氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

253 (アレクシス視点)

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 アレクシスの呟きは、リラに対し、尊敬や感心と言った好意的な物だ。

 何故なら、エドワルドだけで無く、悪意や敵意に敏感なアナスタシアを陥落し、大好きだとまで言わせたのだから。

 ディーランで親しい同性を作る事無く、一定の距離を保っていたアナスタシアがアレクシスに、エドワルドが選んだリラは、絶対に逃してはいけないと力説し、エドワルドには、あれ程の逸材をよく見付けて来れましたね、さすがです!と目を輝かしながら褒めていたのだ。

 アナスタシア曰く、リラは、天然無垢の癒しで、愛でる為の最強な可愛さを持つとても可愛い生き物なのだそうで、あのアナスタシアにそこまで好意を持たせる事の出来たリラに、称賛しか浮かばなかったのだ。

 アナスタシアは見掛けこそポヤポヤした感じだが、警戒心は人一倍強く、好みがはっきりしているタイプだ。

 その為、ディーランの女性達は似たり寄ったりで、鬱陶しいとまで言っていた程なのだ。

 そんなアナスタシアをあそこまでなつかせる女性等、ディーランには居ないと思われる。

 アナスタシアは、今まで気の許せるディーラン貴族の上位女性が一人も居なかった為、アレクシスとしても心配だったのだ。

 アナスタシアには気を抜く時間が殆ど無い。有るとすれば、アレクシスと二人でいる時ぐらいだ。

 アナスタシアには逃げ場が無い。今まで喧嘩をした事は無いが、してもアナスタシアが逃げ込める場所は王妃の部屋しか無く、愚痴を言える同性の友人も居ない。

 そんな状況下が嫌になり、実家に帰りたがったらどうしようと思う時が、たまに有る。

 実家がディーラン国内なら未だしも、アナスタシアは海を渡った先に有る遠い国の王女だ。

 二人で訪れるなら未だしも、アナスタシアだけで行かせる等論外で、アナスタシアの心の拠り所がディーランに無いのは問題だと思っていたのだ。

 せめて親しい同性の一人ぐらい作ってくれれば、避難させる事も、そこに息抜きさせに行かせる事も出来るのにと。

 アナスタシアはアレクシスに不満は無いと言うが、アレクシスがドレファンに行った時のように、不在中に何か起きてからでは遅いのだ。

 ジーンが王宮に残るから、大事は無いと信頼していたが、実際に手を出そうとした馬鹿がいたと聞いて、八つ裂きにしてやりたいと思った程だ。

 そんな中、アナスタシアがリラに気を許している姿を見て、アレクシスは驚いた。

 エドワルドだけでなく、アナまで手懐けている?!と。

 アレクシスにとって義妹になる予定のリラが拠り所になるなら、心配事は大いに減る。

 アレクシスにとって、リラは弟の心の拠り所だけで無く、アナスタシアの心の拠り所にすらなった、有り難い存在で、逃がしてはならない貴重な人材と認識されていたのだった。
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