20 / 45
~後日談・番外編~
追憶に沈むー1ー
しおりを挟む
ありえない知らせに駆け付けた時にはもう遅かった。
詳細不明、何が目当ての襲撃かさえ不明、生存者0の可能性大。
最悪としか言いようのないその場所でお前を見つけた。
ノクトは連れてきた部下たちに指示を飛ばしながら早足で長い廊下を突き進んでいた。
目に入る光景にギリリと奥歯を噛みしめる。
「生存者を探せ!絶対に見落とすな!!息のある者は身分に関係なく助けろ!!」
「ボス!」
自称右腕、他称右腕候補の言いたいことはよくわかった。
この屋敷に自分たち以外で息のあるやつがいる確率は限りなく0に近い。
それでも、0じゃないなら、ほんの僅かでも可能性があるのなら手を尽くさなければならない。
「なんだ。文句あるのか。ジオ」
「……いや」
めったに見ることのできない深刻そうな顔に眉を寄せる。
そのくらいに酷い光景だった。
まさに目に入ったものすべて切り捨てたといっても過言でないくらいに、戦う術のない女たちさえも情け容赦なく赤黒く染めている。
「ボス!!」
ノクトは何か発見したらしい部下の声にぐっと眉を寄せて足を向けた。
期待はしなかった。けれど、ソレを見てしまったときの落胆も大きかった。
「……伯爵」
「執事と奥方もこちらに」
「……丁重に弔え。」
これが、末路か。
慈善家で有名な伯爵でさえ、裏との関わりなんて歴史と名前だけのこの男でさえこんな最期を迎えるのか。
俺もいつか、こういう死に方をするのか。
「これでいよいよ生存者のいる可能性がなくなってきやがったな」
沈みきったジオの声にふと伯爵の言葉を思い出した。
最期に会ったとき―1年近く前だった気がする―気持ち悪いくらいにゆるみきった顔で砂糖菓子よりも甘ったるい空気を振りまきながら父親の後を継いだばかりのノクトの頭をワシャワシャと撫でながら語りだしたのは彼の愛する二人目の寵姫の話だった。
いつもの嫁自慢を交えて延々続くそれにうんざりしながら付き合ったのは、珍しく会ってみたいと思ったからなのかもしれない。
伯爵の話の中だけでも表情をクルクル変える、この世界では珍しく素直で純粋な姫に。
伯爵と夫人は見つかった。彼らを守る執事とともに。
ならば、彼女はどこだ?守らないはずがない。
あれだけ延々と語れるくらいに溺愛している宝だ。
こんなにわかりやすい場所で伯爵が討たれたことを考えると宝はどこかに隠し守っているはずだ。
「……まだだ」
「ボス?」
「まだ娘がいるはずだ!伯爵の一人娘がどこかに……!!」
『ねーね、ノクト』
『……侯爵だ。伯爵』
『えー?おじさんとお前の仲じゃん?堅苦しいの嫌いなんだよねー。俺』
『……はぁ、アンタは変わらねぇな。
他人の目があるときにしか伯爵の顔をしやがらねぇ。』
『だって疲れるし。
おじさんはね、お前の親父さんやお前と違って甘えられるとこでは全力で甘えることにしているのだよ』
『親子ほど年の離れたガキに甘えてんじゃえねぇ。オッサン』
娘についての記憶を手繰り寄せたはずが余計なものまで思い出してしまいノクトはぐっと眉を寄せる。
なにせ1年前の記憶。
おまけに伯爵の話はのろけ話はしても肝心な情報はほとんど出さない。
容姿は?伯爵と奥方どちらに似ていると言っていた?
『あの子は妻に似て将来美人さんになること間違いなしだからね!
髪や瞳の色は私と同じ漆黒なんだが髪質や顔立ちは妻にそっくりなんだ。
ねぇ、ノクト。やっぱりそろそろ害虫駆除をはじめるべきかな??
あ、でも安心していいよノクトには特別にうちのお姫様の社交界デビューでエスコートさせてあげるからね!!』
にっこりと笑顔で言い切った伯爵の顔を思い出してしまいノクトは呆れた顔で紅い海に眠る伯爵を見た。
「……年は12だ。
伯爵譲りの艶やかな黒髪と黒真珠の瞳、それから奥方似の顔立ちで笑顔がものすごい破壊力を持つ世界で一番可愛いお姫様、いや天使……だったか?」
返事は返ってこない。
ノクトは自分の口から似合わない言葉が飛び出したせいで固まる部下たちを冷ややに睨みつけながら玲瓏とした声で命じた。
「探せ。その娘は生きているはずだ。必ず見つけ出して保護しろ!!」
「「「了解!!」」」
希望を見つけたような、急に元気をとりもどした部下たちの声を聞きながらノクトは屋敷のさらに奥へと足を進めた。
詳細不明、何が目当ての襲撃かさえ不明、生存者0の可能性大。
最悪としか言いようのないその場所でお前を見つけた。
ノクトは連れてきた部下たちに指示を飛ばしながら早足で長い廊下を突き進んでいた。
目に入る光景にギリリと奥歯を噛みしめる。
「生存者を探せ!絶対に見落とすな!!息のある者は身分に関係なく助けろ!!」
「ボス!」
自称右腕、他称右腕候補の言いたいことはよくわかった。
この屋敷に自分たち以外で息のあるやつがいる確率は限りなく0に近い。
それでも、0じゃないなら、ほんの僅かでも可能性があるのなら手を尽くさなければならない。
「なんだ。文句あるのか。ジオ」
「……いや」
めったに見ることのできない深刻そうな顔に眉を寄せる。
そのくらいに酷い光景だった。
まさに目に入ったものすべて切り捨てたといっても過言でないくらいに、戦う術のない女たちさえも情け容赦なく赤黒く染めている。
「ボス!!」
ノクトは何か発見したらしい部下の声にぐっと眉を寄せて足を向けた。
期待はしなかった。けれど、ソレを見てしまったときの落胆も大きかった。
「……伯爵」
「執事と奥方もこちらに」
「……丁重に弔え。」
これが、末路か。
慈善家で有名な伯爵でさえ、裏との関わりなんて歴史と名前だけのこの男でさえこんな最期を迎えるのか。
俺もいつか、こういう死に方をするのか。
「これでいよいよ生存者のいる可能性がなくなってきやがったな」
沈みきったジオの声にふと伯爵の言葉を思い出した。
最期に会ったとき―1年近く前だった気がする―気持ち悪いくらいにゆるみきった顔で砂糖菓子よりも甘ったるい空気を振りまきながら父親の後を継いだばかりのノクトの頭をワシャワシャと撫でながら語りだしたのは彼の愛する二人目の寵姫の話だった。
いつもの嫁自慢を交えて延々続くそれにうんざりしながら付き合ったのは、珍しく会ってみたいと思ったからなのかもしれない。
伯爵の話の中だけでも表情をクルクル変える、この世界では珍しく素直で純粋な姫に。
伯爵と夫人は見つかった。彼らを守る執事とともに。
ならば、彼女はどこだ?守らないはずがない。
あれだけ延々と語れるくらいに溺愛している宝だ。
こんなにわかりやすい場所で伯爵が討たれたことを考えると宝はどこかに隠し守っているはずだ。
「……まだだ」
「ボス?」
「まだ娘がいるはずだ!伯爵の一人娘がどこかに……!!」
『ねーね、ノクト』
『……侯爵だ。伯爵』
『えー?おじさんとお前の仲じゃん?堅苦しいの嫌いなんだよねー。俺』
『……はぁ、アンタは変わらねぇな。
他人の目があるときにしか伯爵の顔をしやがらねぇ。』
『だって疲れるし。
おじさんはね、お前の親父さんやお前と違って甘えられるとこでは全力で甘えることにしているのだよ』
『親子ほど年の離れたガキに甘えてんじゃえねぇ。オッサン』
娘についての記憶を手繰り寄せたはずが余計なものまで思い出してしまいノクトはぐっと眉を寄せる。
なにせ1年前の記憶。
おまけに伯爵の話はのろけ話はしても肝心な情報はほとんど出さない。
容姿は?伯爵と奥方どちらに似ていると言っていた?
『あの子は妻に似て将来美人さんになること間違いなしだからね!
髪や瞳の色は私と同じ漆黒なんだが髪質や顔立ちは妻にそっくりなんだ。
ねぇ、ノクト。やっぱりそろそろ害虫駆除をはじめるべきかな??
あ、でも安心していいよノクトには特別にうちのお姫様の社交界デビューでエスコートさせてあげるからね!!』
にっこりと笑顔で言い切った伯爵の顔を思い出してしまいノクトは呆れた顔で紅い海に眠る伯爵を見た。
「……年は12だ。
伯爵譲りの艶やかな黒髪と黒真珠の瞳、それから奥方似の顔立ちで笑顔がものすごい破壊力を持つ世界で一番可愛いお姫様、いや天使……だったか?」
返事は返ってこない。
ノクトは自分の口から似合わない言葉が飛び出したせいで固まる部下たちを冷ややに睨みつけながら玲瓏とした声で命じた。
「探せ。その娘は生きているはずだ。必ず見つけ出して保護しろ!!」
「「「了解!!」」」
希望を見つけたような、急に元気をとりもどした部下たちの声を聞きながらノクトは屋敷のさらに奥へと足を進めた。
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる