真事の怪談~寸志小品七連~

松岡真事

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其ノ六『請求書』

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 湯田さんの弟が、ある日 個人経営の古本屋で買ってきた本を読んでいると、それに一枚の葉書のようなものが挟まっていた。
 それはクレジットカードの利用代金の請求書で、宛先は東北地方の某県である。
 前の持ち主がしおりがわりに挟んでいたものだろう、それにしても不用心だな―― 湯田さんの弟は、苦笑しながらそれを捨てた。

 翌日、その本の続きを読んでいると、「あれ?!」捨てた筈の請求書が、また別のページに挟まっていた。
 どういうことか。怪訝に思いながらそれを取り出すと、別のページからパラリともう一枚、何かが落ちた。 確かめてみると、寸分違わぬ見た目、内容の請求書だった。
 ゾッとなって、二枚とも捨てた。本も捨ててしまった。

 翌日、コンビニから買ってきた漫画雑誌を読んでいると、またあの請求書が挟まっているのに気づいて、ビリビリに破いて捨てた。
 「兄ちゃん、怖いよ。何だよこれ」弟は真っ青な顔で湯田さんに相談してきたという。

 破いて捨てたのが良かったのか、あれ以来 請求書は現れていない。
 ご利用明細の欄には一つだけ低額の利用記載があったそうだが、よく覚えていないという。
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