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第24話:ベッドで寝転んで悩むあたし
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ゴブリン退治も終わり、宿屋に帰るあたしたちのパーティー。
「しかし、ケイティは凄いなあ」
「ありがとうございます」
ボリスに褒められて、頭を撫でられてすごく嬉しそうなケイティ。
相当、ボリスのことを慕っているようね。
ケンとカイもやたらケイティのことを褒めているが、あんたら褒めている場合かとあたしは思った。けど、あたしもまたいつ調子が悪くなるかわからないので黙っていようっと。
そうよ、部下を叱るのはリーダーのボリスのお仕事よ。
その後、あたしはボリスと一緒に冒険者ギルドに行く。
そして、ボリスがギルドの主人に文句を言っている。
「おい、ゴブリン五匹って話だったのに、五十匹以上は出たぞ」
「うーん、そうですか。畑を襲ってくるのは五匹って聞いてたんですけどねえ」
つまり、あの大勢のゴブリンたちは畑を襲っていたゴブリンとは違う集団だったのかしら。
よくわからんなあ。
けどまあ、ほぼ全滅させたからいいかな。
そして、明日の仕事の依頼。
オーガの退治。
オーガとは、一本の角を生やした背の高いモンスターだ。
場所は、宿屋から四十分くらい歩いたキノカ山。
そこに小さい洞窟があって、オーガが現れたらしい。
但し、一匹。
なぜか、そのしょぼい仕事に興味を持つボリス。
「ボリス、ちょっとしょぼくない、この仕事」
「まあ、今日のケンとカイの働きぶりを見ると不安になってなあ」
確かになあ。
ゴブリン一匹も倒せなかったもんなあ。
けど、ボリスも張り切っていたわりには、ケイティからの情報を軽視していたけど。
なんだか、このパーティー、気が抜けている感じがする。
けど、一番、気が抜けているのはあたしかもしれないけど。
失恋よ、失恋。
しかも勝手に同性愛の人に恋して、勝手に幻滅しているし。
ああ、考えないようにしよう。
それからもうひとつ気になったこと。
「あと、ローラなんだけど、剣士としての腕前は、ひょっとしたらケンより全然上じゃないの」
「そうなんだよなあ。けど、回復役で雇ったからなあ」
「どうするの、このパーティーの体制でいくの」
「まあ、今回はオーガ一匹だから、大丈夫だろう。心配ないよ」
どうも、ボリスの様子がおかしいなあとあたしは思った。
張り切っているけど、なんて言うか、このパーティーについてはどうでもよくなっている感じ。
何でかしら。
ボリスの考えがよくわからないな。
さて、五十匹もゴブリンを退治したけど、あっさりと午前中で仕事は終わらせてしまった。
昼食後は、各自部屋でゆっくりとすることにした。
ボリスは村の鍛冶屋に斧を研いでもらうために外出。
ケンとカイは仲良く湖周辺を散歩。
また、どっかでやってんのかしら。
ローラは自室で、回復魔法のお勉強。
そして、あたしは宿屋のベッドで寝転ぶ。
何もする気ないぞ。
不機嫌なあたし。
そんなあたしに少しおどおどしながら声をかけるケイティ。
「あの、ローラさん、ちょっと村役場へ行ってよろしいでしょうか」
「いいけど、何しにいくの」
「明日の仕事先のキノカ山について調べようと思って」
「ああ、いいわよ」
「では、夕方までには帰ります」
真面目ねえ、ケイティちゃんは。
情報収集の仕事をちゃんとしているわ。
あたしは昼寝。
昼寝って気持ちがいいわよね。
気持ちがいいから、ぐっすりと寝る。
気が付くと、夕方近い。
扉がノックされた。
イテテ。
起き上がろうとしたら、ひじが痛い。
まだ痛いわね。
しかし、痛い方が、何匹もゴブリンを倒せて、調子が良かったな。
けど、このまま痛いってのもまずいわね。
まあ、いずれは治るかしら。
ローラさん、回復魔法がいまいちなんだよなあ。
やっぱり剣士として活躍してもらったほうがいいんじゃないかしら。
さて、誰が来たのかとあたしが扉を開くと、かわいらしい男の子が立っていた。
ケイティと同い年くらいかしら。
「あの、この部屋にケイティさんが宿泊していると聞いたのですが」
「ええ、そうですけど、あなたはどちら様」
「サムと言います。ケイティさんに本を持ってきたんですけど」
サム?
あれ、聞いた覚えあるなあ。
すると、廊下を走って来る足音が聞こえてきた。
ケイティが嬉しそうに走ってきた。
「こんにちは、サム」
「やあ、ケイティ」
二人とも見つめ合ってニコニコ顔。
「ケイティ、このサム君とはどこで知り合ったの」
「村役場の本の貸し出しコーナーで会ったんです。ほら、ドラゴンタートルを目撃した男の子がいるって言ったことがあるじゃないですか、その子です」
ああ、村の男の子のサム君ね。
確か、サノゲ池でドラゴンタートルを見かけたとか言ってた子ね。
「今日はケイティが読みたがっていた本を持ってきたんです。家の蔵書から見つけてきました」
「あら、どんな本かしら」
「この村の伝説とかまとめた本ですね」
「わあ、サム、ありがとう」
もう嬉しくて仕方がないって感じのケイティちゃん。
「じゃあね、ケイティ。今日はもう遅いから帰るよ」
「本当にありがとう、サム」
ケイティは同世代のお友達が出来て嬉しそうだわ。
「あの子、金持ちなのかなあ、蔵書とか言ってたけど」
「村の地主さんの息子さんらしいです」
「へー、読書が趣味なの、何才なの」
「十三才で、私と同い年です」
ああ、なんか、かわいいわね。
読書の趣味を持った十三才同士。
私も同じ趣味を持った男性とお付き合いを……。
あれ、私の趣味って何だっけ。
あれ、ないぞ。
弓矢?
いや、それは仕事じゃないの。
裁縫?
いや、それは生活のためよ、破れた冒険服を縫うときのためとか。
無趣味女って、今さら気づいてしまった。
こんなんだから、恋愛とはほど遠い生活を送ってしまったのだろうか。
再び、ベッドに寝転んで悩むあたし。
何か新しい趣味でも見つけようかしら。
そこで共通の趣味を持った人と出会うの。
恋に落ちるのよ。
けど、何をすればいいのかしら。
全然、思いつかない。
こんなつまらない女だから、恋愛と縁が無かったのだろうか。
やれやれ。
隣のベッドではニコニコ顔で本を読んでいるケイティ。
「ねえ、ケイティ、ところでなんでそんな本を借りたの」
「ドラゴンタートルの時みたいに、この村に出てくるモンスターについて書いてあるのではと思ったんです。最近、フェンリルとか、後、何でしたっけ、マリアさんが矢で打ち落とした変な鳥は」
「えーと、アムフィシーンね。覚えにくい名前のモンスターね」
「そうです、アムフィシーンです。この村って、スライムとゴブリン、後はオークくらいしか出ないって話を以前冒険者ギルドの主人が言ってましたよ。何でこんな田舎の村を飛んでいたんでしょう」
「さあ、わからないわ」
それにしても、ケイティは勉強熱心ね。
さすが将来の大物。
ただ、羨ましくもあった。
あたしの十三才って、男の子と話したっけ。
思い出せないぞ。
女の子の友人はいたけど。
ああ、時間は戻せないわ。
せめて男の子と手をつなぐとか、それくらいの思い出でもつくっておけばよかったわ。
そして、この四年間くらいは冒険者として仕事ばかり。
しかも、失敗ばかり。
恋愛も全く無し。
情けない。
いや、まだ十九才よ。
頑張るぞ、仕事にも恋愛にも。
仕事はともかく、恋愛の方はさっぱりだけどさあ。
さて、夜。
いつものようにケイティがいびきをかいている。
今夜はいつもよりうるさい。
なぜかしら。
とにかく鼻をつまむ。
さて、何だか習慣になってしまった湖の観察。
覗きじゃないわよ、けど、気になってしまう。
窓から見ると、今夜はボートは浮いてないわね。
さて、寝るかと思ったら、何やら熊みたいな動物が泳いでいる。
熊って泳げたかしら。
まあ、夏なんで暑いから水の中に入りたくなったのかしらね、熊さんも。
まあ、どうでもいいや。
寝る。
「しかし、ケイティは凄いなあ」
「ありがとうございます」
ボリスに褒められて、頭を撫でられてすごく嬉しそうなケイティ。
相当、ボリスのことを慕っているようね。
ケンとカイもやたらケイティのことを褒めているが、あんたら褒めている場合かとあたしは思った。けど、あたしもまたいつ調子が悪くなるかわからないので黙っていようっと。
そうよ、部下を叱るのはリーダーのボリスのお仕事よ。
その後、あたしはボリスと一緒に冒険者ギルドに行く。
そして、ボリスがギルドの主人に文句を言っている。
「おい、ゴブリン五匹って話だったのに、五十匹以上は出たぞ」
「うーん、そうですか。畑を襲ってくるのは五匹って聞いてたんですけどねえ」
つまり、あの大勢のゴブリンたちは畑を襲っていたゴブリンとは違う集団だったのかしら。
よくわからんなあ。
けどまあ、ほぼ全滅させたからいいかな。
そして、明日の仕事の依頼。
オーガの退治。
オーガとは、一本の角を生やした背の高いモンスターだ。
場所は、宿屋から四十分くらい歩いたキノカ山。
そこに小さい洞窟があって、オーガが現れたらしい。
但し、一匹。
なぜか、そのしょぼい仕事に興味を持つボリス。
「ボリス、ちょっとしょぼくない、この仕事」
「まあ、今日のケンとカイの働きぶりを見ると不安になってなあ」
確かになあ。
ゴブリン一匹も倒せなかったもんなあ。
けど、ボリスも張り切っていたわりには、ケイティからの情報を軽視していたけど。
なんだか、このパーティー、気が抜けている感じがする。
けど、一番、気が抜けているのはあたしかもしれないけど。
失恋よ、失恋。
しかも勝手に同性愛の人に恋して、勝手に幻滅しているし。
ああ、考えないようにしよう。
それからもうひとつ気になったこと。
「あと、ローラなんだけど、剣士としての腕前は、ひょっとしたらケンより全然上じゃないの」
「そうなんだよなあ。けど、回復役で雇ったからなあ」
「どうするの、このパーティーの体制でいくの」
「まあ、今回はオーガ一匹だから、大丈夫だろう。心配ないよ」
どうも、ボリスの様子がおかしいなあとあたしは思った。
張り切っているけど、なんて言うか、このパーティーについてはどうでもよくなっている感じ。
何でかしら。
ボリスの考えがよくわからないな。
さて、五十匹もゴブリンを退治したけど、あっさりと午前中で仕事は終わらせてしまった。
昼食後は、各自部屋でゆっくりとすることにした。
ボリスは村の鍛冶屋に斧を研いでもらうために外出。
ケンとカイは仲良く湖周辺を散歩。
また、どっかでやってんのかしら。
ローラは自室で、回復魔法のお勉強。
そして、あたしは宿屋のベッドで寝転ぶ。
何もする気ないぞ。
不機嫌なあたし。
そんなあたしに少しおどおどしながら声をかけるケイティ。
「あの、ローラさん、ちょっと村役場へ行ってよろしいでしょうか」
「いいけど、何しにいくの」
「明日の仕事先のキノカ山について調べようと思って」
「ああ、いいわよ」
「では、夕方までには帰ります」
真面目ねえ、ケイティちゃんは。
情報収集の仕事をちゃんとしているわ。
あたしは昼寝。
昼寝って気持ちがいいわよね。
気持ちがいいから、ぐっすりと寝る。
気が付くと、夕方近い。
扉がノックされた。
イテテ。
起き上がろうとしたら、ひじが痛い。
まだ痛いわね。
しかし、痛い方が、何匹もゴブリンを倒せて、調子が良かったな。
けど、このまま痛いってのもまずいわね。
まあ、いずれは治るかしら。
ローラさん、回復魔法がいまいちなんだよなあ。
やっぱり剣士として活躍してもらったほうがいいんじゃないかしら。
さて、誰が来たのかとあたしが扉を開くと、かわいらしい男の子が立っていた。
ケイティと同い年くらいかしら。
「あの、この部屋にケイティさんが宿泊していると聞いたのですが」
「ええ、そうですけど、あなたはどちら様」
「サムと言います。ケイティさんに本を持ってきたんですけど」
サム?
あれ、聞いた覚えあるなあ。
すると、廊下を走って来る足音が聞こえてきた。
ケイティが嬉しそうに走ってきた。
「こんにちは、サム」
「やあ、ケイティ」
二人とも見つめ合ってニコニコ顔。
「ケイティ、このサム君とはどこで知り合ったの」
「村役場の本の貸し出しコーナーで会ったんです。ほら、ドラゴンタートルを目撃した男の子がいるって言ったことがあるじゃないですか、その子です」
ああ、村の男の子のサム君ね。
確か、サノゲ池でドラゴンタートルを見かけたとか言ってた子ね。
「今日はケイティが読みたがっていた本を持ってきたんです。家の蔵書から見つけてきました」
「あら、どんな本かしら」
「この村の伝説とかまとめた本ですね」
「わあ、サム、ありがとう」
もう嬉しくて仕方がないって感じのケイティちゃん。
「じゃあね、ケイティ。今日はもう遅いから帰るよ」
「本当にありがとう、サム」
ケイティは同世代のお友達が出来て嬉しそうだわ。
「あの子、金持ちなのかなあ、蔵書とか言ってたけど」
「村の地主さんの息子さんらしいです」
「へー、読書が趣味なの、何才なの」
「十三才で、私と同い年です」
ああ、なんか、かわいいわね。
読書の趣味を持った十三才同士。
私も同じ趣味を持った男性とお付き合いを……。
あれ、私の趣味って何だっけ。
あれ、ないぞ。
弓矢?
いや、それは仕事じゃないの。
裁縫?
いや、それは生活のためよ、破れた冒険服を縫うときのためとか。
無趣味女って、今さら気づいてしまった。
こんなんだから、恋愛とはほど遠い生活を送ってしまったのだろうか。
再び、ベッドに寝転んで悩むあたし。
何か新しい趣味でも見つけようかしら。
そこで共通の趣味を持った人と出会うの。
恋に落ちるのよ。
けど、何をすればいいのかしら。
全然、思いつかない。
こんなつまらない女だから、恋愛と縁が無かったのだろうか。
やれやれ。
隣のベッドではニコニコ顔で本を読んでいるケイティ。
「ねえ、ケイティ、ところでなんでそんな本を借りたの」
「ドラゴンタートルの時みたいに、この村に出てくるモンスターについて書いてあるのではと思ったんです。最近、フェンリルとか、後、何でしたっけ、マリアさんが矢で打ち落とした変な鳥は」
「えーと、アムフィシーンね。覚えにくい名前のモンスターね」
「そうです、アムフィシーンです。この村って、スライムとゴブリン、後はオークくらいしか出ないって話を以前冒険者ギルドの主人が言ってましたよ。何でこんな田舎の村を飛んでいたんでしょう」
「さあ、わからないわ」
それにしても、ケイティは勉強熱心ね。
さすが将来の大物。
ただ、羨ましくもあった。
あたしの十三才って、男の子と話したっけ。
思い出せないぞ。
女の子の友人はいたけど。
ああ、時間は戻せないわ。
せめて男の子と手をつなぐとか、それくらいの思い出でもつくっておけばよかったわ。
そして、この四年間くらいは冒険者として仕事ばかり。
しかも、失敗ばかり。
恋愛も全く無し。
情けない。
いや、まだ十九才よ。
頑張るぞ、仕事にも恋愛にも。
仕事はともかく、恋愛の方はさっぱりだけどさあ。
さて、夜。
いつものようにケイティがいびきをかいている。
今夜はいつもよりうるさい。
なぜかしら。
とにかく鼻をつまむ。
さて、何だか習慣になってしまった湖の観察。
覗きじゃないわよ、けど、気になってしまう。
窓から見ると、今夜はボートは浮いてないわね。
さて、寝るかと思ったら、何やら熊みたいな動物が泳いでいる。
熊って泳げたかしら。
まあ、夏なんで暑いから水の中に入りたくなったのかしらね、熊さんも。
まあ、どうでもいいや。
寝る。
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