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壱ノ章:災いを継ぐ者
第25話 興ざめ
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「元凶か…」
龍人は受け止める事が出来ないのか言葉を反復するしかなかった。
「まあ気にすんな。お前にとっては面識の無い家族のやらかしなんざ、今更問い詰めたってしょうがねえしな。大事なのはここからだ。今はとにかく風巡組の活動を封じる必要がある」
いつの間にか颯真は熱燗を呷り出していた。
「何であいつらを?」
「暗逢者を見ただろ。あの化け物を風巡組はこの町の権力者連中相手に売りつけてんだ。嵐鳳財閥を除いてな。兵器にしても良し、実験材料にしても良し、ペットにしても良し…自警団の癖に笑わせる。まずはこれ以上化け物共が蔓延るのを防がないと。風巡組を潰すのはその第一歩だ」
「そこから少しづつ他の地域の連中と話を付けていくって事か、成程…所で話変わるけどさ」
「ん ?」
「とり天とか食って大丈夫なのか ? カラスだろお前」
話を腰を折った龍人は颯真の取り皿に転がっていた食べかけのとり天を指さす。
「別に気にしねえよ。人間だって猿を食ってた時代があるだろ。同じだ同じ」
「それは…え、マジで ?」
「知らなかったのかよお前。もっと勉強しろよ。昔と違って今の世の中バカには優しくねえぞ」
「お前いちいち一言多いな…」
酒が体に回り、少し気分が良くなったのか素の性格を颯真が曝け出し始めてた時だった。テーブルに置いていた彼の携帯が小さく唸る。二回ほどバイブレーションによって震えた直後に颯真はそれを手に取り、画面を開いてから通話を始めた。
「颯真様、緊急の連絡です」
「どうした」
織江の声が聞こえた瞬間、颯真は箸を置いて部屋の入り口や庭の方へ目をやる。顔つきが険しい物に代わった事からして、決して良い報せではないと悟った龍人も印を結んで開醒を発動した。
「恐らく風巡組と思わしき連中です。数にして十二名。小型の火器を持っている者が四人、それ以外は長尺の鈍器もしくは刃物を携行しています。既に”ライデン”に指示を送り、颯真様の下へ急行させています」
「分かった。お前もすぐに逃げろ」
「もう逃げてます」
「仕事が早いな。俺が死んだらお前に後釜譲ってやる」
電話を切り、颯真はホルスターから銃を抜き取ってからスライドを僅かに動かして薬室を確認する。弾薬は確かに装填されていた。
「十二人か…足りるかな」
「後ろから撃て。俺が前で暴れる。今度は間違えて撃つなよ」
こいつに撃たれるときは間違えではなく故意によるものだろう。先の戦いからはそんな結論が導き出されるが、龍人は敢えて水に流した。仏の顔も三度までとはいかないものの、猶予を与えてやるのも悪くない。懲りずにまた同じような悪ふざけをする場合には相応の対応をすればいいだけなのだから。
その頃、料亭の玄関に現れた風巡組の刺客たちは物怖じしない態度で乱暴にドアを開ける。
「いらっしゃ――」
何事からと思いつつも接客に徹しようとした従業員たちだが、そんな彼らの誠意を無碍にするかのように銃声が響いた。逃げ惑う他の従業員や、まさに今店を出ようとしていた客たちも漏れなく鉛玉を浴びせられるか、斬り殺された。
「忘れるな、目標は人間のガキだ。見つけ次第殺せ」
彼らを従えているらしいリーダー格の鴉天狗が言い聞かせた。その群れの中には片目を覆うようにガーゼを付けている女の鴉天狗もいる。以前龍人に片目を潰された挙句一撃でのされた恨みを晴らしたいと今回動向を申し出たのだ。
片っ端から部屋を開けていき、目についた者を殺した後に顔を確認するという何ともヤケクソ且つ鬼畜じみた手段でしらみ潰しに龍人の捜索をする面々だが、やがてとある二匹の鴉天狗が奥の個室へ辿り着く。静かに歩いてから、部屋を締め切っている襖の両側に一人ずつ立ち、一斉に開けようとした時だった。襖の向こうから発砲音がしたと同時に手前にいた鴉天狗の頭部から血が噴き出る。襖には小さな穴が開いていた。
「え」
一緒に襖を開けようとした仲間が倒れた事にもう一人の鴉天狗は動揺したが、すぐに逃げようと判断しなかったのが彼の過ちと言えるだろう。そこから間髪入れずに龍人の飛び蹴りが襖を突き破って襲い掛かって来た。壁にめり込ませられた鴉天狗の顔は見事なまでに凹んでいる。
「あと十人か ?」
破壊した襖の残骸を足で蹴ってどかしながら、龍人は倒れている二体の鴉天狗を確認した。どこまで数を揃えようが、所詮は何も鍛えていない寄せ集めのチンピラである。すっかり恐ろしさも薄れてしまっていた。
「他の連中もこれぐらい間抜けだと良いんだがな。無駄な時間と弾使わなくて済む」
どうやら颯真も同感だったらしい。緊急事態という名目で連絡が来た頃と打って変わって拍子抜けしていたようだった。
龍人は受け止める事が出来ないのか言葉を反復するしかなかった。
「まあ気にすんな。お前にとっては面識の無い家族のやらかしなんざ、今更問い詰めたってしょうがねえしな。大事なのはここからだ。今はとにかく風巡組の活動を封じる必要がある」
いつの間にか颯真は熱燗を呷り出していた。
「何であいつらを?」
「暗逢者を見ただろ。あの化け物を風巡組はこの町の権力者連中相手に売りつけてんだ。嵐鳳財閥を除いてな。兵器にしても良し、実験材料にしても良し、ペットにしても良し…自警団の癖に笑わせる。まずはこれ以上化け物共が蔓延るのを防がないと。風巡組を潰すのはその第一歩だ」
「そこから少しづつ他の地域の連中と話を付けていくって事か、成程…所で話変わるけどさ」
「ん ?」
「とり天とか食って大丈夫なのか ? カラスだろお前」
話を腰を折った龍人は颯真の取り皿に転がっていた食べかけのとり天を指さす。
「別に気にしねえよ。人間だって猿を食ってた時代があるだろ。同じだ同じ」
「それは…え、マジで ?」
「知らなかったのかよお前。もっと勉強しろよ。昔と違って今の世の中バカには優しくねえぞ」
「お前いちいち一言多いな…」
酒が体に回り、少し気分が良くなったのか素の性格を颯真が曝け出し始めてた時だった。テーブルに置いていた彼の携帯が小さく唸る。二回ほどバイブレーションによって震えた直後に颯真はそれを手に取り、画面を開いてから通話を始めた。
「颯真様、緊急の連絡です」
「どうした」
織江の声が聞こえた瞬間、颯真は箸を置いて部屋の入り口や庭の方へ目をやる。顔つきが険しい物に代わった事からして、決して良い報せではないと悟った龍人も印を結んで開醒を発動した。
「恐らく風巡組と思わしき連中です。数にして十二名。小型の火器を持っている者が四人、それ以外は長尺の鈍器もしくは刃物を携行しています。既に”ライデン”に指示を送り、颯真様の下へ急行させています」
「分かった。お前もすぐに逃げろ」
「もう逃げてます」
「仕事が早いな。俺が死んだらお前に後釜譲ってやる」
電話を切り、颯真はホルスターから銃を抜き取ってからスライドを僅かに動かして薬室を確認する。弾薬は確かに装填されていた。
「十二人か…足りるかな」
「後ろから撃て。俺が前で暴れる。今度は間違えて撃つなよ」
こいつに撃たれるときは間違えではなく故意によるものだろう。先の戦いからはそんな結論が導き出されるが、龍人は敢えて水に流した。仏の顔も三度までとはいかないものの、猶予を与えてやるのも悪くない。懲りずにまた同じような悪ふざけをする場合には相応の対応をすればいいだけなのだから。
その頃、料亭の玄関に現れた風巡組の刺客たちは物怖じしない態度で乱暴にドアを開ける。
「いらっしゃ――」
何事からと思いつつも接客に徹しようとした従業員たちだが、そんな彼らの誠意を無碍にするかのように銃声が響いた。逃げ惑う他の従業員や、まさに今店を出ようとしていた客たちも漏れなく鉛玉を浴びせられるか、斬り殺された。
「忘れるな、目標は人間のガキだ。見つけ次第殺せ」
彼らを従えているらしいリーダー格の鴉天狗が言い聞かせた。その群れの中には片目を覆うようにガーゼを付けている女の鴉天狗もいる。以前龍人に片目を潰された挙句一撃でのされた恨みを晴らしたいと今回動向を申し出たのだ。
片っ端から部屋を開けていき、目についた者を殺した後に顔を確認するという何ともヤケクソ且つ鬼畜じみた手段でしらみ潰しに龍人の捜索をする面々だが、やがてとある二匹の鴉天狗が奥の個室へ辿り着く。静かに歩いてから、部屋を締め切っている襖の両側に一人ずつ立ち、一斉に開けようとした時だった。襖の向こうから発砲音がしたと同時に手前にいた鴉天狗の頭部から血が噴き出る。襖には小さな穴が開いていた。
「え」
一緒に襖を開けようとした仲間が倒れた事にもう一人の鴉天狗は動揺したが、すぐに逃げようと判断しなかったのが彼の過ちと言えるだろう。そこから間髪入れずに龍人の飛び蹴りが襖を突き破って襲い掛かって来た。壁にめり込ませられた鴉天狗の顔は見事なまでに凹んでいる。
「あと十人か ?」
破壊した襖の残骸を足で蹴ってどかしながら、龍人は倒れている二体の鴉天狗を確認した。どこまで数を揃えようが、所詮は何も鍛えていない寄せ集めのチンピラである。すっかり恐ろしさも薄れてしまっていた。
「他の連中もこれぐらい間抜けだと良いんだがな。無駄な時間と弾使わなくて済む」
どうやら颯真も同感だったらしい。緊急事態という名目で連絡が来た頃と打って変わって拍子抜けしていたようだった。
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