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8章 人質姫と忘れんぼ王子の邂逅
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関所の扉の前でしばらく待ったが、馬車は来ない。
ボナールでの出発が遅れたのだろうか…?
ランバラルドで待つ私達に、マリー達の状況を知る術はない。
2時間も過ぎただろうか。
役人も片付けを始めて関所の扉を閉じようとしていた。
「姫様、明日になるのかもしれません。今日は一度宿泊所へ戻りましょう」
ジュディが私の肩をだき、帰りを促す。
でも、諦めきれない私は、役人さんの片付けが終わり、扉が閉じられるまではここで待っていようと思っていた。
扉の上の松明が消されて、扉が閉められようとしたその時、ガラガラと馬車が走る音が聞こえてきた。
私とジュディは顔を上げてその方向を見る。
役人たちは慌てて小屋のランプをつけて、乗り合い馬車から降りてくる人達の通過審査を始めた。
ここではねられると、夜は扉から出られず、内側にある小屋で夜を明かし、翌朝には強制送還されるのだ。
ドキドキしながら、扉から出てくる人たちをみつめる。
次から次へと出てくる人達の中から、マリーとアーサーの姿を確認した。
私もジュディも一直線に駆け出した。
「マリー!アーサー!」
「かあさん!にいさん!」
ふたりの元へ行き、ぎゅっとふたりを抱きしめる。
あぁ、マリー。
あんなにふくよかだったのに、少し痩せたわね。
きっと、苦労をかけたのだわ。
でも、無事でよかった。
溢れる涙を拭いて、ジュディが言う。
「母さん、兄さん、疲れているところ悪いけど、宿泊所まで歩いて欲しいの。いろいろと内密に行動しているため、ボナールからの移民者が王族の保養所へ泊まることは誰にも知られたくないから」
私がマリーの持っている荷物を無理やり受け取る。
「マリー、私が持つから歩くことだけを考えて」
「姫様、マリーめのことなど心配なさらないように。返してください。荷物くらい自分で持てます」
「お小言はついてからゆっくり聞くわ。アーサーも。しばらく会えなかったけど、後でゆっくり再開を喜ばせてちょうだい」
「はい。姫様」
そして、私達4人は暗闇の中を縫うように歩き進んで行った。
受け取っていた鍵で、宿泊所のドアを開けて中に入る。
明るいところで私の髪と瞳の色を見たマリーが悲鳴を上げそうになるが、ジュディが咄嗟に口を塞ぎ、そのまま先に部屋へと連れて行く。
私は横目でそれを見ながら、受付のベルを鳴らし、宿泊所の使用人を呼んで今日はもう外出しないことを伝え、4人分の夕食を用意してくれるように頼む。
30分後に、食堂に取りに行くので、ワゴンに乗せて運べるようにしておいて欲しいと頼んだ。
やり取りが全て終わると、急いでマリー達の待つ部屋へ行く。
コンコンとドアをノックし、返事を待つのももどかしく、勢いよくドアを開けた。
マリーは疲れたようで、ベッドに腰掛けていたが、こちらを見ると立ち上がった。
「マリー、座ったままでいてちょうだい」
そして私はマリーに抱きつく。
「よかった。ほんとに無事でよかった。心配したのよ。ボナールに置き去りにしてしまってごめんなさい」
「いいえ。姫様はわたしのことを考えてそのようにしてくださったのです。置き去りなんかではありませんよ」
マリーは抱きしめた私の髪を優しく撫でてくれる。
「アーサーも。怪我の調子はどうなの?」
アーサーの方に向き直ると、にこやかに笑ってこちらを見ていた。
短く切られた赤毛の髪に、日焼けした肌。
騎士になってからはあまり会うことがなかったが、すっかりたくましくなっている。
「オレはもう大丈夫。まだ少し痛むけど、もうじき完治すると思いますよ。それより、姫様は大丈夫ですか?さっきオレもびっくりしましたよ。ジュディから話を聞いても信じられないくらい。瞳や髪の色が変わるなんて…。母さんが悲鳴をあげそうになるのもわかるよ」
私はアーサーの近くに寄る。
「よく見て。顔は昔の私のままでしょう?」
アーサーは私の顔を覗き込んで嬉しそうに笑った。
「いや、昔より肉付きも良くなって健康そうだ」
その夜は、久しぶりに4人で夕食を囲み、夜遅くまで寝られずに話し続けた。
ボナールでの出発が遅れたのだろうか…?
ランバラルドで待つ私達に、マリー達の状況を知る術はない。
2時間も過ぎただろうか。
役人も片付けを始めて関所の扉を閉じようとしていた。
「姫様、明日になるのかもしれません。今日は一度宿泊所へ戻りましょう」
ジュディが私の肩をだき、帰りを促す。
でも、諦めきれない私は、役人さんの片付けが終わり、扉が閉じられるまではここで待っていようと思っていた。
扉の上の松明が消されて、扉が閉められようとしたその時、ガラガラと馬車が走る音が聞こえてきた。
私とジュディは顔を上げてその方向を見る。
役人たちは慌てて小屋のランプをつけて、乗り合い馬車から降りてくる人達の通過審査を始めた。
ここではねられると、夜は扉から出られず、内側にある小屋で夜を明かし、翌朝には強制送還されるのだ。
ドキドキしながら、扉から出てくる人たちをみつめる。
次から次へと出てくる人達の中から、マリーとアーサーの姿を確認した。
私もジュディも一直線に駆け出した。
「マリー!アーサー!」
「かあさん!にいさん!」
ふたりの元へ行き、ぎゅっとふたりを抱きしめる。
あぁ、マリー。
あんなにふくよかだったのに、少し痩せたわね。
きっと、苦労をかけたのだわ。
でも、無事でよかった。
溢れる涙を拭いて、ジュディが言う。
「母さん、兄さん、疲れているところ悪いけど、宿泊所まで歩いて欲しいの。いろいろと内密に行動しているため、ボナールからの移民者が王族の保養所へ泊まることは誰にも知られたくないから」
私がマリーの持っている荷物を無理やり受け取る。
「マリー、私が持つから歩くことだけを考えて」
「姫様、マリーめのことなど心配なさらないように。返してください。荷物くらい自分で持てます」
「お小言はついてからゆっくり聞くわ。アーサーも。しばらく会えなかったけど、後でゆっくり再開を喜ばせてちょうだい」
「はい。姫様」
そして、私達4人は暗闇の中を縫うように歩き進んで行った。
受け取っていた鍵で、宿泊所のドアを開けて中に入る。
明るいところで私の髪と瞳の色を見たマリーが悲鳴を上げそうになるが、ジュディが咄嗟に口を塞ぎ、そのまま先に部屋へと連れて行く。
私は横目でそれを見ながら、受付のベルを鳴らし、宿泊所の使用人を呼んで今日はもう外出しないことを伝え、4人分の夕食を用意してくれるように頼む。
30分後に、食堂に取りに行くので、ワゴンに乗せて運べるようにしておいて欲しいと頼んだ。
やり取りが全て終わると、急いでマリー達の待つ部屋へ行く。
コンコンとドアをノックし、返事を待つのももどかしく、勢いよくドアを開けた。
マリーは疲れたようで、ベッドに腰掛けていたが、こちらを見ると立ち上がった。
「マリー、座ったままでいてちょうだい」
そして私はマリーに抱きつく。
「よかった。ほんとに無事でよかった。心配したのよ。ボナールに置き去りにしてしまってごめんなさい」
「いいえ。姫様はわたしのことを考えてそのようにしてくださったのです。置き去りなんかではありませんよ」
マリーは抱きしめた私の髪を優しく撫でてくれる。
「アーサーも。怪我の調子はどうなの?」
アーサーの方に向き直ると、にこやかに笑ってこちらを見ていた。
短く切られた赤毛の髪に、日焼けした肌。
騎士になってからはあまり会うことがなかったが、すっかりたくましくなっている。
「オレはもう大丈夫。まだ少し痛むけど、もうじき完治すると思いますよ。それより、姫様は大丈夫ですか?さっきオレもびっくりしましたよ。ジュディから話を聞いても信じられないくらい。瞳や髪の色が変わるなんて…。母さんが悲鳴をあげそうになるのもわかるよ」
私はアーサーの近くに寄る。
「よく見て。顔は昔の私のままでしょう?」
アーサーは私の顔を覗き込んで嬉しそうに笑った。
「いや、昔より肉付きも良くなって健康そうだ」
その夜は、久しぶりに4人で夕食を囲み、夜遅くまで寝られずに話し続けた。
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