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第1章 出逢い
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「ルーク様?」
薄暗い部屋の奥へ進むと、ベッドの中に小さな塊を見つけた。
とにかく、お日様の光が届かないところなんて、ロクなところじゃないわ。
わたしはさっさと窓際へ行き、カーテンを全開にした。
わたしの部屋のベッドよりもはるかに大きいルーク様のベッドにる近付き、丸まっている毛布をはいだ。
「うわっ! 何をする!」
毛布の中から、まだ寝間着に身を包んだルーク様が現れた。
まだ5歳の子どもの体は、小さく、ベッドが広く感じられる。
「もうとっくにお日様は上がっていますので、ルーク様を起こしにきました」
ケロリとそう言うわたしを、ルーク様は睨みつけた。
「おまえには関係ないだろ。ほっといてくれよ」
「ほっとけません! だって、こんやくしやですもの!」
わたしは両腕を腰にあてて胸を張った。
「……何が望みなんだ。侯爵家と縁続きになることか? それとも英雄を支える光に支給される金か?」
寝間着のまま、ベッドにあぐらをかき、わたしを睨みつける。
「……侯爵家と縁続きになると、何かいいことがあるんですか?」
わたしが首を傾げると、ルーク様はキョトンとした目でわたしを見た。
「バカか、お前は。いいに決まっているだろう。侯爵家の権力をお前も振りかざせるんだぞ」
「それの、どこがいいことなんですか?」
「え……」
わたしたちは顔を見合わせる。
「だって、わたし、侯爵家の権力なくても今困っていません。お父様とお母様も別に困っていないようです。権力がなくてもちゃんと幸せに暮らしてます」
わたしは今のままで満足だ。
お父様がいてお母様がいて、お兄様とお姉様がいて、とても幸せだ。
「じゃあ、金か?」
「お金も……あればいいとは思いますけど、別に今以上にあってもどうってことはないですよね?」
だって、わたしがもらえるおこずかいは、お父様が領地が潤っていると言っている時も、そうでない時もかわらない。
わたしにとっては、あってもなくても同じだ。
わたしがそう言うと、ルーク様は口をあんぐりと開けてこちらを見た。
「どうってこと、あるだろう。金があれば贅沢できるぞ」
「贅沢って楽しいですか?」
世の中の贅沢とは、どんなものか想像してみる。
豪華なドレスを買って、お城のような家に住んで、見たこともないような大きなお肉を食べる。
……うーん。
わたしは別にドレス好きじゃないし、家も今の家で不都合ないし、お肉もそんなにたくさん食べたくない。すぐお腹いっぱいになっちゃうし。
「やっぱりお金いらないです」
「なんで!?」
ルーク様は理解できないといった風に首を振った。
「じゃ、なんでオレなんかに構うんだ」
「それは、こんやくしやだからです。わたしたち、将来結婚するんです。仲良くしましょうよ。家の中で毎日ケンカとかって、イヤでしょう?」
わたしの顔を見て、ルーク様はそのまま後ろにポスンと倒れ、ベッドに寝っ転がった。
「結婚をやめればいいんだよ。侯爵家の縁にも金にも興味がないんなら、こんやくしゃである意味がないだろ」
ルーク様は腕を目の上に置き、わたしから表情を見えなくさせた。
それがわたしには泣いているように思えて、靴を脱いでベッドの上に上がり、ルーク様の腕をどかして顔を見た。
「ルークさ、ま?」
突然腕を触られてびっくりしたのか、ルーク様はわたしの手を掴むと、わたしをコロンとベッドに転がし、代わりに自分の身を起こした。
急に寝っ転がってしまったわたしは、スカートがまくれてしまい、慌てて起き上がって足を隠した。
「ルーク様のエッチ」
そんなには素足は見えていなかったはずだけど、最近覚えた言葉なので使ってみた。
「……は? ~~~!!!」
ルーク様はわたしの足を見て、わたしの顔を見て意味がわかったようで、段々と顔を真っ赤にした。
火傷に覆われていない部分はとても色白なので、赤くなったのがすぐわかって、見ていて面白かった。
「おっまえ! 淑女としての自覚がないのか!」
顔を真っ赤にしているルーク様に、わたしはケロっと答えた。
「まだないですね。5歳なので」
「~~~!!!」
ますます真っ赤になったルーク様は、何やら言葉にならない怒鳴り声を上げた。
……わたしはそんなの怖くないけど。
ケラケラ笑っているわたしを見て諦めたのか、ルーク様はため息をついた。
「ほんとに、何しにきたんだよ……」
「仲良くなりにきました。将来結婚するのですし、仲良くしといて損はないでしょう? それに、わたしはお父様とお母様のように、仲の良い夫婦になりたいです」
「オレとか?」
「はい。ルーク様とです」
わたしが素直にそう言うと、さっきまでの怒ったような赤い顔ではなく、照れているようにルーク様の目元が赤くなった。
薄暗い部屋の奥へ進むと、ベッドの中に小さな塊を見つけた。
とにかく、お日様の光が届かないところなんて、ロクなところじゃないわ。
わたしはさっさと窓際へ行き、カーテンを全開にした。
わたしの部屋のベッドよりもはるかに大きいルーク様のベッドにる近付き、丸まっている毛布をはいだ。
「うわっ! 何をする!」
毛布の中から、まだ寝間着に身を包んだルーク様が現れた。
まだ5歳の子どもの体は、小さく、ベッドが広く感じられる。
「もうとっくにお日様は上がっていますので、ルーク様を起こしにきました」
ケロリとそう言うわたしを、ルーク様は睨みつけた。
「おまえには関係ないだろ。ほっといてくれよ」
「ほっとけません! だって、こんやくしやですもの!」
わたしは両腕を腰にあてて胸を張った。
「……何が望みなんだ。侯爵家と縁続きになることか? それとも英雄を支える光に支給される金か?」
寝間着のまま、ベッドにあぐらをかき、わたしを睨みつける。
「……侯爵家と縁続きになると、何かいいことがあるんですか?」
わたしが首を傾げると、ルーク様はキョトンとした目でわたしを見た。
「バカか、お前は。いいに決まっているだろう。侯爵家の権力をお前も振りかざせるんだぞ」
「それの、どこがいいことなんですか?」
「え……」
わたしたちは顔を見合わせる。
「だって、わたし、侯爵家の権力なくても今困っていません。お父様とお母様も別に困っていないようです。権力がなくてもちゃんと幸せに暮らしてます」
わたしは今のままで満足だ。
お父様がいてお母様がいて、お兄様とお姉様がいて、とても幸せだ。
「じゃあ、金か?」
「お金も……あればいいとは思いますけど、別に今以上にあってもどうってことはないですよね?」
だって、わたしがもらえるおこずかいは、お父様が領地が潤っていると言っている時も、そうでない時もかわらない。
わたしにとっては、あってもなくても同じだ。
わたしがそう言うと、ルーク様は口をあんぐりと開けてこちらを見た。
「どうってこと、あるだろう。金があれば贅沢できるぞ」
「贅沢って楽しいですか?」
世の中の贅沢とは、どんなものか想像してみる。
豪華なドレスを買って、お城のような家に住んで、見たこともないような大きなお肉を食べる。
……うーん。
わたしは別にドレス好きじゃないし、家も今の家で不都合ないし、お肉もそんなにたくさん食べたくない。すぐお腹いっぱいになっちゃうし。
「やっぱりお金いらないです」
「なんで!?」
ルーク様は理解できないといった風に首を振った。
「じゃ、なんでオレなんかに構うんだ」
「それは、こんやくしやだからです。わたしたち、将来結婚するんです。仲良くしましょうよ。家の中で毎日ケンカとかって、イヤでしょう?」
わたしの顔を見て、ルーク様はそのまま後ろにポスンと倒れ、ベッドに寝っ転がった。
「結婚をやめればいいんだよ。侯爵家の縁にも金にも興味がないんなら、こんやくしゃである意味がないだろ」
ルーク様は腕を目の上に置き、わたしから表情を見えなくさせた。
それがわたしには泣いているように思えて、靴を脱いでベッドの上に上がり、ルーク様の腕をどかして顔を見た。
「ルークさ、ま?」
突然腕を触られてびっくりしたのか、ルーク様はわたしの手を掴むと、わたしをコロンとベッドに転がし、代わりに自分の身を起こした。
急に寝っ転がってしまったわたしは、スカートがまくれてしまい、慌てて起き上がって足を隠した。
「ルーク様のエッチ」
そんなには素足は見えていなかったはずだけど、最近覚えた言葉なので使ってみた。
「……は? ~~~!!!」
ルーク様はわたしの足を見て、わたしの顔を見て意味がわかったようで、段々と顔を真っ赤にした。
火傷に覆われていない部分はとても色白なので、赤くなったのがすぐわかって、見ていて面白かった。
「おっまえ! 淑女としての自覚がないのか!」
顔を真っ赤にしているルーク様に、わたしはケロっと答えた。
「まだないですね。5歳なので」
「~~~!!!」
ますます真っ赤になったルーク様は、何やら言葉にならない怒鳴り声を上げた。
……わたしはそんなの怖くないけど。
ケラケラ笑っているわたしを見て諦めたのか、ルーク様はため息をついた。
「ほんとに、何しにきたんだよ……」
「仲良くなりにきました。将来結婚するのですし、仲良くしといて損はないでしょう? それに、わたしはお父様とお母様のように、仲の良い夫婦になりたいです」
「オレとか?」
「はい。ルーク様とです」
わたしが素直にそう言うと、さっきまでの怒ったような赤い顔ではなく、照れているようにルーク様の目元が赤くなった。
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