氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
700 / 805
後日談

2

しおりを挟む
 アシュリーの婚約者だったマディソンの実家は、マディソンに対して激怒していた。

 元々、マディソンの父親がマディソンからうけた報告は、アシュリーは家督放棄しサラに譲り、アシュリー自身は相思相愛の惚れた嫡男の所へと行く為に家出をしたから、家と家督を譲られたサラと結婚しますと言っていたのだ。

 本来で有れば、サラはあの家を継ぐ権利は全く無い。

 だが、正統な後継ぎで有るアシュリーが自ら譲渡したのなら、出来なくは無い。

 ただ、ゴート家の血筋は完全に途絶えてしまう事は確かだ。

 あの聡明な才女の母親に似たアシュリーが?と思いはしたが、恋は人を変える物だし、他人の心の機微に疎く、婚約者よりも友人との交流を優先しがちなマディソンより、惚れ込んだ嫡男の方が魅力的に思えたのだろうなと、憧れの女性の娘だったアシュリーに対して残念に思っていたのに、真実は真逆で、ゴート家の血を引かない娘に家督を継がせる為に、ゴート家の血を引かない父娘でマディソンを唆し、正統なアシュリーを追い出し家を乗っ取っていたそうだ言われたのだ。

 しかもそれを聞いたのは、本人達からでは無く、とある夜会に出席していた友人達や、主催者の子爵からだった。

 その夜会が有った夜、マディソンの父親と嫡男の兄は、仕事が立て込んでいた為、その夜会には欠席していたのだ。

 そしてその日は、夜半遅くにマディソンが真っ青な顔で帰ってきて、王都に行くとだけ言い、荷物を纏め、何事だと説明を求める父親と兄に対して、とんでもない事になったとしか言わず、逆に父親に質問してきた事は、ゴート家の領主が婿養子だと聞いたが本当かと言うどうでもいいような事だった。

 勿論父親は答えた。本当だと。

 それに対してマディソンは、何故教えてくれなかったのだ!!と喚いたが、父親は、何故マディソンがそれ程怒るのかも分からなかった。

 調べれば判る事だし、お前の気持ちも理解してくれると言った事は有る。あれは、あの男が婿養子だからと言う意味だったが、通じてなかった事の方が驚きだ。

 マディソンが王都に行くと言って家を出た数日後に夜会の騒動を聞き、手紙で主催者の子爵に面会を取り付け、詳細を知ったのだ。

 勿論主催者側に謝罪し、アシュリーにも謝罪したいので会わせて欲しいと懇願したが、もう王都に向かったし、何よりエヴァンス家の子息が許さないだろうと拒否された。

 父親は嫡男では無いからと、マディソンを厳しく育てなかった事に激しく後悔したが、後の祭だった。

 嫡男の兄からすれば、嫡男では無いからと、弟は両親から可愛がられ、周囲からもちやほやされていた為、マディソンにあまり良い感情は持てなかった。

 兄はマディソンに、婚約者で有るアシュリーに対する態度にも苦言を言い、お前は他人の心の機微に疎いのだから、もっと婚約者を気に掛けてやれと言っていたぐらいだ。

 まさか正統な後継ぎの娘から、家を乗っ取る事を企んだ愚か者の手を取るとは。

 マディソンの父親と兄は、どうにかしてアシュリーと接触して、アシュリー本人に謝罪と慰謝料を支払いたかったのだが、アシュリー本人に会う事が叶うのは、もう少し先の話になるのだった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...