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第4話「俺の妹がこんなにキモイ」②
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クロくんの部屋を出てから、しばらく時間が経った。私は誰もいない2階の廊下で、『つまんないなぁ』と思いながら、ぼうっと天井を見上げていた。
すると、突然ガチャリとクロくんの部屋の扉が開いた。私はハッとそれに首を向けて、「あっ、クロくん、」と、部屋から出てきた人に声をかけた。
しかし――部屋から出て来たのは、クロくんではなかった。
明るくゆるふわに巻いた茶色い髪に、純白のオーバーサイズなブラウス。くるぶしまで丈のあるイエローなスカートを履き、肩から赤く小さなショルダーバッグを下げている。
現れたのは、とてもフェミニンな雰囲気の漂う、ものすごくかわいらしい女の子だった。私は一瞬、それが誰なのかわからず、目を丸くし。
「――あ、えっ!? く、クロくん!?」
やがて、ようやく正体に気が付いた私は、彼の名前を思わず呼んだ。すると目の前の、女装をしたクロくんは、ものすごく女の子らしい声で、「はい」と儚げにつぶやいた。
や、やっっっば。これじゃあ本当の女の子じゃん。私は予想外過ぎる現実にぽかんとして、宇宙猫のように時の流れに身を投げ出す。
「――って、じゃねぇ!」
と、そこで私を現実に引き戻すように、クロくんがワッと叫びをあげた。
「おう、その通りだ。俺だ、クロだ。……その、なんだ。えっと……」
クロくんは顔を赤くして、ぷいっと私から目を逸らした。私は目の前の人が本当にクロくんであることを悟ると、途端に言葉に尽くしがたい興奮に包まれて、息を荒くして彼ににじり寄った。
「ほ、本当にクロくんだ……なんて言うか……その……す、すっごく……かわいいよぉ……」
「あ、ああ。……その、なんだ。俺は顔が女みたいだからよ。髪型と体格隠す服さえなんとかすりゃ、こう言う格好もできるんだよ」
「それで、クロくん。今からその格好で、私と一緒に女の子になるんだよね。いいよ、私……クロくんのお嫁さんスイッチ、逝き狂うほど連打してあげるから……」
「しなくていいしなくていい! そうじゃなくて、今からこの格好で買いに行くんだよ、BL本を!」
クロくんがワンと叫ぶと、部屋の中から、布団に包まれてちくわみたいになったシロちゃんがひょこりと顔を出した。
「あ、兄貴はね、私のBL本買いに行く時はいつもこの格好なんだ。これなら兄貴ってわかんないし、パッと見腐女子にしか見えないから」
「俺としちゃ不本意なんだが……。クソ、なんだって俺がこんなことを……」
クロくんはそう言って苦々しく表情を歪めた。なんか口の端がムズムズとしていた気がするけど、たぶん気のせいだろう。
と、シロちゃんが、「フレー! フレー! お兄ちゃん! 頑張って、BL本を買ってきて!」と、布団の中からモゾモゾ動きながらクロくんにエールを送る。クロくんは「クソ、だらしねぇおっぱいしやがって……!」とギリギリ歯ぎしりをした。??
「しょうがねぇ。かわいい妹のためだ。ヨシ、行ってくるぜ!」
クロくんはそう言って、わざとらしいくらいに大股・ガニ股でずんずんと歩き去った。
……な、なんだかんだで妹想いなんだな。私はちょっとだけ混乱しながら、クロくんについてそう考えをまとめた。
と。クロくんがいなくなるのを見届けると、シロちゃんが、「行ったか」とボソリと呟いた。
「よ、ヨシ。今から1時間は帰って来ないぞ。ふへへ、せっかく布団ゲットしたんだし、今日はこれをおかずにシコろう……」
シロちゃんはそう言うと、ぐへぐへと汚い笑みを浮かべながら、自分の部屋に戻ろうとした。私はそんなシロちゃんを、布団を引っ掴んで無理やり止める。
「ま、待って! ダメだよ、行かせないよ!」
「ひいぃ、追い剥ぎぃ! やめて、私は老婆じゃないんだよ!? 白髪だけど!」
「よくわかんないけど、させないよ! わかるよ、今からその布団でいやらしいことするつもりなんでしょ!」
「な、なんでわかったの!?」
「自分で言ってたじゃん!」
私はギリギリと布団を掴み、シロちゃんを引っ張る。シロちゃんは私の力にずりずりと引っ張られ、少しずつ足を滑らせて行く。
「い、イイじゃんかぁ! 女の子がスケベで何が悪いんだよ! 多様性だよ、ポリコレだよ! 女の子のオ○ニーを止める人間は差別主義者だよ!」
「そう言うなんか危ないネタやめて! 実の兄に欲情するなんていくらなんでもヤバいよ! 本当は君、クロくんのこと狙ってるんでしょ! ダメだからね! クロくんのお尻の穴は、私のなんだから!」
「兄貴のケツは兄貴のモノだよ!」
私とシロちゃんはひとしきりもみ合ってから、息を切らし、互いに互いを見合う。と、シロちゃんは、ものすごい怪訝な顔で私を睨みつけて尋ねる。
「て、て言うか、君、兄貴の一体なんなの……?」
「彼女です。クロくんのことは渡さないよ」
「えっ!? ……アイツ、彼女いたんだ。……まあ、年頃だし、結構イケメンだし、不思議ではないけど……」
シロちゃんは、私の予想に反して、ものすごく平然と私の言葉を受け入れていた。私は思わず、「えっ?」と目を点にさせる。
「……え、何も思わないの?」
「べ、別に……」
「……クロくんのこと、好きじゃないの?」
「いや……アイツはただのズリネタだよ。布団の匂いを嗅ぎながらね、昔のアイツを思い浮かべると最高にシコいんだぁ……♡ 中3までは本当かわいかったからね。身長も130チョイしか無かったし。今はあんなだけど」
「え、えっちな目では見てるけど恋愛感情は無いって、そんなのあるの?」
「AV女優で抜くことはできても付き合うか、結婚できるかってなったら別でしょ? それと同じ。今はもう兄貴に恋心なんか無いから、安心してよ。私は身長140以上の男は対象外なんだ」
う~ん、ものすごくわかりやすく説明してくれたっぽいのはわかるけど、残念ながら何もわからないな。私はシロちゃんの発言に困り果ててしまった。
「……ま、まあ、でも、それならよかった! 妹ちゃんと友達になりたいって思っていたけど、危うく恋敵になるところだったよ~!」
「あ、でも今から兄貴とスケベしろって言われたらできるな。ふへへへ、肉体だけの関係って、倫理観死んでて最高にえっちだ……」
「やっぱりダメかもしれない」
私は死んだ笑顔でシロちゃんの言葉に感想を残す。
と、シロちゃんは「えっ、て言うか、」と切り出して、私の顔をじっと見つめて来た。
「わ、私と友達になりたいって……えっ、それマジなの?」
「え? う、うん。実は私もオタクでね! だから、クロくんから、シロちゃんがオタクだって聞いた時、仲良くなりたいなぁ、って思ってね、」
私は少しの照れを感じながらシロちゃんに言うと、シロちゃんは、みるみる内に泣き出しそうな表情になり、ガタガタと体を震わせた。
「む、むりぃ!」
そしてシロちゃんは、勢いよく自分の部屋に入ってしまった。
扉がバタンと閉まり、中からガチャガチャと鍵をかける音がする。私は慌ててシロちゃんの部屋の扉に擦り寄った。
「ちょっ、そんなに拒絶しなくていいじゃん! ねぇ、友達になろうよ!」
「ひいぃ! やめてよう、人と関わるのが苦手だから学校行かないで引きこもってるのにぃ! 友達とか、そんなの陽キャの世界にしか無いモノじゃんか! や、焼かれる! 陽の光で陰キャが死ぬ!」
「友達が陽キャって発想がおかしいよ! 友人の1人くらい、誰だっているよ普通!」
「ほらぁ! そう言うところが陽キャなんだよう! 本当の陰キャって言うのは、マジのガチで友達がいないんだよぅ! まったくこれだから陽キャは!」
「えー、じゃあ私が友達第1号になるから! ほーらー、開けて! 開けてよ~!」
私は扉をガンガンと叩きながらシロちゃんに呼びかける。しかしシロちゃんは、ドアの向こう側で「ひぎぃ、グイグイ来る! パーソナルスペースの奥入られてメンタルイッちゃうううぅ!!!」と泣き叫んでいる。この子結構ヤバいな。
私はやがて痺れを切らし、頬をふくらませ、「奥の手!」と、尻尾を生やした。
そしてドアの下からにゅるりと尻尾を入れて、器用にガサガサと動かし、内側から鍵を開ける。
そして私は、ガチャリとドアを開け、シロちゃんの部屋へと侵入した。
「ひぎぃっ!? 鍵開け!? ヤバいよ、この子ヤンデレ属性持ちだよ!」
「観念して。私、執念深いんだから」
私がシロちゃんに睨みを効かせると、シロちゃんは、「あう、」と声を詰まらせ、ぐるぐると目を回してからため息を吐く。
そしてシロちゃんは、「わかった、よぉ……」と、涙目になりながら、私の存在を了承した。
すると、突然ガチャリとクロくんの部屋の扉が開いた。私はハッとそれに首を向けて、「あっ、クロくん、」と、部屋から出てきた人に声をかけた。
しかし――部屋から出て来たのは、クロくんではなかった。
明るくゆるふわに巻いた茶色い髪に、純白のオーバーサイズなブラウス。くるぶしまで丈のあるイエローなスカートを履き、肩から赤く小さなショルダーバッグを下げている。
現れたのは、とてもフェミニンな雰囲気の漂う、ものすごくかわいらしい女の子だった。私は一瞬、それが誰なのかわからず、目を丸くし。
「――あ、えっ!? く、クロくん!?」
やがて、ようやく正体に気が付いた私は、彼の名前を思わず呼んだ。すると目の前の、女装をしたクロくんは、ものすごく女の子らしい声で、「はい」と儚げにつぶやいた。
や、やっっっば。これじゃあ本当の女の子じゃん。私は予想外過ぎる現実にぽかんとして、宇宙猫のように時の流れに身を投げ出す。
「――って、じゃねぇ!」
と、そこで私を現実に引き戻すように、クロくんがワッと叫びをあげた。
「おう、その通りだ。俺だ、クロだ。……その、なんだ。えっと……」
クロくんは顔を赤くして、ぷいっと私から目を逸らした。私は目の前の人が本当にクロくんであることを悟ると、途端に言葉に尽くしがたい興奮に包まれて、息を荒くして彼ににじり寄った。
「ほ、本当にクロくんだ……なんて言うか……その……す、すっごく……かわいいよぉ……」
「あ、ああ。……その、なんだ。俺は顔が女みたいだからよ。髪型と体格隠す服さえなんとかすりゃ、こう言う格好もできるんだよ」
「それで、クロくん。今からその格好で、私と一緒に女の子になるんだよね。いいよ、私……クロくんのお嫁さんスイッチ、逝き狂うほど連打してあげるから……」
「しなくていいしなくていい! そうじゃなくて、今からこの格好で買いに行くんだよ、BL本を!」
クロくんがワンと叫ぶと、部屋の中から、布団に包まれてちくわみたいになったシロちゃんがひょこりと顔を出した。
「あ、兄貴はね、私のBL本買いに行く時はいつもこの格好なんだ。これなら兄貴ってわかんないし、パッと見腐女子にしか見えないから」
「俺としちゃ不本意なんだが……。クソ、なんだって俺がこんなことを……」
クロくんはそう言って苦々しく表情を歪めた。なんか口の端がムズムズとしていた気がするけど、たぶん気のせいだろう。
と、シロちゃんが、「フレー! フレー! お兄ちゃん! 頑張って、BL本を買ってきて!」と、布団の中からモゾモゾ動きながらクロくんにエールを送る。クロくんは「クソ、だらしねぇおっぱいしやがって……!」とギリギリ歯ぎしりをした。??
「しょうがねぇ。かわいい妹のためだ。ヨシ、行ってくるぜ!」
クロくんはそう言って、わざとらしいくらいに大股・ガニ股でずんずんと歩き去った。
……な、なんだかんだで妹想いなんだな。私はちょっとだけ混乱しながら、クロくんについてそう考えをまとめた。
と。クロくんがいなくなるのを見届けると、シロちゃんが、「行ったか」とボソリと呟いた。
「よ、ヨシ。今から1時間は帰って来ないぞ。ふへへ、せっかく布団ゲットしたんだし、今日はこれをおかずにシコろう……」
シロちゃんはそう言うと、ぐへぐへと汚い笑みを浮かべながら、自分の部屋に戻ろうとした。私はそんなシロちゃんを、布団を引っ掴んで無理やり止める。
「ま、待って! ダメだよ、行かせないよ!」
「ひいぃ、追い剥ぎぃ! やめて、私は老婆じゃないんだよ!? 白髪だけど!」
「よくわかんないけど、させないよ! わかるよ、今からその布団でいやらしいことするつもりなんでしょ!」
「な、なんでわかったの!?」
「自分で言ってたじゃん!」
私はギリギリと布団を掴み、シロちゃんを引っ張る。シロちゃんは私の力にずりずりと引っ張られ、少しずつ足を滑らせて行く。
「い、イイじゃんかぁ! 女の子がスケベで何が悪いんだよ! 多様性だよ、ポリコレだよ! 女の子のオ○ニーを止める人間は差別主義者だよ!」
「そう言うなんか危ないネタやめて! 実の兄に欲情するなんていくらなんでもヤバいよ! 本当は君、クロくんのこと狙ってるんでしょ! ダメだからね! クロくんのお尻の穴は、私のなんだから!」
「兄貴のケツは兄貴のモノだよ!」
私とシロちゃんはひとしきりもみ合ってから、息を切らし、互いに互いを見合う。と、シロちゃんは、ものすごい怪訝な顔で私を睨みつけて尋ねる。
「て、て言うか、君、兄貴の一体なんなの……?」
「彼女です。クロくんのことは渡さないよ」
「えっ!? ……アイツ、彼女いたんだ。……まあ、年頃だし、結構イケメンだし、不思議ではないけど……」
シロちゃんは、私の予想に反して、ものすごく平然と私の言葉を受け入れていた。私は思わず、「えっ?」と目を点にさせる。
「……え、何も思わないの?」
「べ、別に……」
「……クロくんのこと、好きじゃないの?」
「いや……アイツはただのズリネタだよ。布団の匂いを嗅ぎながらね、昔のアイツを思い浮かべると最高にシコいんだぁ……♡ 中3までは本当かわいかったからね。身長も130チョイしか無かったし。今はあんなだけど」
「え、えっちな目では見てるけど恋愛感情は無いって、そんなのあるの?」
「AV女優で抜くことはできても付き合うか、結婚できるかってなったら別でしょ? それと同じ。今はもう兄貴に恋心なんか無いから、安心してよ。私は身長140以上の男は対象外なんだ」
う~ん、ものすごくわかりやすく説明してくれたっぽいのはわかるけど、残念ながら何もわからないな。私はシロちゃんの発言に困り果ててしまった。
「……ま、まあ、でも、それならよかった! 妹ちゃんと友達になりたいって思っていたけど、危うく恋敵になるところだったよ~!」
「あ、でも今から兄貴とスケベしろって言われたらできるな。ふへへへ、肉体だけの関係って、倫理観死んでて最高にえっちだ……」
「やっぱりダメかもしれない」
私は死んだ笑顔でシロちゃんの言葉に感想を残す。
と、シロちゃんは「えっ、て言うか、」と切り出して、私の顔をじっと見つめて来た。
「わ、私と友達になりたいって……えっ、それマジなの?」
「え? う、うん。実は私もオタクでね! だから、クロくんから、シロちゃんがオタクだって聞いた時、仲良くなりたいなぁ、って思ってね、」
私は少しの照れを感じながらシロちゃんに言うと、シロちゃんは、みるみる内に泣き出しそうな表情になり、ガタガタと体を震わせた。
「む、むりぃ!」
そしてシロちゃんは、勢いよく自分の部屋に入ってしまった。
扉がバタンと閉まり、中からガチャガチャと鍵をかける音がする。私は慌ててシロちゃんの部屋の扉に擦り寄った。
「ちょっ、そんなに拒絶しなくていいじゃん! ねぇ、友達になろうよ!」
「ひいぃ! やめてよう、人と関わるのが苦手だから学校行かないで引きこもってるのにぃ! 友達とか、そんなの陽キャの世界にしか無いモノじゃんか! や、焼かれる! 陽の光で陰キャが死ぬ!」
「友達が陽キャって発想がおかしいよ! 友人の1人くらい、誰だっているよ普通!」
「ほらぁ! そう言うところが陽キャなんだよう! 本当の陰キャって言うのは、マジのガチで友達がいないんだよぅ! まったくこれだから陽キャは!」
「えー、じゃあ私が友達第1号になるから! ほーらー、開けて! 開けてよ~!」
私は扉をガンガンと叩きながらシロちゃんに呼びかける。しかしシロちゃんは、ドアの向こう側で「ひぎぃ、グイグイ来る! パーソナルスペースの奥入られてメンタルイッちゃうううぅ!!!」と泣き叫んでいる。この子結構ヤバいな。
私はやがて痺れを切らし、頬をふくらませ、「奥の手!」と、尻尾を生やした。
そしてドアの下からにゅるりと尻尾を入れて、器用にガサガサと動かし、内側から鍵を開ける。
そして私は、ガチャリとドアを開け、シロちゃんの部屋へと侵入した。
「ひぎぃっ!? 鍵開け!? ヤバいよ、この子ヤンデレ属性持ちだよ!」
「観念して。私、執念深いんだから」
私がシロちゃんに睨みを効かせると、シロちゃんは、「あう、」と声を詰まらせ、ぐるぐると目を回してからため息を吐く。
そしてシロちゃんは、「わかった、よぉ……」と、涙目になりながら、私の存在を了承した。
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