Shame,on me

埴輪

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工藤くんはお疲れ気味

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「工藤くん、お疲れ様」

 真剣な顔でノートパソコンを覗いていた水野さんがタイムカードを持って来た工藤に気づき笑顔を見せる。
 朝から働き詰めの彼女の方がずっと疲れているはずなのに、浮かべる笑顔はどこまでも眩しい。
 真面目な雰囲気が一転して慎ましい野花が咲いたような笑顔だ。
 工藤は水野さんのこのギャップに弱かった。
 また、眼鏡をかけているレアな姿もポイントが高い。
 水野さんの笑顔だけで疲れた身体も消耗しまくった脳味噌も、笑顔を浮かべ過ぎて強張った表情筋も一気に解れる気がした。

「……お疲れ様です、お先失礼しますね」

 だが今日に関してはあまり効果がないようだ。

「あら? なんか今日はバテてる感じ?」
「はい…… ちょっと最近忙しくて」
「そっか~ 学生さんだもんね~  今の時期色々忙しいっか」
「ははは……」
「無理しちゃダメだよ?」

 水野さんに気遣ってもらえるのは嬉しいが、何気ない『学生さん』の一言にちょっぴり工藤は苦い気持ちを抱いた。
 たまになんの意図もなくこうして年下扱いどころか子供扱いされると、まったく意識されていないんだなと若干落ち込む。
 自分の好意に気づいて欲しいような欲しくないような。

 工藤の水野さんに対する感情はどこかふわふわと常に浮ついている。

「工藤くん、明日からしばらくお休みだからゆっくり休んで」
「はい。ありがとうございます」

 キラキラと輝くような水野さんの笑顔に一瞬だけ憂鬱だった心の内が晴れた気がした。
 絶対誰にも言えないが、恋とは魔法に似ていると工藤は思う。
 恥ずかしすぎて、また自分でも気持ち悪いと自覚しているので工藤は一生誰にもこの青臭い考えを言わないと決めている。

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