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第六章
2 赤ちゃんが産まれます
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☆
陣痛の間隔が10分を切ったので、やっと部屋に戻ったら、医師はやっとベッドに横になってもいいと言ってくれた。
ネグリジェに着替えて、陣痛の合間に、お茶をもらい、おれは喉を潤す。
ベッドには出産に備えて、整えられていた。
これから本番なんだと思うと、緊張する。
陣痛は強く、間隔も短くなって、長くなる。
おれは痛みで疲弊していた。
呼吸法も忘れて、「痛いよ、痛いよ」と泣き叫ぶ。
「チェリー、はあ、はあ、はあ……だろう?」
アスビラシオン様は落ちついていて、おれに呼吸法を思い出させてくれる。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
「間隔は5分を切っていますね」
カナル様が時計を見て、報告してくれる。
「まだ5分なの?」
これからもっと痛くなるのかと思うと、男のおれが、どうして?と想う気持ちと、男でありながら、貴重な体験ができるな……と真逆な感想を抱いている自分に出会った。
「チェリーは、ママになるんだよ」
アスビラシオン様は幸せそうに微笑む。
「おれがママ……うっ!」
また陣痛が来て、おれは呼吸法でなんとかしようと思うが、お腹がすごく痛くなる。
「ううううっ、痛い。生まれる」
おれは知らずに力んでいた。
「どれどれ?」
医師が、おれのあそこを覗き込んで、指を入れて診察する。
「ふむ。時間はどうだね?」
「2分を切っています」
カナル様が時間を正確に教えてくれる。
「力むときは、もっと長く力んでみなされ」
「分かった、うううっ」
おれはアスビラシオン様の手を握って、強く長く力んだ。
「はあ、はあ、はあ……」
目の前がチラチラする。
「今の調子だ。今度の陣痛で、しっかり力みなされ。もう頭が出かけているよ」
「ほんとかよ?うっ!」
激しいお腹の痛みに、おれは力一杯力んだ。
「頭が出てきた。殿下ご覧になりますか?」
「どんな美人だろうか?」
アスビラシオン様はおれの手を放して、赤ちゃんの様子を見に行ってしまった。
「次の陣痛で、しっかり産みなされ」
「うっ!」
おれは握る物がなくなって、シーツを握る。
「おぎゃおぎゃ」と産声が聞こえた。
「はあ、はあ、はあ……」
どうやら生まれたらしい。
「チェリー、可愛い男の子だ」
医師が取り上げた赤ちゃんを、おれの胸の上に抱かせてくれる。
小さいのに、ずっしりと重い。
これがおれとアスビラシオン様の赤ちゃんなのか?
赤ちゃんはアスビラシオン様と同じ黄金の髪をしていた。
頬を突くと、目を開けた。
瞳の色もアスビラシオン様と同じ黄金の色をしている。
おれはホッとした。
また陣痛のような痛みが来て、おれは力んだ。
「殿下、臍の緒を切りますか?」
「是非、切らせてもらいます」
アスビラシオン様は医師に教わりながら、赤ちゃんの臍の緒を切った。
「奥様、王子様をお預かりしますね」
モリーが来て、赤ちゃんを連れて行った。
赤ちゃんを産湯に付けるんだ。
モリーとメリーが準備していたのは知っていた。
「チェリー、よく頑張ったな。私達の子を産んでくれてありがとう」
「……シオン様」
ラウ様とカナル様は、騎士の敬礼をしている。
そうだよね。王子様が生まれたと言うことは、この子がこの国を継いで行くことになるんだね。
おれの下肢はランドが綺麗に拭いてくれて、産後の処置をされた。
汗で濡れたネグリジェは、真新しい物に替えられた。
胸のところが開くようになっている。
ちゃんと産後のブラジャーも付けられた。
妊娠してから、胸が張って大きくなったが、ちゃんと母乳が出るのだろうか?
肌着を着た赤ちゃんをモリーが連れてきて、おれに抱かせてくれる。
「初乳を与えてみなされ」
医師が、戸惑っているおれに指示を出す。
アスビラシオン様が、胸のボタンを外して、ブラジャーを下げた。
胸を出すと、赤ちゃんをずらして、乳首に赤ちゃんの口を持って行く。
「あつ……」
生まれたばかりなのに、乳を吸うことをちゃんと知っていることに驚いた。
チュチュチュと赤ちゃんは一生懸命に、乳を飲んでいる。
片方を吸われると、胸が張ってきて、もう片方の胸が濡れてくる。
ランドがタオルを持って来た。
赤ちゃんにとって初乳は免疫を上げるために必要な物だったよな。
前世の保健体育の時間に習った事があった。
「もう片方も飲んでみなさい」
アスビラシオン様は吸い付く、赤ちゃんを胸からはずと、おれの胸を隠してくれた。
もう片方の胸のボタンを外すと、赤ちゃんに乳首を吸わせる。
おれはちゃんと母乳が出るようだ。
健康な子に育って欲しいので、これは良かった事だろう。
赤ちゃんはしっかり飲むと、眠ってしまった。
アスビラシオン様が赤ちゃんを立てて抱くと、背中をさすった。
元気の良い、ゲップが出た。
モリーが迎えに来た。
「ベッドでお休みしていただきますね」
「ああ、頼む」
モリーとメリーは慣れているのか、赤ちゃんをベビーベッドに寝かせた。
ランドが、ブラジャーの中に、タオルを挟み込んでくれた。
そうだよね。母乳が出ちゃうから、濡れちゃうよね。
ドルフはおれに触れない。
ランドの旦那様だから、不用意に触れないようにしているのだろう。
おしもの世話は、ランドの役目らしい。
「ラウ、父上に知らせてきてくれ」
「はっ!」
ラウ様が初めて、アスビラシオン様の側から離れた。
勿論、ラウ様も夜には家に戻るので、四六時中一緒にいるわけではないけれど、とても珍しい。
この部屋にはカナル様もいるので、安心しているのだろう。
初乳を与えたおれは、力尽きて、眠ってしまった。
「疲れたな?ゆっくり休みなさい」
優しいアスビラシオン様の声に、おれは無意識で頷く。
陣痛の間隔が10分を切ったので、やっと部屋に戻ったら、医師はやっとベッドに横になってもいいと言ってくれた。
ネグリジェに着替えて、陣痛の合間に、お茶をもらい、おれは喉を潤す。
ベッドには出産に備えて、整えられていた。
これから本番なんだと思うと、緊張する。
陣痛は強く、間隔も短くなって、長くなる。
おれは痛みで疲弊していた。
呼吸法も忘れて、「痛いよ、痛いよ」と泣き叫ぶ。
「チェリー、はあ、はあ、はあ……だろう?」
アスビラシオン様は落ちついていて、おれに呼吸法を思い出させてくれる。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
「間隔は5分を切っていますね」
カナル様が時計を見て、報告してくれる。
「まだ5分なの?」
これからもっと痛くなるのかと思うと、男のおれが、どうして?と想う気持ちと、男でありながら、貴重な体験ができるな……と真逆な感想を抱いている自分に出会った。
「チェリーは、ママになるんだよ」
アスビラシオン様は幸せそうに微笑む。
「おれがママ……うっ!」
また陣痛が来て、おれは呼吸法でなんとかしようと思うが、お腹がすごく痛くなる。
「ううううっ、痛い。生まれる」
おれは知らずに力んでいた。
「どれどれ?」
医師が、おれのあそこを覗き込んで、指を入れて診察する。
「ふむ。時間はどうだね?」
「2分を切っています」
カナル様が時間を正確に教えてくれる。
「力むときは、もっと長く力んでみなされ」
「分かった、うううっ」
おれはアスビラシオン様の手を握って、強く長く力んだ。
「はあ、はあ、はあ……」
目の前がチラチラする。
「今の調子だ。今度の陣痛で、しっかり力みなされ。もう頭が出かけているよ」
「ほんとかよ?うっ!」
激しいお腹の痛みに、おれは力一杯力んだ。
「頭が出てきた。殿下ご覧になりますか?」
「どんな美人だろうか?」
アスビラシオン様はおれの手を放して、赤ちゃんの様子を見に行ってしまった。
「次の陣痛で、しっかり産みなされ」
「うっ!」
おれは握る物がなくなって、シーツを握る。
「おぎゃおぎゃ」と産声が聞こえた。
「はあ、はあ、はあ……」
どうやら生まれたらしい。
「チェリー、可愛い男の子だ」
医師が取り上げた赤ちゃんを、おれの胸の上に抱かせてくれる。
小さいのに、ずっしりと重い。
これがおれとアスビラシオン様の赤ちゃんなのか?
赤ちゃんはアスビラシオン様と同じ黄金の髪をしていた。
頬を突くと、目を開けた。
瞳の色もアスビラシオン様と同じ黄金の色をしている。
おれはホッとした。
また陣痛のような痛みが来て、おれは力んだ。
「殿下、臍の緒を切りますか?」
「是非、切らせてもらいます」
アスビラシオン様は医師に教わりながら、赤ちゃんの臍の緒を切った。
「奥様、王子様をお預かりしますね」
モリーが来て、赤ちゃんを連れて行った。
赤ちゃんを産湯に付けるんだ。
モリーとメリーが準備していたのは知っていた。
「チェリー、よく頑張ったな。私達の子を産んでくれてありがとう」
「……シオン様」
ラウ様とカナル様は、騎士の敬礼をしている。
そうだよね。王子様が生まれたと言うことは、この子がこの国を継いで行くことになるんだね。
おれの下肢はランドが綺麗に拭いてくれて、産後の処置をされた。
汗で濡れたネグリジェは、真新しい物に替えられた。
胸のところが開くようになっている。
ちゃんと産後のブラジャーも付けられた。
妊娠してから、胸が張って大きくなったが、ちゃんと母乳が出るのだろうか?
肌着を着た赤ちゃんをモリーが連れてきて、おれに抱かせてくれる。
「初乳を与えてみなされ」
医師が、戸惑っているおれに指示を出す。
アスビラシオン様が、胸のボタンを外して、ブラジャーを下げた。
胸を出すと、赤ちゃんをずらして、乳首に赤ちゃんの口を持って行く。
「あつ……」
生まれたばかりなのに、乳を吸うことをちゃんと知っていることに驚いた。
チュチュチュと赤ちゃんは一生懸命に、乳を飲んでいる。
片方を吸われると、胸が張ってきて、もう片方の胸が濡れてくる。
ランドがタオルを持って来た。
赤ちゃんにとって初乳は免疫を上げるために必要な物だったよな。
前世の保健体育の時間に習った事があった。
「もう片方も飲んでみなさい」
アスビラシオン様は吸い付く、赤ちゃんを胸からはずと、おれの胸を隠してくれた。
もう片方の胸のボタンを外すと、赤ちゃんに乳首を吸わせる。
おれはちゃんと母乳が出るようだ。
健康な子に育って欲しいので、これは良かった事だろう。
赤ちゃんはしっかり飲むと、眠ってしまった。
アスビラシオン様が赤ちゃんを立てて抱くと、背中をさすった。
元気の良い、ゲップが出た。
モリーが迎えに来た。
「ベッドでお休みしていただきますね」
「ああ、頼む」
モリーとメリーは慣れているのか、赤ちゃんをベビーベッドに寝かせた。
ランドが、ブラジャーの中に、タオルを挟み込んでくれた。
そうだよね。母乳が出ちゃうから、濡れちゃうよね。
ドルフはおれに触れない。
ランドの旦那様だから、不用意に触れないようにしているのだろう。
おしもの世話は、ランドの役目らしい。
「ラウ、父上に知らせてきてくれ」
「はっ!」
ラウ様が初めて、アスビラシオン様の側から離れた。
勿論、ラウ様も夜には家に戻るので、四六時中一緒にいるわけではないけれど、とても珍しい。
この部屋にはカナル様もいるので、安心しているのだろう。
初乳を与えたおれは、力尽きて、眠ってしまった。
「疲れたな?ゆっくり休みなさい」
優しいアスビラシオン様の声に、おれは無意識で頷く。
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