霊と恋する四十九日

色部耀

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 休みが明け、普段どおりの一日を終えた那由は勝也、沙知、そして愛たちと共にパソコン室にいた。時間が空いているメンバーで集まった写真のデータをチェックしている。集まった写真のデータは約四百枚。その写真の中で展示販売に適さないものが無いかを確認する作業をしているのだった。作業をする人は八人いるため、二人で百枚を担当する手はずだ。

「とりあえず犯罪臭がする写真じゃなかったら大丈夫やけん」

 その那由の言葉にゆるい返事をするパソコン部の男子二人。しかし、そこで愛が念押しするように言った。

「もし女子のパンチラとか写ってるのが見つかったらちゃんと教えるんよ! あと、一応その写真を撮った人の名前も」

 愛の言葉にもパソコン部の男子達は同じようにゆるい返事をする。しかし今回愛とペアを組んで写真チェックをする勝也はそんな愛に一言聞き返した。

「たまたま事故で写っちゃっただけかもしれんやろ? むやみに怒ったりすんなよー」

「分かってるし。ちゃんと確かめるけん大丈夫」

 愛は手をひらひらと振って勝也の話を流した。勝也はその様子を見て那由にこっそりと耳打ちする。

「ホントに大丈夫か?」

「大丈夫なんやない? それに故意かとか写真見たら分かるし」

「そういうもんなん?」

「そういうもんよ」

 パソコン画面に映った画像をクリックで一つ一つ見ながら勝也の話を適当に返す那由。その真面目な作業態度を見て、勝也も愛と一緒に作業をするパソコンに向かった。

「ねえねえ那由」

 勝也が少し離れたのを見て沙知が那由の耳元で囁いた。那由は写真から視線を外すことなく聞き返す。

「ん? どしたん?」

「ちょっと聞きたいんやけどさ、那由ってかっちゃんのことどう思う?」

 ぴくっと反応した那由は前のめり気味に沙知の方を見た。その食いつきっぷりに沙知は若干体を引いてしまう。

「かっちゃん? 良いと思うよ。優しいししっかりしとるし、運動も勉強もまあまあできるし」

「あ、じゃあ那由も異性として意識したりしよん?」

 心配そうに聞く沙知を見て、那由はハッとなって口元を手で押さえた。

「いや、私にとってかっちゃんは友達やし。安心して大丈夫やけん」

「ん? どういう意味?」

「いやいや、気にせんとって」

 慌てて否定した那由はパソコンに向き直って作業を再開した。沙知も首を傾げながらもパソコン画面を覗き込んで那由と共に写真をチェックする。

「とりあえず友達ってことなん?」

「うん。友達」

「そっか」

 今度は那由が首を傾げていたが、後ろに立つ宗祇はやれやれといった感じで額に手を当てていた。

 そんな宗祇も手持ち無沙汰なのか、沙知とは反対側の那由の隣から覗き込むようにしてパソコン画面を見ていた。一枚一枚丁寧に写真を見ていく那由たち。沙知はぼんやりと見ながら、知っている場所の写真が出てくるたびに楽しそうに那由に説明したりしていた。那由も那由で、家の近くや最近通った場所なんかを見かけると嬉しくなるのか、沙知に話していた。

「ちょっとトイレ行ってくるー。あとちょっとやけど、那由に任せたー」

 作業開始から十五分ほど経った頃、残り十枚もないというタイミングで沙知はそう言って席を立った。元々二人で見ているからといって効率が上がるというものでもないため、那由も行ってらっしゃいと言って見送った。

 沙知がトイレに行くことで空いた席に宗祇が座ると、那由は携帯で宗祇にメッセージを打った。

『沙知の代わりにちゃんと見とってよ』

「はいはい」

 宗祇の返事に満足したのか、那由はほのかに口元を緩めると作業を続けた。新しい写真に切り替える。するとそこですぐに宗祇が反応を見せた。

「あ……」

 言葉を漏らすという表現が合う言い方。那由にちらりと見られても、まるで無かったことにしようとでも思っているかのように振る舞う宗祇。しかし那由はそんな宗祇の様子を見なかったことにはできず、すぐさま携帯でメッセージを打ち込む。

『この写真、なんか見覚えあるん?』

 パソコン画面に表示された写真に写っているのは雨を凌ぐためだけの屋根とベンチだった。そしてその奥には一面の海と空と水平線。よく見るとベンチのすぐそばに線路が引いてあるのが分かる。

「ちょっと思い出深い場所だったからさ」

 那由は懐かしむように写真を見つめる宗祇を視界に入れて小さな溜息をついた。そしてまたメッセージを打つ。

『奥さんとの思い出?』

 宗祇は携帯の画面を見て驚くでもなく、頷くことで肯定した。そしてそのまま言葉に出す。

「妻に――プロポーズした場所なんだ」
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