氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

330

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 その夜は、エヴァンス令嬢として最後の夜を迎え、家族や使用人達に、今までお世話になった事や、感謝の言葉を述べ、今までの人生を振り返る。

 本当にこの家族の娘として産まれて来て良かったと、平凡で、大した取り柄もない自分に溢れる程の愛情を注ぎ込んでくれて、感謝しかないと思っているリラに、家族は、嫁いでも家族でいる事に変わりは無い。姓が変わろうとも、自分達にはエドワルドと言う家族が増えただけで、離れて暮らしていても、頼ってきて良いし、甘えても良いのだと言ってくれる。

 そんな家族が大好きで、思わず泣いてしまい、みっともない顔を晒していると言うのに、誰も文句を言わずに、ただ抱き締めてくれた。

 リラにとっては最高の宝物で、最高の家族だ。

 明日は準備に時間が掛かるのだから、早めに寝なさいと言われてベッドに潜り込むも、緊張と不安で中々寝付けないでいると、寝室に、ジーンとレベッカが現れる。


「ジーン兄様……」

「大丈夫。式はちゃんと予定通りに進むし、書き仕損じたりしないから。リラは正々堂々エドワルド殿の隣に立って、エドワルド殿を夫にすれば良いんだから。リラだって、エドワルド殿と夫婦になりたいのだろう?なら、大丈夫。喩え失敗したって、エドワルド殿がフォローしてくれるよ」


 ジーンはリラの頭を優しく撫でて、額にお休みのキスを贈り、レベッカは、安眠出来るようにと良い匂いのするポプリをリラの枕元に置く。


「あたしやダンさん、双子達も一緒に嫁ぎ先に行くんですから、何の心配も要りませんよ。それに、他の侍女達だって、交代制で行くんです。会おうと思えば、いつだって皆様と会えるんですから、心配には及びませんよ」


 そんなレベッカの声を聞きながら、リラは目を閉じ安心して眠りに身を委ねる。

 翌朝、割りと早い時間からエヴァンス家の関係者は朝食を取り、リラの結婚式に備える。

 と言っても、既に準備は万端、リラを磨きに掛かり、ウエディングドレスを着て貰い、不備が無い事を確認し、レベッカがリラの髪とメイクを手掛ける。

 勿論、いつものようなキツく見えるメイクでは無く、リラの美しさと可愛さを、最大限引き立てるメイクだ。

 そして、このウエディングドレスもそうだ。

 ウエディングドレスはエヴァンス家の侍女である、謎の仕立屋、クレアの作で、手作りの手編み総レースで作られたヴェールに、お揃いのレースで肩や腕、首元から胸元部分までが総レースになってるシルエットが綺麗なウエディングドレスなのだ。

 品の良さと可愛さを引き出し、更に透ける肩やレースで縁取られた首筋の素肌部分で、色気も上乗せされたドレスは、クレア渾身の逸品と言っても過言ではない。

 そして、ウエスト部分はキュッと締まってシンプルなのに、裾は沢山の布地を使い、襞もたっぷり有るが、前部分はストンと真っ直ぐで、ドレープは、横や後ろに流れているから見た目よりも歩き易い。

 とは言えこのドレスは、リラみたいに相当スタイルが良くないと着こなせないだろう。

 自らが産み出した最高傑作であるリラの姿を眺め、クレアとレベッカは、大満足の笑みを浮かべた。
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