出会いと別れと復讐と

カザハナ

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「遠慮なんてしてないし、これがあたしの普通だから。あなた達の常識を押し付けないで」


 カルラは一応、少食の部類に入るだろう。

 何せ研究所に囚われていた時は、食事は死なない程度を基準に最小限しか与えられていなかったし、実験台モルモット相手なら、食費に回すよりも開発や実験にお金を掛ける事を重視する連中が、まともな食事を提供する訳がない。特に、非協力的な被験者なら尚更だ。

 あの時から比べれば、食べる量もかなり増えて、充分な食事量を取っているカルラは、これが限度だと言える量を注文しようとしているのに、これ以上増やされては堪らない。

 ヒューリーはもっと食べなきゃ大きくなれないと言ったが、カルラは既に大人であるし、本来の姿なら女性の平均的身長内である。そもそも容姿を偽っているのだから、成長する訳がない。

 (注文する前から店を出たい。ティファとの二人っ切りの食事が一番良いんだけど。人拐いに捕まって牢屋で食べてた時の方が精神的にもマシだったなんて、普通に腹が立つわ)


「早く決めてくれない?あたしはこの後用事があるから」


 カルラの言葉に隣に座ったティファが不安そうな顔をカルラに向ける。

 それに気付いたカルラはにっこりと微笑み、優しい声音でティファに話し掛ける。


「街の中にいるし、夕方には宿に帰るから大丈夫よ。必需品を買いたいだけだから」

「買い物なら手伝うよ。荷物持ちとして」

「遠慮するわ。必需品と言っても色々あるから」

「そう言いながら、やましい事でもするんじゃないのか?」


 エンヤが水を口に含んでるのを見計らい、カルラは笑みを浮かべてエンヤに問う。


「そこまで言うならエンヤさんも来る?女性用下着店」


 盛大にせるエンヤを見て、少しだけ清々するカルラ。これで付いて来るなんて言おうものなら変態だと公言するようなものだ。そして、もし付いて来る気があろうものなら、カルラは長々下着店に居座る気だ。


「店内で待つのと店先で待つのと、どっちがいいかしらね」

「誰が行くか!そんな場所!」

「だってエンヤさん、さっきからあたしが悪さするって決め付けてるんだもん。それならいっそ、エンヤさんが見張ってれば良いじゃない。あ、でも、お風呂とか覗かないでね?大した知り合いでもないのに、エンヤさん平気で入って来そうで嫌だわ、あたし」

「お前ぇ~~~っっ!!」

 低い地を這うような声音を出すエンヤだが、周りから見れば脅してるようにしか聞こえない。その為、女性達がこそこそ囁き合っているのだが、エンヤは怒りで気付いていない。

 (滅びろ鬼門。ロリコン、変態疑惑のレッテルで、少しとはいえ視線がマシになったわ)
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