出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 宿屋には四~五人部屋が大体角に設置され、他は二人部屋、一人部屋が階で別れている事が多い。

 ザアイが取った部屋は一人部屋の並ぶ階の角部屋と隣の一人部屋。そこにカルラを連れて行く。


「この部屋使用しなかったの?」


 使用された形跡がない部屋を案内され、カルラは疑問を口にする。

 勿論、使用済みのシーツだった場合は、宿の人間を呼んで即、取り替えて貰う気ではいたが。


「うん。お嬢の為に取ってた部屋だから。お嬢は1週間から10日って言ってたけど、早まったり相手が不在だったりする事もあるだろうからね。満室でも部屋さえ確保してれば、お嬢が帰って来た時、部屋がなかったって事にならないし、隣なら一応、異変に気付けるからね」


 部屋があって喜ぶべきか、監視されてるみたいだと怒るべきか、微妙な所だ。

 カルラはティファに預けてた荷物を宿屋の入口で受け取っていたので、手持ちの荷物と一纏めにする。

 本当なら、夕食まで寝ていたいが、そうもいかない。そんな事をすれば、何かあったのか、体調が悪いのかと、詮索され兼ねないからだ。

 魔力は半分程しかないが、カルラの消費魔力は能力と比べてもかなり少ない方になる。それに彼等がいるなら、カルラが魔力を大量に使用するような事にはならないだろう。

 (時間的に後2~3時間後で夕食だから、街中を歩いて時間を潰す方が部屋に籠ってるよりかは良いかも知れない。安全とは言い難いけど、今までティファが無事だから、研究所関連の人間がいたとしても、目は付けられてない筈。仮に付けられてた所で、私がいる分どうとでもしてみせるわ)

 一人二人の記憶改竄なら全くと言って問題ない。カルラが研究所でする改竄人数は、実験体モルモットを含めれば百を軽く越すのだから。その上機械も全て乗っ取るのだから、かなりの低燃費魔力と言えるだろう。


「ティファ、街を一緒に出歩かない?ずっと同じ建物内にいたから、まだ街を散策してないの。生鮮食品は明日の朝、出立前に買いに出るつもりだけど、一応売り場とか把握しておきたいのよね」


 カルラの言葉に直ぐに頷くティファ。その顔は、ご主人が散歩に連れて行ってくれると知った時の子犬のようだ。

 (ヤバい、何か最近ティファがお嬢の飼い犬みたいに見えてくる……)


「よし、じゃあ行こうか」

「ーーってちょっと待ったお嬢!ザアイも連れて来ないと駄目だから!今直ぐ声掛けて来るからちょっと待ってて!」


 (呼ばなくても良いのに……。寧ろ目立つから三人もいらないのになぁ)

 部屋を取ってくれてたのはザアイと聞いたが、囲い込んで逃がさないよう企むザアイに感謝する気は全くないカルラだった。
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