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後日談
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声を掛けるのはゴート家当主で有る自分の方が、侯爵子息の無礼にはならないだろうと、サラの父親が言い出し、ジーンがアシュリーを連れて広間の中央へと向かっている時に、急いでジーンに声を掛ける。
「初めましてエヴァンス侯爵子息殿。私はゴート家当主、ダミアン=ゴートと言います。まさか、家出した娘が貴方のような高位貴族にご迷惑をお掛けしているとは知らず、とんだご無礼を致しました」
「アシュリー嬢に迷惑を掛けられた覚えは無い。それに、彼女はもう、貴方の娘では無い筈だが?」
ジーンの冷ややかな対応に若干ビビりながらも、自身を奮い立たせる。
「実の娘で有る事に変わり有りません。昔からその娘は令嬢らしく無く、本ばかりを相手にしていたので、茶会も夜会も出たがらない娘でして……。侯爵夫人になんてなれるような娘では有りませんので、どうぞお考え直し下さい」
実は、地雷を踏み抜いてると言う事に、ダミアンはこれっぽっちも気付いていない。
何せその言葉は、ジーンの最愛の妹で有る、リラにも当て嵌まるのだから。
「私の実の妹も本が好きで、茶会や夜会には必要最低限しか出ていませんが、今では公爵夫人としてちゃんと暮らしていますよ。貴方の言い分では、私の妹も公爵夫人として全く相応しく無いと言っている事になりますが?」
絶対零度の底冷えする眼差しで、ジーンはダミアンを見詰め、問い返す。
「いっ、いえっ!そのような事は!!この娘は、男の仕事をしたがったり、しゃしゃり出てくるので、エヴァンス侯爵子息殿の妹とは大いに違いますよ!」
墓穴を掘り続けるダミアンに、ジーンの冷気は増すばかり。
「私の妹も、私の仕事を手伝ってくれたりしていましたよ。そもそも女性だからと、仕事が出来るのにさせないなんて、宝の持ち腐れでは?ああ、貴方の場合は違いましたね。昔からアシュリー嬢や亡き奥方に、仕事の殆どを任せて居られたのですから」
「だっ……誰がそのような事を?!」
顔を青くしていたダミアンだが、今度は怒りで徐々に顔を赤く染め上げ、アシュリーを睨み付けるので、ジーンがアシュリーを然り気無く背に隠し、お前もかと言う顔と態度でアシュリーの父親で有るダミアンを見下げる。
「誰も何も、王都に届いていた過去の書類を見れば、その筆跡が貴方の物で無い事も判りますよ。本来当主が書くべき書類なのに、女性の筆跡で書かれていれば、当主では無いと気付くのが当然でしょう。それとも当主の貴方が書かれていたと仰るのですか?それならそれで、筆跡を鑑定しても構いませんよ。ちゃんと王宮から貸し出し許可を取り、持ってきていますから。因みに、ここ数年はずっとアシュリー嬢の筆跡だと、アシュリー嬢には無許可で確認させて頂きました。先に知れば、貴方のような愚かな父親でも、アシュリー嬢は庇い兼ねませんからね」
ジーンの言葉の数々に、マディソンの脳内は到底処理が追い付かず、アシュリーに謝る所か、話し掛ける事すら出来ない状況に陥ったのだった。
「初めましてエヴァンス侯爵子息殿。私はゴート家当主、ダミアン=ゴートと言います。まさか、家出した娘が貴方のような高位貴族にご迷惑をお掛けしているとは知らず、とんだご無礼を致しました」
「アシュリー嬢に迷惑を掛けられた覚えは無い。それに、彼女はもう、貴方の娘では無い筈だが?」
ジーンの冷ややかな対応に若干ビビりながらも、自身を奮い立たせる。
「実の娘で有る事に変わり有りません。昔からその娘は令嬢らしく無く、本ばかりを相手にしていたので、茶会も夜会も出たがらない娘でして……。侯爵夫人になんてなれるような娘では有りませんので、どうぞお考え直し下さい」
実は、地雷を踏み抜いてると言う事に、ダミアンはこれっぽっちも気付いていない。
何せその言葉は、ジーンの最愛の妹で有る、リラにも当て嵌まるのだから。
「私の実の妹も本が好きで、茶会や夜会には必要最低限しか出ていませんが、今では公爵夫人としてちゃんと暮らしていますよ。貴方の言い分では、私の妹も公爵夫人として全く相応しく無いと言っている事になりますが?」
絶対零度の底冷えする眼差しで、ジーンはダミアンを見詰め、問い返す。
「いっ、いえっ!そのような事は!!この娘は、男の仕事をしたがったり、しゃしゃり出てくるので、エヴァンス侯爵子息殿の妹とは大いに違いますよ!」
墓穴を掘り続けるダミアンに、ジーンの冷気は増すばかり。
「私の妹も、私の仕事を手伝ってくれたりしていましたよ。そもそも女性だからと、仕事が出来るのにさせないなんて、宝の持ち腐れでは?ああ、貴方の場合は違いましたね。昔からアシュリー嬢や亡き奥方に、仕事の殆どを任せて居られたのですから」
「だっ……誰がそのような事を?!」
顔を青くしていたダミアンだが、今度は怒りで徐々に顔を赤く染め上げ、アシュリーを睨み付けるので、ジーンがアシュリーを然り気無く背に隠し、お前もかと言う顔と態度でアシュリーの父親で有るダミアンを見下げる。
「誰も何も、王都に届いていた過去の書類を見れば、その筆跡が貴方の物で無い事も判りますよ。本来当主が書くべき書類なのに、女性の筆跡で書かれていれば、当主では無いと気付くのが当然でしょう。それとも当主の貴方が書かれていたと仰るのですか?それならそれで、筆跡を鑑定しても構いませんよ。ちゃんと王宮から貸し出し許可を取り、持ってきていますから。因みに、ここ数年はずっとアシュリー嬢の筆跡だと、アシュリー嬢には無許可で確認させて頂きました。先に知れば、貴方のような愚かな父親でも、アシュリー嬢は庇い兼ねませんからね」
ジーンの言葉の数々に、マディソンの脳内は到底処理が追い付かず、アシュリーに謝る所か、話し掛ける事すら出来ない状況に陥ったのだった。
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