、加納の書斎へと引っ張っていく。
 小指の先ほどのカードをケースに入れて、加納は引き出しを開けた。何も入っていない引き出しの中に、ケースに入れられたSDカードを入れて、鍵をかけた。
「鍵は晃平が持っていればいい」
「僕は澄人を信用してるよ」
「信用してるなら、持っていて」
「わかった」
 受け取った鍵は小さかったけれど、想いは大きかった。


 引っ越してから平穏な日々が続いている。
 加納の母親が乗り込んでくることもなかった。
 夜、魘されていると、加納が優しく抱きしめてくれる。
 眠るのがいつの間にか怖くなくなっていた。
 家賃と生活費は折半にすることにした。
 通帳の中に生活費を入金した時、ふたりの時間が再び動き出したような気がした。
 敬語で話すのをやめた。
 ベッドはふたりのベッドになった。
 空いていた一室は、原の書斎になり、本格的に引っ越しをした。
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