出会いと別れと復讐と

カザハナ

文字の大きさ
111 / 116

106

しおりを挟む
 カルラ達が街に入ろうと、門に近付けば、ゲートのような物が存在した。

 カルラの目の前には、色鮮やかな魔力が溢れる。

 街の者の説明では、あのゲートは犯罪者を判別する物だと言われる。

 (ああ、そういう事)

 本来魔力は目に見えない。その為、普通はそのまま鵜呑みにするしか無いのが現状だ。

 このゲートは犯罪者だけでなく、高い魔力持ちを判別し、それを特定の機械に通報する物だった。

 カルラはゲートを物珍しげに見る振りをして、近くに有る魔力を書き換えていく。

 高い魔力持ちを判別すると書かれた魔力には、カルラが持つ膨大なデータベースの中に有る、研究所員達にだけ反応するように、書き換える。

 書き換えると言っても、余計な動作はしない。目に見える魔力を強く意識して、見える視覚情報を脳内で削除し、そこに新たな項目を書き加えてやれば良いだけだ。

 魔力その物に触れている方が消費魔力を節約出来る為、膨大な量の書き換えを行う時は、魔力の源に触れているだけに過ぎない。

 普通の街の情報量や、多少魔力研究所の恩恵を受けている街の書き換えぐらいでは、大した情報量にならない為、多少の眠気は出てくるものの、カルラが倒れる程では無い。

 研究所の場合、街とは比べ物にならない程の膨大な情報量を保有している上、カルラは時間を掛ける事無く短時間で書き換えをしている所為でも有る。

 カルラからすれば、研究所に長居したくは無いと言う理由と、場所が場所だけに、いつ外から新しい研究員が来るか、分かった物では無いからだ。

 そして、研究所員の中には、厄介な能力を持つ者も多い。

 カルラのように、薬を投与し続けなければ生きて行けない能力者は、魔力研究所の言いなりになるしか無い。

 喩え、カルラが能力者を敵に回したくないと思っていようと、相手は研究所の言いなりになるしか選択肢は無いと教え込まれて来たのだから、カルラの言葉に耳を傾ける物好きは、前に出会ったあの青年ぐらいだろう。

 魔力研究所を敵に回すと言う事は、死を意味しているも同然だからだ。

 彼等は加害者では無く被害者だ。

 だからと言って、根気良く説得する気も、助け出そうとする気も無い。

 そんな事に時間を使うぐらいなら、研究所を一つでも多く潰した方が、時間の節約にもなると思うからだ。

 カルラの時間は、研究所を潰す度に、確実に寿命を縮めている。

 それでも本拠地に乗り込んで、本部を潰す決心は揺らがない。

 だからこそ、カルラの中で、ティファと共にこのまま旅を続けると言う選択肢は無いに等しい。

 本拠地に近付けば近付く程に危険は増すのだから、自分の都合に可愛いティファを巻き込みたくは無いのだ。

 (取り敢えず、ティファの魔力は高いようだから、魔力が原因で捕まる事は回避出来たわ。後は別行動して、研究員の姿になって、石ころ作りに励んでやるわ)

 そうしてカルラ達はゲートを通り抜け、街中へと入ったのだった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...