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第4話「俺の妹がこんなにキモい」①
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外から魔法で鍵を開け、窓をカラカラと開ける。私はそして、いつも通り大好きな人の部屋へと入り、大好きな彼へ挨拶をする。
「クロくん、今日も来たよ!」
私が朗らかに笑いかけると、ベッドの上でゲームをしているクロくんが、肩を落として私の方を見つめてきた。
「……夜陰。突然窓から入って来るなって」
「え~、いいじゃん! 熟年の幼馴染みたいで~!」
「いや……。だってよ、お前……その、ほら。俺は男だぞ? もしも人に言えないことしてたら……」
「大丈夫! その時は私が君の相手をしてあげるから!」
「だからそう言うこと言うなって! マジで間違いが起きたらどうするんだよ!」
「イイよ! 起こしちゃおうよ、間違い! そしたら中堀も埋まって、晴れて結婚だね!」
「中堀ってなんだよ!」
私はケラケラと笑いながら、クロくんの隣に座り、クロくんにピタリとくっ付く。
クロくんは顔を赤くしながらも、私のイチャイチャを拒絶したりはしなかった。なんだかんだで私のことを受け入れてくれているのが嬉しくて、私はもっともっと、クロくんにくっつきたくなる。
そうして、ぎゅっとクロくんに抱き着いていると。突然部屋の扉がガチャリと開いて、見慣れない姿が顔を出した。
「兄貴ぃ……欲しいBL本出たから買ってきて~……」
その女の子は、ぬるりと、幽霊のような陰湿さを醸していた。私は突然現れた白髪の女の子に目を合わせる。
背丈がものすごく大きい。女の子にしては、とかじゃなくて、本当に、男の人と比べても大きい。たぶん180cmは越えている。
私が内心で驚いていると。白髪の女の子は、顔を真っ青にさせて、突然わなわなと震え始めた。
「……に、に、に…………人間だぁ~~~!!!!」
「えぇぇぇぇぇ!?!?」
白髪の女の子は、私を見るとそう叫んで泣き出してしまった。
私は予想外の反応に、驚き声をあげることしかできなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
しばらくして、パニックになった女の子をクロくんがなだめた後。白髪の女の子は、ベッドの上で、いそいそと縮こまった態度で私に自己紹介をした。
「あ…………はじ、めまして…………火神谷白です………………」
「あっ、どうも……。朝日奈夜陰です……」
シロちゃんのあまりに気まずそうな雰囲気に、私も思わずかしこまって応対してしまう。
と、そんなカチコチな雰囲気を壊すように、クロくんがいつもの調子でシロちゃんの補足をした。
「シロは俺の双子の妹なんだよ。二卵性双生児って奴で、まったく似てはいないんだけどな」
「に、似てないってレベルじゃないよ。まるっきり別人だよ」
私はきょとんとクロくんに応答する。
いや、本当、あまりにも違い過ぎる。身長はめちゃくちゃに高いけれど、体つきはハッキリと言えばだらしなく、ぼんと飛び出たおっぱいがちょっとだけ垂れ下がっている。
肩の下まで伸びた白髪はあまりにボサボサで、まったく手入れされていないのが丸わかりだった。
前髪は片目を覆い隠す程度に長く、その目も隈が凄くてどことなく不気味だ。
なんと言うか、ものすごく酷い言い方だけど、すごい陰キャだ。クロくんは割と友達も多くてどちらかと言うと陽キャ側なのに。双子なのにこうも変わるものなのかと、私は変な感心を抱いてしまった。
まあ、でも、正直私的には、こういう子の方が付き合いやすいけど。私はなんとなく、仲良くなれそうな気がしてほっとした。
「でも、会えてよかった! 実はね、シロちゃんのことクロくんから聞いてて、私、友達になりたいなって思ってたの!」
「ひっ、む、むりぃ!」
私はシロちゃんか即効私を拒否したことにショックを受けてしまった。
「あ、明るいよぉ……かわいくて朗らかで眩しいよぉ……。私みたいなうんこ陰キャには陽キャ過ぎて……こ、殺されるぅ……」
「し、シロちゃん? そんな物騒なことしないから……」
私がシロちゃんに向けて手を伸ばすと、「ひぃぃ!」とシロちゃんは体を跳ねさせ、そのままクロくんのベッドに飛び込み、布団に隠れてしまう。私は布団を被ってガタガタと震えるシロちゃんに何も言えなくなった。
「……こんな感じで、シロは根っからの陰キャでな。家族以外の人間と関わると、こうやって隠れちまうんだ……」
「や、ヤドカリじゃないんだから……」
私は肩を落とし、シロちゃんに思わず呆れてしまう。
い、いや、まあ。世の中には、色々な人がいるものだし。私は努めて「こわくないよー?」と、猫をおびき出すような感じでシロちゃんに話しかける。
と。そこで私は、シロちゃんの違和感に気が付いた。
「(すぅーーーーーー……)、くんくんくんくん、くんくんくんくんくん……」
シロちゃんは、クロくんの布団を鼻に当てがって、物凄い勢いで匂いを嗅いでいた。
こ――この子、クロくんの匂いを堪能している!?
そんなバカな。兄貴の匂いを嗅ぐ妹とか、そんなの、ラノベの世界にしかいないでしょ。
私は自分の思い違いだと考えを切り替え、なんとか笑顔を作ってシロちゃんに話しかけようとする。しかしシロちゃんは、「ふ、ふへへへへ……あ、兄貴の匂い……最高のズリネタだぁ……」と、布団の中で、物凄い恍惚とした表情をしていた。
前言撤回だ。この子は、私の恋敵だ。私はシロちゃんの異様さに戦慄してしまった。
「く、クロくん! やばいよ、この子マズいよ! クロくんのこと、エッチな目で見てる! いつか絶対にクロくんを襲うよ!」
「おー、お前がそれ言うか。ハハ、ナニイッテンダ夜陰。シロは俺の実の妹だぜ? 血の繋がった兄妹なんだ、そんな目で見ているわけねぇだろ」
クロくんはへらへらと、一切の疑いもなく笑う。一方でシロちゃんはと言うと、「ふへへ……兄貴の匂い、気持ち良すぎだろ……」と、どこぞの動画で聞いたことがあるような感じでヨダレを垂らしていた。
い、いや。どう考えても、絶対にヤバい。私はギリギリとシロちゃんを睨みつけた。
「おお、そうだ、シロ。お前さっきなんか言ってたけど、なんだったんだ?」
と、そこでクロくんが、純真無垢にシロちゃんに語り掛ける。シロちゃんはにゅっと布団から顔を出すと、「あ、ああ、そうだった……」と呟いて、クロくんに話しかける。
「あ、兄貴……例のBL本、新刊が出たから買って来てほしいんだけど……」
「は、はぁぁ!? またかよ! 嫌だよ、自分で行けよ!」
「ひぃぃ……だ、だってぇ……外は陽キャの巣窟なんだよ? そんな所に行ったら、私、下手をしたら人としての形を保てなくなるよ……。兄貴は、私が陽キャの呪いで成れ果ててもいいの?」
「いやでもよぉ! 男の俺がよぉ、そんな、そう言う本買いに行くとよ、絶対なんか勘違いされるだろ!」
「遅れてるね、兄貴。今は多様性の時代だよ? みんなのアイデンティティを尊重し合う時代なんだ。小学生がエロビデオでシコってても、多様性ってことでOKなんだよ?」
「無理ィ! そう言う奴らがいても良いってのはわかるけどよぉ! でも、そう言う風に見られたくないって言う俺の気持ちだって、尊重されていいだろぉ!」
クロくんが目に涙を浮かべながら叫ぶと、シロちゃんは、「おーねーがーいー! おーねーがーいー、おにいちゃぁーん! 私のために外にでてぇー!」と、やけにぶっきらぼうな猫なで声で駄々をこね始めた。
「うっ……お、お兄ちゃん……。……し、仕方ねぇ。行って来てやるよ」
「わーい! お兄ちゃん、だいすきー!」
「そ、そうか? へへ……。……ってなると、し、しかたねぇな。その、ま、またあの手を使うしかねぇ。……夜陰!」
クロくんが突然私にパスを投げる。私は「はい!?」と背筋を伸ばすと、クロくんは、「悪いけど、一旦外に出て行ってくれ!」と、ものすごく意気揚々に私に声を掛けた。
私はよくわからなかったが、「え、ええ? い、いいけど……」と、クロくんの言葉に従い、彼の部屋から出て行った。
「クロくん、今日も来たよ!」
私が朗らかに笑いかけると、ベッドの上でゲームをしているクロくんが、肩を落として私の方を見つめてきた。
「……夜陰。突然窓から入って来るなって」
「え~、いいじゃん! 熟年の幼馴染みたいで~!」
「いや……。だってよ、お前……その、ほら。俺は男だぞ? もしも人に言えないことしてたら……」
「大丈夫! その時は私が君の相手をしてあげるから!」
「だからそう言うこと言うなって! マジで間違いが起きたらどうするんだよ!」
「イイよ! 起こしちゃおうよ、間違い! そしたら中堀も埋まって、晴れて結婚だね!」
「中堀ってなんだよ!」
私はケラケラと笑いながら、クロくんの隣に座り、クロくんにピタリとくっ付く。
クロくんは顔を赤くしながらも、私のイチャイチャを拒絶したりはしなかった。なんだかんだで私のことを受け入れてくれているのが嬉しくて、私はもっともっと、クロくんにくっつきたくなる。
そうして、ぎゅっとクロくんに抱き着いていると。突然部屋の扉がガチャリと開いて、見慣れない姿が顔を出した。
「兄貴ぃ……欲しいBL本出たから買ってきて~……」
その女の子は、ぬるりと、幽霊のような陰湿さを醸していた。私は突然現れた白髪の女の子に目を合わせる。
背丈がものすごく大きい。女の子にしては、とかじゃなくて、本当に、男の人と比べても大きい。たぶん180cmは越えている。
私が内心で驚いていると。白髪の女の子は、顔を真っ青にさせて、突然わなわなと震え始めた。
「……に、に、に…………人間だぁ~~~!!!!」
「えぇぇぇぇぇ!?!?」
白髪の女の子は、私を見るとそう叫んで泣き出してしまった。
私は予想外の反応に、驚き声をあげることしかできなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
しばらくして、パニックになった女の子をクロくんがなだめた後。白髪の女の子は、ベッドの上で、いそいそと縮こまった態度で私に自己紹介をした。
「あ…………はじ、めまして…………火神谷白です………………」
「あっ、どうも……。朝日奈夜陰です……」
シロちゃんのあまりに気まずそうな雰囲気に、私も思わずかしこまって応対してしまう。
と、そんなカチコチな雰囲気を壊すように、クロくんがいつもの調子でシロちゃんの補足をした。
「シロは俺の双子の妹なんだよ。二卵性双生児って奴で、まったく似てはいないんだけどな」
「に、似てないってレベルじゃないよ。まるっきり別人だよ」
私はきょとんとクロくんに応答する。
いや、本当、あまりにも違い過ぎる。身長はめちゃくちゃに高いけれど、体つきはハッキリと言えばだらしなく、ぼんと飛び出たおっぱいがちょっとだけ垂れ下がっている。
肩の下まで伸びた白髪はあまりにボサボサで、まったく手入れされていないのが丸わかりだった。
前髪は片目を覆い隠す程度に長く、その目も隈が凄くてどことなく不気味だ。
なんと言うか、ものすごく酷い言い方だけど、すごい陰キャだ。クロくんは割と友達も多くてどちらかと言うと陽キャ側なのに。双子なのにこうも変わるものなのかと、私は変な感心を抱いてしまった。
まあ、でも、正直私的には、こういう子の方が付き合いやすいけど。私はなんとなく、仲良くなれそうな気がしてほっとした。
「でも、会えてよかった! 実はね、シロちゃんのことクロくんから聞いてて、私、友達になりたいなって思ってたの!」
「ひっ、む、むりぃ!」
私はシロちゃんか即効私を拒否したことにショックを受けてしまった。
「あ、明るいよぉ……かわいくて朗らかで眩しいよぉ……。私みたいなうんこ陰キャには陽キャ過ぎて……こ、殺されるぅ……」
「し、シロちゃん? そんな物騒なことしないから……」
私がシロちゃんに向けて手を伸ばすと、「ひぃぃ!」とシロちゃんは体を跳ねさせ、そのままクロくんのベッドに飛び込み、布団に隠れてしまう。私は布団を被ってガタガタと震えるシロちゃんに何も言えなくなった。
「……こんな感じで、シロは根っからの陰キャでな。家族以外の人間と関わると、こうやって隠れちまうんだ……」
「や、ヤドカリじゃないんだから……」
私は肩を落とし、シロちゃんに思わず呆れてしまう。
い、いや、まあ。世の中には、色々な人がいるものだし。私は努めて「こわくないよー?」と、猫をおびき出すような感じでシロちゃんに話しかける。
と。そこで私は、シロちゃんの違和感に気が付いた。
「(すぅーーーーーー……)、くんくんくんくん、くんくんくんくんくん……」
シロちゃんは、クロくんの布団を鼻に当てがって、物凄い勢いで匂いを嗅いでいた。
こ――この子、クロくんの匂いを堪能している!?
そんなバカな。兄貴の匂いを嗅ぐ妹とか、そんなの、ラノベの世界にしかいないでしょ。
私は自分の思い違いだと考えを切り替え、なんとか笑顔を作ってシロちゃんに話しかけようとする。しかしシロちゃんは、「ふ、ふへへへへ……あ、兄貴の匂い……最高のズリネタだぁ……」と、布団の中で、物凄い恍惚とした表情をしていた。
前言撤回だ。この子は、私の恋敵だ。私はシロちゃんの異様さに戦慄してしまった。
「く、クロくん! やばいよ、この子マズいよ! クロくんのこと、エッチな目で見てる! いつか絶対にクロくんを襲うよ!」
「おー、お前がそれ言うか。ハハ、ナニイッテンダ夜陰。シロは俺の実の妹だぜ? 血の繋がった兄妹なんだ、そんな目で見ているわけねぇだろ」
クロくんはへらへらと、一切の疑いもなく笑う。一方でシロちゃんはと言うと、「ふへへ……兄貴の匂い、気持ち良すぎだろ……」と、どこぞの動画で聞いたことがあるような感じでヨダレを垂らしていた。
い、いや。どう考えても、絶対にヤバい。私はギリギリとシロちゃんを睨みつけた。
「おお、そうだ、シロ。お前さっきなんか言ってたけど、なんだったんだ?」
と、そこでクロくんが、純真無垢にシロちゃんに語り掛ける。シロちゃんはにゅっと布団から顔を出すと、「あ、ああ、そうだった……」と呟いて、クロくんに話しかける。
「あ、兄貴……例のBL本、新刊が出たから買って来てほしいんだけど……」
「は、はぁぁ!? またかよ! 嫌だよ、自分で行けよ!」
「ひぃぃ……だ、だってぇ……外は陽キャの巣窟なんだよ? そんな所に行ったら、私、下手をしたら人としての形を保てなくなるよ……。兄貴は、私が陽キャの呪いで成れ果ててもいいの?」
「いやでもよぉ! 男の俺がよぉ、そんな、そう言う本買いに行くとよ、絶対なんか勘違いされるだろ!」
「遅れてるね、兄貴。今は多様性の時代だよ? みんなのアイデンティティを尊重し合う時代なんだ。小学生がエロビデオでシコってても、多様性ってことでOKなんだよ?」
「無理ィ! そう言う奴らがいても良いってのはわかるけどよぉ! でも、そう言う風に見られたくないって言う俺の気持ちだって、尊重されていいだろぉ!」
クロくんが目に涙を浮かべながら叫ぶと、シロちゃんは、「おーねーがーいー! おーねーがーいー、おにいちゃぁーん! 私のために外にでてぇー!」と、やけにぶっきらぼうな猫なで声で駄々をこね始めた。
「うっ……お、お兄ちゃん……。……し、仕方ねぇ。行って来てやるよ」
「わーい! お兄ちゃん、だいすきー!」
「そ、そうか? へへ……。……ってなると、し、しかたねぇな。その、ま、またあの手を使うしかねぇ。……夜陰!」
クロくんが突然私にパスを投げる。私は「はい!?」と背筋を伸ばすと、クロくんは、「悪いけど、一旦外に出て行ってくれ!」と、ものすごく意気揚々に私に声を掛けた。
私はよくわからなかったが、「え、ええ? い、いいけど……」と、クロくんの言葉に従い、彼の部屋から出て行った。
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