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ごまかし

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ざぁ、と木々を揺らす風に髪を抑えながら夜の森を見つめる。

真っ暗な森はどこか不気味だった。

チラリと騎士の様子を伺うと、私と同じように森を見つめていた。

「…今日はもう、森に入るのは危険だ。夜になると魔物たちに気付くのが遅くなってしまうからね」

騎士の口から出た言葉は、まるで独り言のようだった。または、言い聞かせているようだった。

ざぁっ、と先程より強く風が通り過ぎる。

風に髪を弄ばれ、ぎゅっと瞳を閉じ、ゆっくりと開ける。

「…だから、今日は僕の所属している騎士団に来ないかい?」

先程の風で顔から髪が無くなっていた。
騎士と視線が絡む。

街を背にしている騎士の表情はよく分からないが、上手く笑えていないことは分かった。

どう返事しようか迷っていると、動かない私たちを不思議に思ったのか、他の騎士が近づいて来る。

「団長~?どうしたんすか?」

この人、団長だったんだ。

新事実に少し驚きながら、言葉を発した騎士を見る。
チャラそうな見た目の騎士だ。

「ちょっと待っててね」

団長がそう言ってチャラそうな騎士と共に離れていった。
少ししてチャラそうな人は私をチラリと見て、顔を顰めている。

ここは子供っぽい態度しておこうか。情報もできるだけ引き出したい。

厄介な事になりそうなので誤魔化すためにも話をそらそうと思い、私は団長の服の裾を引いた。

「!な、何だい?」

「あの、私の髪と目って、変?」

私は先程の印象と離れすぎないように意識しながら少し子どもっぽく、前々から気になっていた事を聞いてみた。
両親は自分たちと違うために私を嫌っていたのか、それとも不吉な色をしていたために嫌っていたのか、それが気になっていたのだ。

予想外の質問だったのか、団長は少し目を見開き、街の光に照らされた私を見て優しく答えた。

「確かに珍しい色ではあるけど変ではないよ」

その言葉に少し安堵し、これからどうしようかと思った所、いきなり脇に手を入れられ持ち上げられた。

「さあチビッ子ちゃん、行くっすよ!」

いきなり行動を起こしたチャラそうな騎士に少し驚きはしたが、なるようになるか、と思い大人しくする。
しかし一向に動く気配がない。

どうしたんだ、と後ろを向こうとした瞬間、ものすごい勢いで団長に押し付けられた。

「む、むむ無理っす!この子のこと、俺は持ってないっす!」

とても失礼なことを言いながら団長に私を預け、自由になった手を震わせていた。


結局、私は意思表示をすることなく、騎士団へのお泊まりが決まった。








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