氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

本編

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　レベッカは、物の見事に15分でリラを完璧に仕上げた。

　見ているエドワルドでも凄いと思う程のスピードで。

　本来ならば、女性の着飾る過程を男性に見せるのはタブーだ。

　しかし、ここはエドワルドの部屋であり、レベッカとしても時間は惜しい。


「別に見ていても構いませんが、邪魔はしないで下さいね」


　レベッカはそう言って、リラのドレスを整え、髪もメイクも朝と同じ状態へと仕上げたのだ。


「凄い手腕だな」

「リラお嬢様は厚塗りせずに済むので、メイクにそれ程の時間が掛からずに済むんです」

「厚塗りは、似合わないそうです。少しは変わるかと思い、一度だけして貰ったのですが、止めた方が良いと皆に言われてしまいました……」


　リラは自身を極々普通の平凡以下だと勘違いしたままだが、スッピンだろうとメイク後よりも若干幼く見えるが、美人で有る事に間違いは無い。

　そんなリラに厚塗りする事自体、無意味だろう。


「私は素顔のリラも好きだから、薄化粧で充分だと思うよ。エヴァンス家の皆もそう思ったのでは無いかな？」

「そうです！リラお嬢様に厚塗りなんて、絶対に似合いません!!長年お仕えしている私が言うのですから間違い有りません！」


　力説するレベッカに、リラはしょんぼりしているが、レベッカは譲らない。別人にする為の変装なら未だしも、そうでないのに厚塗りなんて、勿体無くて出来る筈が無いと思っているのだ。


「それはそうと、そろそろ食堂に行かないと、ダンが来て、扉を蹴破ってしまうよ」


　そう言ってエドワルドは話題を変えて、リラを部屋から連れ出し一階に向かうと、階段下で、クルルフォーン家の使用人達と、エヴァンス家の使用人達が、エドワルドとリラが来るのを並んで待っていた。


「ここにいるのは、現在クルルフォーン邸に勤めている使用人達です。一同、エドワルド様の婚約者であるエヴァンス令嬢に一目お目通りをと思い、集まった次第です。この先、どうぞ宜しくお願い致します」

「｢｢｢宜しくお願い致します｣｣｣」


　ランドールの言葉の後に、使用人達が声を揃えて一斉に頭を下げる。

　リラはそれを見て、さすがはエドワルドの使用人達だと思った。


「有難う御座います。わたくしの方こそ、この先、どうぞ宜しくお願い致しますわ」


　リラは完璧なお辞儀をして見せると、エドワルドはリラの横に寄り添い、一人一人の名前と役割を紹介し、リラはそれを覚えていく。


「彼女を連れて来れた祝いに、男性使用人棟にある食堂で、祝い事の食事と酒を用意して貰った。各々食事を楽しんでくれ」


　エドワルドの言葉に、使用人達は喜ぶ。

　それから食堂に向かい、食堂では料理長と挨拶をして、クルルフォーン邸での晩餐を楽しんだ。