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「え……」
誰にも聞こえないほど小さな声で驚きを口にした那由は改めて写真を見る。幻想的な風景と言っても過言ではないその場所でのプロポーズはさぞかしロマンチックだったことだろう――そんなことを考えながら那由は付け加えるように呟いた。
「綺麗な場所……」
那由の作業の手が止まっている様子が気になったのか、愛が後ろから近付いてきていた。そして肩口からパソコン画面を覗き込むと、那由の呟きに応えるように嬉しそうな顔で声を上げた。
「あ! それウチが撮った写真なんよ! 綺麗なとこやろ? 電車で五駅くらいいったとこにある下灘駅ってとこでね! ほんとは夕日が綺麗やけん夕方に行きたかったんやけど親が遅くなったらうるさくて。往復一時間くらいやけん、那由も今度行ってみて!」
ハイテンションで捲し立てるように言った愛に、那由は少したじろぎながら目を見開いた。突然話し掛けられたことに驚いた那由は無理矢理返事をする。
「ゆ、有名なとこなん?」
「有名有名! ドラマの撮影に使われたりもするし、日本一海に近い停車駅とか日本一夕日が綺麗に見える場所とか言われるくらい有名!」
熱心に語る愛とは違い、宗祇の様子が気になって仕方がなかった那由は話半分に聞いてしまっていた。写真を見る宗祇は悲しみでも寂しさでもなく、いつもの優しい笑顔だったことが那由の心に小さな痛みを生んでいた。
「あ、こっちは終わったけど那由んとこはあとどんくらい?」
思い出したかのように愛が言うと、那由も慌てて残り枚数を確認する。
「あと五枚。もうすぐ終わるけん帰る準備しよって良いよ」
「それやったらよかった。俺も三十分くらい部活遅れるって連絡しとったけん、早く行けるならありがたいけど」
愛を挟んだ先から勝也はそう言ってパソコンからデータの入ったUSBメモリを抜いた。
「ほい」
そして那由の目の前に差し出して落とす。那由は反射的に手で受け皿を作って受け取ると小さくありがとうと返した。すると、釣られるようにして愛と仲の良い女子二人とパソコン部の男子二人もUSBメモリを持ってきた。
「あいー。お言葉に甘えて先に帰っちゃおー」
「カラオケカラオケ」
愛は友達二人に挟まれて腕に絡みつかれる。嬉しそうに笑いつつも、様子を伺うようにちらりと視線を那由達の方に向けた。那由もその視線に気付いたのか、愛想笑いを浮かべつつ話す。
「私のことは気にせんで行ってきて良いよー。パソコン部の二人もいるし」
「ほら、那由もそう言いよるし。行こ」
「……じゃあ、あとよろしく」
申し訳なさそうな顔で教室を後にする愛。それに付いて行くようにして女子二人も教室から出て行く。しかし、勝也は椅子を那由の傍に近付けてパソコンを覗き込んだ。
「部活は三十分くらい遅れるって言っとるし、もうちょいおるわ」
「かっちゃんも先行って良いのに」
「それに、沙知だってまだ帰ってないのに俺だけ先に部活行くのはちょっとまずいかもって。ほら、沙知って吹奏楽部やん」
「あー。あっこ厳しいもんね。沙知一人遅いってなったら何か言われそう」
「伊達に全国大会常連って訳じゃないな」
「それやのに手伝ってくれるん悪い気がするね」
噂をすれば影と言うべきか、そう言ってパソコンに向かう那由の背後から沙知が顔を出した。
「なーに? 二人だけの内緒話?」
「うわっ! びっくりした!」
「那由、そんなにビックリしたらおっぱいこぼれるって」
「やけんこぼれんって!」
大きく縦揺れした那由の胸を、勝也はちらりと見てすぐに視線を逸らす。しかし那由はそんな勝也の動きを見逃さなかったのか、すぐさまつっこんだ。
「かっちゃんのえっちー」
「ち、ちがっ」
「那由のおっぱいは私だけのものだからね!」
「沙知のものじゃない! 私のおっぱいは私のものやし!」
「お前らな……」
自分で胸を抱える那由。あきれて頭を抱える勝也。那由の後ろには勝也と全く同じポーズの宗祇。遠くからちらちらと様子を伺うパソコン部の二人。
「おしとやかじゃなくてごめんねー」
そう言って笑う那由に、勝也は普段通りの落ち着いた様子で答える。
「那由にそういうのは求めてないけん大丈夫」
「ちょっと! それはそれでむかつく!」
「てか那由ー。写真のチェックは終わったん? さっき愛ちゃんと廊下ですれ違ったけど」
「もう終わる。終わった!」
那由はターンと小気味の良い音を立ててエンターキーを押すと、マウスで少し操作してUSBメモリを抜き、パソコンをシャットダウンする。
「パソコン使わせてくれてありがと」
那由はそう言って教室の隅にいるパソコン部の二人に手を振る。二人は小さくお辞儀をすると視線も合わせずにパソコン画面を見続けていた。
誰にも聞こえないほど小さな声で驚きを口にした那由は改めて写真を見る。幻想的な風景と言っても過言ではないその場所でのプロポーズはさぞかしロマンチックだったことだろう――そんなことを考えながら那由は付け加えるように呟いた。
「綺麗な場所……」
那由の作業の手が止まっている様子が気になったのか、愛が後ろから近付いてきていた。そして肩口からパソコン画面を覗き込むと、那由の呟きに応えるように嬉しそうな顔で声を上げた。
「あ! それウチが撮った写真なんよ! 綺麗なとこやろ? 電車で五駅くらいいったとこにある下灘駅ってとこでね! ほんとは夕日が綺麗やけん夕方に行きたかったんやけど親が遅くなったらうるさくて。往復一時間くらいやけん、那由も今度行ってみて!」
ハイテンションで捲し立てるように言った愛に、那由は少したじろぎながら目を見開いた。突然話し掛けられたことに驚いた那由は無理矢理返事をする。
「ゆ、有名なとこなん?」
「有名有名! ドラマの撮影に使われたりもするし、日本一海に近い停車駅とか日本一夕日が綺麗に見える場所とか言われるくらい有名!」
熱心に語る愛とは違い、宗祇の様子が気になって仕方がなかった那由は話半分に聞いてしまっていた。写真を見る宗祇は悲しみでも寂しさでもなく、いつもの優しい笑顔だったことが那由の心に小さな痛みを生んでいた。
「あ、こっちは終わったけど那由んとこはあとどんくらい?」
思い出したかのように愛が言うと、那由も慌てて残り枚数を確認する。
「あと五枚。もうすぐ終わるけん帰る準備しよって良いよ」
「それやったらよかった。俺も三十分くらい部活遅れるって連絡しとったけん、早く行けるならありがたいけど」
愛を挟んだ先から勝也はそう言ってパソコンからデータの入ったUSBメモリを抜いた。
「ほい」
そして那由の目の前に差し出して落とす。那由は反射的に手で受け皿を作って受け取ると小さくありがとうと返した。すると、釣られるようにして愛と仲の良い女子二人とパソコン部の男子二人もUSBメモリを持ってきた。
「あいー。お言葉に甘えて先に帰っちゃおー」
「カラオケカラオケ」
愛は友達二人に挟まれて腕に絡みつかれる。嬉しそうに笑いつつも、様子を伺うようにちらりと視線を那由達の方に向けた。那由もその視線に気付いたのか、愛想笑いを浮かべつつ話す。
「私のことは気にせんで行ってきて良いよー。パソコン部の二人もいるし」
「ほら、那由もそう言いよるし。行こ」
「……じゃあ、あとよろしく」
申し訳なさそうな顔で教室を後にする愛。それに付いて行くようにして女子二人も教室から出て行く。しかし、勝也は椅子を那由の傍に近付けてパソコンを覗き込んだ。
「部活は三十分くらい遅れるって言っとるし、もうちょいおるわ」
「かっちゃんも先行って良いのに」
「それに、沙知だってまだ帰ってないのに俺だけ先に部活行くのはちょっとまずいかもって。ほら、沙知って吹奏楽部やん」
「あー。あっこ厳しいもんね。沙知一人遅いってなったら何か言われそう」
「伊達に全国大会常連って訳じゃないな」
「それやのに手伝ってくれるん悪い気がするね」
噂をすれば影と言うべきか、そう言ってパソコンに向かう那由の背後から沙知が顔を出した。
「なーに? 二人だけの内緒話?」
「うわっ! びっくりした!」
「那由、そんなにビックリしたらおっぱいこぼれるって」
「やけんこぼれんって!」
大きく縦揺れした那由の胸を、勝也はちらりと見てすぐに視線を逸らす。しかし那由はそんな勝也の動きを見逃さなかったのか、すぐさまつっこんだ。
「かっちゃんのえっちー」
「ち、ちがっ」
「那由のおっぱいは私だけのものだからね!」
「沙知のものじゃない! 私のおっぱいは私のものやし!」
「お前らな……」
自分で胸を抱える那由。あきれて頭を抱える勝也。那由の後ろには勝也と全く同じポーズの宗祇。遠くからちらちらと様子を伺うパソコン部の二人。
「おしとやかじゃなくてごめんねー」
そう言って笑う那由に、勝也は普段通りの落ち着いた様子で答える。
「那由にそういうのは求めてないけん大丈夫」
「ちょっと! それはそれでむかつく!」
「てか那由ー。写真のチェックは終わったん? さっき愛ちゃんと廊下ですれ違ったけど」
「もう終わる。終わった!」
那由はターンと小気味の良い音を立ててエンターキーを押すと、マウスで少し操作してUSBメモリを抜き、パソコンをシャットダウンする。
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