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第三章

8   ハルの旅

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 俺は慎重に旅をすることにした。

 酒屋は危険だと身をもって知ったばかりなので、働き口は慎重に探して食堂にした。

 日中の仕事だ。

 食べ物は支給される。

 女の子として雇ってもらい、丁寧に働いた。

「ずっとここで勤めていてもいいよ」と言ってくれる女将もいた。

 それでも、ある程度の金額が貯まると、旅に出た。

 最初の時は、馬で早駆けをしたので、それほど遠いと感じなかったが、今回の旅は時間もかかる。

 働いたお金で、針と糸とハサミを買い、古着を買って布きれにすると巾着を作り、財布を作った。それから着替えを入れる鞄を作った。

 余った布で髪飾りや袋を作り、食堂に置かせて貰った。

 僅かな賃金でもないより助かる。

 お金に困ったみなしごというストーリーを作って、それを演じた。

 すると、古着を譲ってくれる人が現れた。その姿では寒かろうと上着をくれる人も現れた。

「もう着られないものだからね。洋服もこちらになさいな。継ぎ接ぎだらけの服ではみっともないだろう」

 そう言って、小さくなった服を差し入れしてくれる。

 食べ物屋さんの女将さんや、お客さんは親切だった。

 最初に騙されたので、警戒したが警戒する理由を話すと、「可哀想に」と慰めてくれる。

「人は全てが悪者ではないから、少なくとも、今は善意でハルちゃんに、着てもらえたら嬉しいと思って声をかけているんだよ」

「ありがとうございます」

 人の善意は優しくて、最初の酒場で襲われて以来、俺は精神的に楽な気持ちで働いて、お金を貯めている。

「うちの息子の嫁にならないか?ハルちゃんなら、可愛いし、こんないい子は、そうそういないと思ってね」

 ありがたいお話ですけれど、どうやら私の体には、呪いがかかっているようなのです。

 その事は口が裂けても話す気持ちにならないので、違う理由でお断りした。

「どうして会わなければならない人がいるんです」

 そう言うと、大抵引き下がってくれた。

「遠い旅なのね?」

「ええ、とても」

「ここで少しでも旅賃を稼いで行きなさい」

 住み込みの上に食事も3食付いてくる。

 あまりに魅力的なので、時々、オブリガシオン様の事を忘れようと思ってしまうこともあった。

 けれど、呪われた体は元に戻して貰わなければ、この先生きて行く為にとても邪魔になると心に言い聞かせて、俺はひたすら働いた。

 オブリガシオン様の宮殿まで、頑張って歩いて行こうと決心した。

「どうか、呪いを解いて貰えますように」

 俺の最近の日課だ。

 神様がいるなら、どうか願いを叶えてください。

 前世の俺は被害者です。

 俺は地獄に落とされるほどの罪は犯していません。

 殺されましたが俺に非はありません。

 ちゃんと調べてください。



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