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保護された

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私は団長に抱えられながら、騎士団の詰め所(?)に来ていた。

「団長おかえりなさい。貴族のご令嬢は見つかったようですね。さすが、我らが団長様は仕事が速い…おや?」

知的そうな騎士がそう言いながら団長の元へ歩いてきたが、私を見つけると驚いたような顔をした。

「ま、まさか…誘拐してきたんですか!」

「そんな訳ないだろう!」

「冗談ですって」

この騎士は意外と愉快な人らしい。

そんなことを思いながら団長の腕の中から周りを見回した。
そして、大切なことに気づいた。

び、美形しか、いない…?まさか、騎士団に入団するには、美形ということが、必須条件…?

あまり見慣れぬ異国、いや、異世界の人達の顔を見て、そんな馬鹿なことを考えていると周りに人が集まってきた。

「髪の毛邪魔じゃないのかな?」

「細っこいなぁ」

「…細すぎじゃね?」

彼らは小さい子が珍しいのか、ざわざわしている。
観照用の動物にでもなった気分だ。

人の多さについ、ぼんやりとしていたらいつの間にか、周りは先程までより賑やかになっていた。
また、私がぼんやりしていた時に誰かが指示を出していたらしく、食事がでてきた。お粥だ。

私は椅子の上に降ろされたが、座高が足りない…。

そう、ちょうど私の口元にテーブルがあった。
戸惑いながらキョロキョロしていたら、変な声が聞こえてきた。

「…団長。この子可愛っすね。貰っていっすか?大事の育てるんで!」

「いや、俺が!」

「僕が!!」

周りがうるさくなった。
いや、確かに小動物のように見えたかもしれないけど。

すると、どこからか現れた騎士が私を抱き上げた。
そしてじっとこちらを見るので、こてんと首をかしげた。
そのせいか、騎士の頬が緩んだ。

「おい、あいつ、笑ったぞ…!」

「あ、ああ。…ありえねぇ」

とりあえずせっかく私のために作ってくれたご飯を温かいうちに食べたかったため、お粥を見つめながら呟いた。

「ご飯…」

すると、私の声と視線の先に気がついたのか椅子に座り、膝の上に私を座らせ、粥をすくって差し出してきた。

戸惑いながらもそれを口に含む。

「…美味しい。あったかい」

ついそう呟いた。
今までの飯はそれはもう、不味かった。前世の記憶があるせいか、余計そう感じた。スープは水と遜色ないほど味が薄かったし 、とても冷たかった。微妙に味が付いてる分、美味しくないという気持ちが大きくなっていたような気がする。
塩分補給という意味では助かっていたが。

その時、私は気づけなかった。団長とチャラそうな騎士、知的そうな騎士、他にも少数の騎士が顔を顰めていた事に。

あと、周りがだらしなく緩んだ顔をしていた事に。




 
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