鋼鉄の処女マリアの冒険

守 秀斗

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第25話:オーガ退治に洞窟に行ったらコボルトの集団に襲われる

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 さて、今日のお仕事は宿屋から四十分くらい歩いたキノカ山。

 小さい洞窟があって、その洞窟の奥の方に広い空間があって、そこにオーガが現れたらしい。
 但し、一匹。

 例によって、やる気の無いケンとカイ。

 カイがボリスに文句を言っている。

「昨日、五十匹もゴブリンを倒したんだから、それでけっこう儲けたし、どっか遊びに行きませんか」
「昨日、ゴブリン五十匹倒せても、明日からはスライム一匹も倒せない状況が続くかもしれないぞ。とにかく仕事は続ける、継続は力なりだ。しっかりしろ! いつまでもあると思うな親と金とモンスター退治だぞ」

 そう言って、カイを叱りつけるボリス。
 しかし、そのボリスがどうもそわそわしている感じなんだなあ。

 何を気にしているんだろう。

 まあ、オーガはけっこう大きいけど、ボリスの巨大斧で一発で倒して終わりじゃないの。
 あたしもあまりやる気が無い。

 あら、ケイティが腰にまた珍しいナイフを差している。
 
「なに、そのナイフ」
「ナイフの端が留め金になっていて、柄に長いワイヤーが入っているんです。留め金を持っていれば投げても、ワイヤーを引っ張れば戻ってきます」

「それも例の元冒険者のお爺さんがくれたの」
「そうですね」
 
 この娘、本当にいろんな面白い武器を持ってるなあ。

 そして、だらだらと歩いて、四十分。
 キノカ山に到着。

 ケイティがボリスに報告している。
 
「この山はかなり昔に鉱山だったらしいです」
「そうなんだ。けど、今はもう閉山したんだろ。それにこの洞窟とは違う場所だろ」

「そうですが、けど、コボルトというモンスターは鉱山とかでよく現れるって聞きましたけど」
「閉山したとこには出ないだろう」

「後、村役場の方に聞いたのですが、一番奥の広い空間なんですが、全体の壁が崩れそうみたいですよ」
「そうなんだ、まあ、大丈夫じゃないの。じゃあ、洞窟に入るぞ」

 ケンがやや後方から携帯ランプで前方を照らしつつ、ボリスを先頭に洞窟に入っていく。

 カイがあたしにささやいた。

「オーガ一匹じゃ、やる気出ないな。ボリスももっといい仕事を取ってくればいいのに」

 あんたやケンがだらしないから、こんなしょうもない仕事しか取れなかったってのがわかってないようだなあ、カイは。
 まあ、あたしもやる気ないけどさ。

 さっさと終わらせて、あたしは宿屋で何か新しい趣味でも見つけようと考えるつもりよ。

 洞窟の中をボリス、ケンを先頭に、中央にケイティ、そして、後方にあたしとローラとカイ。
 この洞窟も何の変哲もない場所ね。
 別に迷路にもなってない、一本道。

 一応、警戒しながら進んでいくが、何も出る気配もない。
 さて、オーガ一匹が目撃された広い場所に出た。

 天井を見ると、中央にわりと大きい穴が開いている。
 おかげで薄暗いが、携帯ランプ無しでも何とか内部が見える。

「うーん、単なる広い場所って感じのところだなあ。何もないぞ」

 なぜか、がっかりしているボリス。
 
 この場所、広いドーム状になっているわね

 ここが行き止まりらしい。
 けど、何にもいない。

 ケンがボリスに言っている。

「もうオーガはどっか別の場所に移動したんじゃないですか」
「うーん、そうかもしれないなあ」

 すると、ケイティが指差した。

「あそこに人が、いやモンスターっぽいのが倒れてますよ」

 近づくと、巨体のオーガが倒れていた。
 死んでいる。

 身体中を殴られた痕があった。
 それを見てケンが言った。

「先に他の冒険者パーティーが倒したんですかねえ」
「いや、そんな話は冒険者ギルドでは聞いてないし、この傷跡はこん棒か何かでぶん殴られた痕だぞ」

 こん棒で殴られたか。
 そういや、さっきケイティが言ってたコボルト。

 犬の顔した獣人だけど、確か武器はこん棒だったわね。
 小柄な雑魚なんだけど、この巨体のオーガをコボルトがやっつけたということは、あれ、やばくないかしら。

「ねえ、ボリス、コボルトじゃないの、このオーガを倒したのは。それにこの巨体のオーガを倒したってことはかなり大勢でいるんじゃないの」
「うむ、そうかもしれない」

 みんなで辺りを見回すと、あれ、小さい影が動くのが見えた。
 奥の方に小さい穴があって、あれ、どんどんその影がいっぱい出てきたぞ。

「あれはコボルトだな」
 
 ボリスが身構える。

 しかし、ケンがまたやる気なくあたしに向かって言った。
 
「コボルトなんて大した事ないんじゃない」
「何言ってんのよ、あの巨体のオーガを倒したのがコボルトだったら、つまり大勢いるってことじゃない」
「それでもコボルトなんて、弱いだろ」

 コボルトより弱いゴブリンに苦戦していたのは誰じゃとあたしが思っていたら、続々と穴から出てきた。おまけに、あたしたちがこの広間に入ってきた場所からもやって来た犬の顔をした獣人たち。

 おいおい、百匹はいるぞ。
 いきなり特攻してきたコボルトが一匹、こん棒でケンの頭を殴った。
 
 そのまま昏倒するケン
 やばい。

「ローラ、ケンを回復して」
「はい、わかりました」

 ケンの頭を抱えるローラ。
 光を頭に当てているが、どうもケンが動かない。

 まずいじゃん。

 あたしは弓矢を構える。
 コボルトはこん棒で殴りかかって来るが、飛び道具はもっていないので、弓矢は有効ね。

 おお、ケンをぶん殴ったコボルトに当たった。
 そして、次々と矢を射っては、命中させるあたし。
 なんか調子がいいわ。

 ボリスもデカい斧で二、三匹まとめて吹っ飛ばしている。

 カイは外してばかり。
 もう、なにやってんのよ。

 けど、敵が多すぎる。
 中央に追い詰められた。

 すると、ケイティが叫ぶ。

「みなさん、伏せて!」

 なんか知らんが咄嗟に伏せるあたしらのパーティー。
 ケイティがナイフを投げる。

 あれ、さっき腰に差していた変なナイフじゃない。
 そして、それをぐるっと回転させて、周りの岩盤に当てた。
 円周状に岩盤に傷が付く。

 何をしてるんだと思ったら、あら、周りの岩が崩れてきた。
 あっという間にコボルトたちが下敷きになった。

 中央にいたあたしたちは無事。
 ケイティちゃん凄すぎる。

 コボルトたちはほぼ全滅。
 一部は逃げて行った。

「いやあ、またケイティに助けられてしまったなあ。こりゃ、本当にケイティがリーダーをやったほうがいいんじゃないか、ガハハ」

 ケイティの頭を撫でながら、豪快に笑うボリス。
 けど、あたしはちょっと不満だった。

「あの、ボリスさあ、どうやらケイティは村役場へ行って、この奥の空間の岩盤は弱くなっているって聞いたらしいけど、下手すりゃ、あたしたちも巻き込まれて死んでたんじゃないの。ケイティがリーダーとか褒めてる場合じゃないでしょ」
「おいおい、ケイティがいなけりゃ、俺たち全滅してたかもしれんぞ」
「そうじゃなくて、その事を聞いておきながら、あんまり何にも考えずに、洞窟に入っていったじゃないの、リーダーとしてまずくないの」

 まあ、あたしも人のこと言えないけどね。
 ドラゴンタートルの時なんて、破れかぶれの特攻攻撃みたいなもんだったし。

「まあまあ、とにかくコボルトたちは追い払ったんでいいじゃないか、万事解決と、ガハハ!」

 豪快に笑っているボリスに、ローラが訴えた。

「あの、すみません、ケンの調子が悪いんですが」

 そうよ、思い出したわ、コボルトにこん棒で頭をぶん殴られたじゃないの、ケンは。

「ケンの具合はどうなんだ」
「だいぶ調子が悪そうです、意識が戻らないんです」
「ちょっと、俺にまかせろ」

 今度はボリスがケンに回復魔法をかける。
 やっと気が付いたケン。

「大丈夫か、ケン」
「……いや、かなり痛いです」
「うーん、一応治癒はしたんだけどな」

 すると、ローラがケンの顔を見てすまなそうな顔をした。

「あの、私の治癒魔法がヘタクソだったから、かえってケンはひどくなったんでしょうか……」 
「あ、いや、君のせいじゃないよ、俺が油断したからだ」

 とにかく、ケンはカイがおぶって、ローラと一緒に宿屋に戻ることにした。

 残ったあたしらは、コボルトの死骸を数えた。
 ちなみにオーガはあたしらが倒したわけではないので、対象外。

 あたしが倒したのが五匹、ボリスが十五匹、残りのケイティ六十匹、カイはまたゼロ。

「ねえ、ボリス、カイにもうちょっと弓矢の練習するよう言ったら。あたしには言われたくないだろうから」
「うーん、まあ、調子悪い時もあるんじゃないのか、運も悪い時もあるしな。ケンが倒れて動揺したのもあるだろう、まあ、それとなく言っておくよ」

「ちょっと、ボリス、どうしたのよ。それとなくじゃあ、まずいんじゃないの」
「そうだなあ、じゃあ、次の休日にカイに練習させるかなあ、じゃあ、帰るぞ、ケイティ」
「はい、ボリスさん」

 ケイティはいつものようにニコニコ顔でボリスの後をついていく。

 いいのかなあ。

 どうも、あたしはボリスのやる気の無さが気になってしまった。
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